国境を越えた日本美術史――ジャポニスムからジャポノロジーへの交流誌 1880-1920

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  • 南明日香
  • A5上製 400ページ
    ISBN-13: 9784865780123
    刊行日: 2015/02

第一次世界大戦までの欧米語で発信された西欧での日本研究の実態に迫る!
◎第36回ジャポニスム学会賞受賞!

書簡や資料写真などの一次資料を丹念に読み込み、100余年前の西欧で、トレッサン、ミュンスターベルク、ペトリュッチといった在野の研究家が、欧米と日本とで情報を交換し、互いの知識を深め合いながら、日本美術作品の背景や精神性までをも追求しようとした軌跡を明らかにする初の試み。



目次


 はじめに

第一部〈日本美術史〉創成の時代 ――欧米と日本それぞれの取り組み
 第1章 欧米での受容――〈日本美術〉の受け入れ先
  1 イギリス
  2 フランス
  3 ドイツ・オーストリア
  4 アメリカ
  5 O・ミュンスターベルクの美術館評(1908年)
 第2章 日本での対外政策としての美術と工芸
 第3章 日本美術・工芸史研究のための史料――英文併記『真美大観』と英文版『國華』の意義

第二部 ジョルジュ・ド・トレッサン ――陸軍将校が日本美術研究家になるまで
 第1章 トレッサンの生涯
  1 軍人として
  2 日本美術研究家として
 第2章 日本美術研究への道
  1 日本語というバリア
  2 「浮世絵の絵師と彫師の事典」にみる日本語問題
 第3章 コレクターたちとの交流、および1910-13年の展覧会運営
 第4章 『日本美術論』の誕生まで
 第5章 O・ミュンスターベルク、R・ペトリュッチ、H・L・ジョリについて
  1 オスカー・ミュンスターベルク
  2 ラファエル・ペトリュッチ
  3 アンリ・L・ジョリ

第三部 二十世紀初頭の日本美術・工芸論 ――トレッサンを中心に
 第1章 トレッサン『日本美術論』の叙述
 第2章 仏教美術と中央アジアの莫高窟調査成果
  1 国立ギメ東洋美術館所蔵トレッサン書簡より
  2 講演内容より
 第3章 やまと絵評価――稚拙か、日本本来の美か
  1 院政期絵画としてのやまと絵
  2 トレッサン『日本美術論』におけるやまと絵の位置づけ
  3 「日本における世俗画の誕生とその十一世紀から十四世紀までの変遷」での評価
 第4章 室町水墨画評価――漢画の技術と精神をめぐって
  1 水墨画をめぐるアポリア
  2 水墨画の〈発見〉
  3 情報と評価の拡大
  4 構図の応用的・哲学的解釈へ
  5 トレッサンの室町水墨画評価
 第5章 鐔をめぐる問題系
  1 日欧の鐔研究
  2 トレッサンの鐔論考――その論点について
  3 金家鐔をめぐる交錯
  4 鐔の絵画的な文様をめぐって

 おわりに
 註
 主要参考文献
 書誌(執筆目録とコレクション売立てカタログ)



関連情報

 本書のタイトルの「国境を越えた」というのは、日本の国境のみならずドイツやフランス、イギリス、ベルギー、アメリカなどの国境も越えて人と情報が行き交ったことを意味している。ものの交流とそれらをめぐる言葉の交流があり、賛同もあれば反論もあったのである。
 換言すると、本書は第一次世界大戦迄の、フランスを中心とした西欧での日本研究の実態に迫ろうという試みでもある。最初の近代戦争が西欧にもたらした甚大な人的物的被害は戦勝国も敗戦国も同様であり、(…)こうした混乱のなか、戦争前に急速に進んだ日本の古美術や工芸品の国境を越えての研究が中断し、その実りの多くが戦後に伝わらないまま次第に歴史の闇に埋もれてしまった。
 要するにヨーロッパでは中国やインドへの関心を経て、第二次世界大戦後日本が経済力を急成長させるまで、ごく一部の美術館と分野を除き、日本美術の研究は足踏み状態であったといってよい。
(「はじめに」より)


南明日香(みなみ・あすか)
1961年生。早稲田大学第一文学部日本文学専攻卒業、同大学大学院文学研究科博士課程満期退学、フランス国立東洋言語文化研究院で博士号を取得。早稲田大学比較文学研究室助手、フランス国立東洋言語文化研究院教官を経て、現在相模女子大学学芸学部教授。専門は日仏比較文学・比較文化。著書に『永井荷風のニューヨーク・パリ・東京 造景の言葉』(翰林書房)、『荷風と明治の都市景観』(三省堂)、『ル・コルビュジエは生きている』(王国社)、編著書に『パリという首都風景の誕生』(ぎようせい)、翻訳書にミカエル・リュケン著『20世紀の日本美術 同化と差異の軌跡』(三好企画)。ジャポニスム学会、日本近代文学会、日本比較文学会、フランス日本研究学会(SFEJ)所属。

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