- 服部英二 編著
- 四六上製 368頁
ISBN-13: 9784865780246
刊行日: 2015/4
“海からの使者”の遺言――世界的海洋学者・映像作家クストーの全体像を初紹介!
代表作『沈黙の世界』などで、“海”の驚異を映像を通じて初めて人類に伝えた、
ジャック=イヴ・クストー(1910-1997)。
「生物多様性」と同様、「文化の多様性」が人類に不可欠と看破したクストーが
最期まで訴え続けた「未来世代の権利」とは何か。
目次
はじめに――クストー述懐 服部英二
第Ⅰ部 クストーが語る
地球の将来のために J‐Y・クストー
文化と環境 J‐Y・クストー
〈インタビュー〉人口増加と消費激増が地球資源に致命的負荷 J‐Y・クストー
第Ⅱ部 クストーの生涯――J‐Y・クストー『人、蛸そして蘭』抄
『人、蛸そして蘭』について(服部英二)
1 探検への情熱
2 宇宙の中でただ一人
3 個人の危機管理
4 乱 獲
5 一滴一滴が大切――アマゾン、ナイルそして南極
6 環境破壊
7 一〇億年後の生命
8 シャーベットへの涙――原子力について
9 聖典と環境
10 科学と人間性
11 時限爆弾
12 新しいエコロジー
13 共同体に対する危機
14 地球的意識
15 幸福とは
第Ⅲ部 未来世代の権利と文化の多様性
未来世代への責任と、文化の多様性(服部英二)
未来世代の権利のための請願
未来世代に対する現存世代の責任宣言
文化の多様性に関する世界宣言
おわりに 服部英二
ジャック=イヴ・クストー 略年譜(1910-1997)
関連情報
われわれは、最近の「自然との離婚」が不可逆的なことを、まだ十分認識していません。われわれの祖先たちが、ずっと前に橋を燃やしてしまい、もはや自然へ帰ることはできないのです。
このことは現代人に途方もない重荷を背負わすことになります。生物学的に受け入れることができ、同時に自分の道徳的野心を満足させるような行動を一気に発明せねばならなくなったのです。200年前、最初の人権宣言の中に、われわれの新しい倫理は見事に描かれました。しかし人権宣言は自然の権利ではないのです。この宣言は単に、われわれが闘ってきた高価な戦いに対するご褒美の前触れにすぎませんでした。その戦いとは、30億年も生きとし生けるものを支配してきた法則との闘いであり、たかだか1万年前にわれわれが受け入れがたいと判断したものとの闘いだったのです! この歴史的文書が言及せず、そこに欠けているもの、それはわれわれがこの線を維持するには、一連の「未来世代の権利」を扱う必要があるということ、また権利は自動的に義務を伴っていることです。また反自然的権利は反自然的義務を伴う、ということも。
ジャック=イヴ・クストー(本書より)
このことは現代人に途方もない重荷を背負わすことになります。生物学的に受け入れることができ、同時に自分の道徳的野心を満足させるような行動を一気に発明せねばならなくなったのです。200年前、最初の人権宣言の中に、われわれの新しい倫理は見事に描かれました。しかし人権宣言は自然の権利ではないのです。この宣言は単に、われわれが闘ってきた高価な戦いに対するご褒美の前触れにすぎませんでした。その戦いとは、30億年も生きとし生けるものを支配してきた法則との闘いであり、たかだか1万年前にわれわれが受け入れがたいと判断したものとの闘いだったのです! この歴史的文書が言及せず、そこに欠けているもの、それはわれわれがこの線を維持するには、一連の「未来世代の権利」を扱う必要があるということ、また権利は自動的に義務を伴っていることです。また反自然的権利は反自然的義務を伴う、ということも。
ジャック=イヴ・クストー(本書より)
著者紹介
●服部英二(はっとり・えいじ)
1934年生まれ。京都大学大学院にて文学修士。同博士課程修了。仏給費留学生としてパリ大学(ソルボンヌ)博士課程に留学。1973~94年ユネスコ本部勤務、首席広報官、文化担当特別事業部長等を歴任。その間に「科学と文化の対話」シンポジウムシリーズ、「シルクロード・対話の道総合調査」等を実施。94年退官後、ユネスコ事務局長顧問、同事務局長官房特別参与、麗澤大学教授を経て、現在、麗澤大学比較文明文化研究センター客員教授、道徳科学研究センター顧問、地球システム・倫理学会会長、比較文明学会名誉理事。1995年フランス政府より学術功労章オフィシエ位を授与される。
著書に『文明の交差路で考える』(講談社現代新書、1995年)、『出会いの風景――世界の中の日本文化』(1999年)『文明間の対話』(2003年)『文明は虹の大河』(2009年、共に麗澤大学出版会)『対話の文化』(鶴見和子との共著、藤原書店、2006年)ほか。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです
1934年生まれ。京都大学大学院にて文学修士。同博士課程修了。仏給費留学生としてパリ大学(ソルボンヌ)博士課程に留学。1973~94年ユネスコ本部勤務、首席広報官、文化担当特別事業部長等を歴任。その間に「科学と文化の対話」シンポジウムシリーズ、「シルクロード・対話の道総合調査」等を実施。94年退官後、ユネスコ事務局長顧問、同事務局長官房特別参与、麗澤大学教授を経て、現在、麗澤大学比較文明文化研究センター客員教授、道徳科学研究センター顧問、地球システム・倫理学会会長、比較文明学会名誉理事。1995年フランス政府より学術功労章オフィシエ位を授与される。
著書に『文明の交差路で考える』(講談社現代新書、1995年)、『出会いの風景――世界の中の日本文化』(1999年)『文明間の対話』(2003年)『文明は虹の大河』(2009年、共に麗澤大学出版会)『対話の文化』(鶴見和子との共著、藤原書店、2006年)ほか。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです