ISBN-13: 9784865781021
刊行日: 2016/11
シリアの古都はなぜ破壊されたのか? イスラーム研究の碩学による序を附し、アレッポを知るための必読書、新装復刊!
商都アレッポのスーク(バザール)での積年のフィールドワークから迫る、イスラーム伝統経済の真髄。シリア情勢が混迷を深め、今や破壊し尽くされたアレッポの本来の姿と人々の活力を克明に描いた名著
★破壊前の貴重なカラー写真を増補!
モノクロ口絵16頁+カラー口絵8頁
目次
アレッポの誘惑――新版刊行に寄せて 黒田壽郎
はじめに――本書の意図
序
第一章 アレッポと交易の歴史
第二章 スークの構成
1 スークの種類
2 アレッポのスーク、メディーネ
第三章 スークの人々
1 ハーン・ハッジ・ムーサー・アアワジュ
2 ハーンの人々
第四章 伝統経済の特殊性
おわりに 色彩やかなミルフィオーリ、商人たちの共和国
基本参考文献
あとがき
関連情報
スークの人々の生きざまは、ミルフィオーリと呼ばれる硝子器を思い出させる。
束ねた着色硝子を輪切にし組合せ、融合するその硝子器は、成形の過程において一々の部分は強い熱気で玄妙に変形し、その非画一的な諸部分が集まって、迫力ある美しさを醸し出す。
〈千の花〉を意味するこの器の変形した細部は、個々の花それぞれの差異性を見事に保証し、同時にそれらに炎のような生気を与えているのである。
■本書において著者は、スークの地形学から分析を始める。そこで示される分析の結果はスークの成立にとって基本的なものである。
■スークにおける商人たちの生き様が、徹底的に自己主張を貫きながら、同時に共同体性に包み込まれている実態と、そのからくりを、見事に明かしている。
■支援国イスラエル擁護のための、アラブ勢力の徹底的破壊こそが米国の戦略の根幹であり、イラクの攪乱のすぐ後で新たにターゲットとされたのが、まさにシリアに他ならない。現在のシリアにおける騒乱は、〈内戦〉ではなく、〈外圧〉によって惹起されたものなのである。
(黒田壽郎「新版刊行に寄せて」より)
●黒田美代子(くろだ・みよこ)
東京生まれ。1956年、慶應義塾大学文学部仏文学科卒業。1968年、在カイロ、アズハル特別研究科修了。駒沢女子大学教授を務める。専攻、中東現代史、イスラーム文化・社会論。2011年歿。
主な論文に、「イスラーム共同体と共存の原理」「中東における国家――〈民族国家〉からウンマ的共同体へ」。主な訳書に、『チュニジア私的関係法』がある。大学卒業後、諸文化の核となる宗教に関心を寄せ、カイロ、テヘラン等に長期滞在して中東・イスラーム世界に親しみ、ダマスカスやアレッポに滞在し、フィールドワークを行う。この世界との初めての出会い以来、その地の人々の生きざまの寛らかさと叡智の源泉についての探究を志し、彼らの社会に埋め込まれている文化の形成因であるイスラームと、その文化、社会的な分節化に関心を持つ。以後、主としてイスラーム法、とりわけ私的関係法やイスラーム経済、ならびに東アラブ現代史、とりわけパレスティナ問題に関する研究を行った。
わが国におけるイスラーム研究の最高峰である故 井筒俊彦氏の数少ない後継者である、中東・イスラーム地域研究の本格派黒田壽郎氏らと共に、アレッポ大学アラブ伝統科学研究所を拠点に、アレッポのスークの実証的な研究に携わった。
束ねた着色硝子を輪切にし組合せ、融合するその硝子器は、成形の過程において一々の部分は強い熱気で玄妙に変形し、その非画一的な諸部分が集まって、迫力ある美しさを醸し出す。
〈千の花〉を意味するこの器の変形した細部は、個々の花それぞれの差異性を見事に保証し、同時にそれらに炎のような生気を与えているのである。
■本書において著者は、スークの地形学から分析を始める。そこで示される分析の結果はスークの成立にとって基本的なものである。
■スークにおける商人たちの生き様が、徹底的に自己主張を貫きながら、同時に共同体性に包み込まれている実態と、そのからくりを、見事に明かしている。
■支援国イスラエル擁護のための、アラブ勢力の徹底的破壊こそが米国の戦略の根幹であり、イラクの攪乱のすぐ後で新たにターゲットとされたのが、まさにシリアに他ならない。現在のシリアにおける騒乱は、〈内戦〉ではなく、〈外圧〉によって惹起されたものなのである。
(黒田壽郎「新版刊行に寄せて」より)
●黒田美代子(くろだ・みよこ)
東京生まれ。1956年、慶應義塾大学文学部仏文学科卒業。1968年、在カイロ、アズハル特別研究科修了。駒沢女子大学教授を務める。専攻、中東現代史、イスラーム文化・社会論。2011年歿。
主な論文に、「イスラーム共同体と共存の原理」「中東における国家――〈民族国家〉からウンマ的共同体へ」。主な訳書に、『チュニジア私的関係法』がある。大学卒業後、諸文化の核となる宗教に関心を寄せ、カイロ、テヘラン等に長期滞在して中東・イスラーム世界に親しみ、ダマスカスやアレッポに滞在し、フィールドワークを行う。この世界との初めての出会い以来、その地の人々の生きざまの寛らかさと叡智の源泉についての探究を志し、彼らの社会に埋め込まれている文化の形成因であるイスラームと、その文化、社会的な分節化に関心を持つ。以後、主としてイスラーム法、とりわけ私的関係法やイスラーム経済、ならびに東アラブ現代史、とりわけパレスティナ問題に関する研究を行った。
わが国におけるイスラーム研究の最高峰である故 井筒俊彦氏の数少ない後継者である、中東・イスラーム地域研究の本格派黒田壽郎氏らと共に、アレッポ大学アラブ伝統科学研究所を拠点に、アレッポのスークの実証的な研究に携わった。