ISBN-13: 9784865780635
刊行日: 2016/02
近代前夜、なぜ海賊は現れたか? 「清朝史叢書」待望の第二弾!
アヘン戦争前夜の18世紀末~19世紀初、シナ海域に横行していた“海賊”たち。浙江・福建・広東・ベトナムなどにおけるその活動と清朝の対策を手がかりに、反乱や人口増加で衰亡に向かうと言われる嘉慶帝時代の貿易、財政、軍事などの内政や国際関係から、当時の清朝の実像に迫る意欲作!
目次
〈巻頭資料〉
関連地図(18~19世紀の東アジア、浙江、福建、広東)
清朝行政機構図 職位表 カネの感覚
序 章 海賊が現れた時代――問題のありか
1 清朝の海賊問題
2 倭寇の海――十七世紀のシナ海
3 清朝の海――平和と安定の十八世紀
4 嘉慶という時代(1796―1820)
5 ねらいと構成
第一章 ベトナムから来た海賊――皇帝が苦慮した国際問題
1 清朝と安南
2 安南への派兵
3 「安南海賊」の出現
4 安南の滅亡と海賊問題
5 清朝と越南
第二章 大混乱に陥った沿海経済――商人たちの受難と抜け道
1 1780年代の海賊問題
2 安南海賊がもたらす不況
3 長引く不況
4 清朝沿海管理体制の限界
第三章 被害を受けた人びと――被害の実相と海賊との交渉
1 狙われたのは誰か
2 海賊との交渉
第四章 台湾社会を変えた海賊――辺境開発の終焉
1 海賊蔡牽の襲来
2 海賊朱濆の襲来
3 台湾開発の終わりの始まり
第五章 地方当局の苦闘――財政難・自衛・武力鎮圧・投降呼びかけ
1 新型兵船建造と経費確保
2 戦う沿海住民
3 投降と武力鎮圧
第六章 海賊を利用するヨーロッパ人――イギリス人とマカオ政庁の思惑
1 「ヨーロッパ人」とは誰か?
2 イギリス東インド会社と海賊問題
3 マカオと海賊問題
4 アヘン戦争への道
第七章 海賊とは誰だったのか――出自・組織・活動
1 海賊たちの履歴
2 海賊集団の構成
3 海賊行為の実際
4 海賊とは誰だったのか
終 章 海賊のいた時代の終わり――末裔のその後
1 アヘンの運び屋
2 労働力の売買と強奪
3 東南アジアへの移民
4 零細海賊稼業
5 日中戦争下の海賊
6 国共内戦と海賊の消滅
あとがき/参考文献/
関連年表(1588~1912)/
図表一覧/
〈巻末資料〉浙江・福建・広東の総督・巡撫・提督・総兵一覧/
主要人名索引/事項索引
関連情報
1636年に万里の長城の北側の瀋陽で建国され、1911年に中国南部で起こった辛亥革命の結果、翌1912年に崩壊した清朝は、これまでふつう「秦漢以来の中国王朝の伝統を引き継ぐ最後の中華王朝である」と見なされてきた。しかし、この視点は正確ではない。それはなぜかというと、清朝の支配階級であった満洲人の母語は漢字漢文ではなく、アルタイ系言語である満洲語であったこと、広大な領域を有した清朝の領土の四分の三が、同様に漢字漢文を使用する土地ではなかったからである。
276年間続いた清朝の統治下では、モンゴルやチベットや新疆などを含めた帝国全土に通用する言語は満洲語のみで、公用文書の大部分は満洲語か満漢合璧(並記)で書かれた。(…)
本叢書すべてを読了した暁には、清朝を全体として深く理解できるようになることは間違いない。
(岡田英弘)
18世紀末、清朝東南沿海では海賊行為が急増し、浙江・福建・広東の各沿海域に大きな被害をもたらした。そして、「海賊」の存在は、清朝皇帝・官僚・商人・漁民・台湾開拓民のあいだで、さらにはベトナム、イギリス、マカオなど、さまざまな場で問題視された。なぜ海賊は突如出現したのか。海賊はなぜさまざまな人々から「問題」だと思われたのか。そもそも海賊とは誰だったのか。そして海賊は清朝東南沿海に何をもたらしたのか。本書は、当地の社会・経済・国際関係から海賊問題をめぐる諸利害を読み解き、18世紀から19世紀にかけての清朝東南沿海域の歴史的展開を示す。
■著者紹介
豊岡康史(とよおか・やすふみ)
1980年生。信州大学学術研究院人文科学系(人文学部)准教授。2002年、千葉大学文学部卒業。2010年、東京大学大学院人文社会系研究科博士課程単位取得退学。博士(文学)。専門は中国近世史。著書に『東インド会社とアジアの海賊』(共著、勉誠出版、2014年)など。