ISBN-13: 9784865780154
刊行日: 2015/03
いま、どうするか? 日本が問われている!
北アジアの歴史的“矛盾”北朝鮮を“思想的”に捉えると、思考停止の日本人に、今、何が見えてくるのか。
「日朝交渉の行方は予想がつかない。しかし、この問題にイニシアティブをとって取り組むことができるのは、無論日本しかない。北朝鮮との交渉をどう積極的に進めるかは、日本にとって、米国追従の戦後の歴史を果敢に変えてゆく大きな転換点となるだろう」(本文より)
目次
まえがき
第一章 思想から考える(2013年4月)
第二章 歴史認識問題の構造(2013年7月)
第三章 日朝国交正常化をせよ(2013年10月)
第四章 張成沢氏粛清をめぐって(2014年1月)
第五章 ソフト・パワーからソフト・ウォーへ
――北朝鮮の魅力についてどう考えるか――(2014年4月)
第六章 朝鮮民族と道徳の関係(2014年7月)
第七章 日朝関係が東アジア秩序に穴を開ける(2014年10月)
第八章 チュチェ(主体)はどこに行く?(2015年1月)
日朝韓年表(2011.12~2015.3)
あとがき
関連情報
1 北朝鮮は、戦前の日本が東アジアに遺した思想的風土を資源のひとつとして生まれた国家である。それが戦後の冷戦という構造のなかで強固に保全されることとなった。まずはこの認識、つまり北朝鮮という国家の本質と日本とは無関係ではない、どこかでつながっている、という認識を持つことが重要だ。
2 東アジアの歴史認識は、道徳と正統性という儒教的な性格を強く持つ。そして日本以外の国家はその起源において「抗日」という形で日本に強く依存している。したがって中国も韓国も北朝鮮も、「日本がもし歴史の清算を本当にしてしまったら、自分たちの存立の基盤が崩壊する」という恐怖心を抱いている。これもまた、日本に対する依存なのだ。この依存に対して、今の日本の政権は「反・抗日」というリアクションの形で再依存してしまっている。これは根本的な意味で、戦略の間違いである。中韓朝の日本への依存を解消するために、何らかのアクションをすることができるのは、日本しかありえないのである。
3 日本は北朝鮮と国交正常化の交渉を進めるべきである。韓国とは、これまで五十年間にわたって和解と協力のプロセスを進めてきた。戦後七十年にわたって、植民地支配に関して朝鮮半島の北部とは平壌宣言(2002年)以外に一切和解のプロセスを進めていないという事実こそ、もっとも深刻な非対称性なのだ。
4 右に述べたように、日本はこの五十年間、韓国には幾度も謝罪し、サハリン残留韓国人や慰安婦など、具体的な問題に関してもかなり誠実に応答してきた。しかし、韓国はこのことを認めたがらない。もしこのまま韓国が日本の努力を認めないとすると、過去の清算に関する「日韓モデル」は失敗に帰するかもしれない。われわれは、この「日韓モデル」を真摯に反省し、それにかわる新しい「日朝モデル」を構築する必要があるのではないだろうか。
(本書より)
●小倉紀蔵(おぐら・きぞう)
1959年東京生。現在、京都大学総合人間学部、大学院人間・環境学研究科教授。東京大学文学部ドイツ文学科卒業、韓国ソウル大学校哲学科大学院東洋哲学専攻博士課程単位取得。専門は、東アジア哲学。
著書に、『朱子学化する日本近代』(藤原書店)『韓国は一個の哲学である』『歴史認識を乗り越える』(講談社)『心で知る、韓国』(岩波書店)『ハイブリッド化する日韓』(NTT出版)『〈いのち〉は死なない』(春秋社)『新しい論語』(ちくま新書)ほか多数。編著書に『日韓関係の争点』(藤原書店)他。
2 東アジアの歴史認識は、道徳と正統性という儒教的な性格を強く持つ。そして日本以外の国家はその起源において「抗日」という形で日本に強く依存している。したがって中国も韓国も北朝鮮も、「日本がもし歴史の清算を本当にしてしまったら、自分たちの存立の基盤が崩壊する」という恐怖心を抱いている。これもまた、日本に対する依存なのだ。この依存に対して、今の日本の政権は「反・抗日」というリアクションの形で再依存してしまっている。これは根本的な意味で、戦略の間違いである。中韓朝の日本への依存を解消するために、何らかのアクションをすることができるのは、日本しかありえないのである。
3 日本は北朝鮮と国交正常化の交渉を進めるべきである。韓国とは、これまで五十年間にわたって和解と協力のプロセスを進めてきた。戦後七十年にわたって、植民地支配に関して朝鮮半島の北部とは平壌宣言(2002年)以外に一切和解のプロセスを進めていないという事実こそ、もっとも深刻な非対称性なのだ。
4 右に述べたように、日本はこの五十年間、韓国には幾度も謝罪し、サハリン残留韓国人や慰安婦など、具体的な問題に関してもかなり誠実に応答してきた。しかし、韓国はこのことを認めたがらない。もしこのまま韓国が日本の努力を認めないとすると、過去の清算に関する「日韓モデル」は失敗に帰するかもしれない。われわれは、この「日韓モデル」を真摯に反省し、それにかわる新しい「日朝モデル」を構築する必要があるのではないだろうか。
(本書より)
●小倉紀蔵(おぐら・きぞう)
1959年東京生。現在、京都大学総合人間学部、大学院人間・環境学研究科教授。東京大学文学部ドイツ文学科卒業、韓国ソウル大学校哲学科大学院東洋哲学専攻博士課程単位取得。専門は、東アジア哲学。
著書に、『朱子学化する日本近代』(藤原書店)『韓国は一個の哲学である』『歴史認識を乗り越える』(講談社)『心で知る、韓国』(岩波書店)『ハイブリッド化する日韓』(NTT出版)『〈いのち〉は死なない』(春秋社)『新しい論語』(ちくま新書)ほか多数。編著書に『日韓関係の争点』(藤原書店)他。