- 石牟礼道子 著
- [対談]鶴見和子+石牟礼道子
[解説]田中優子・赤坂真理・町田康・鈴木一策
◎挿画:秀島由己男 - 四六上製 912頁
ISBN-13: 9784865781281
刊行日: 2017/7
半世紀をかけて完成した大河小説の完全版。畢生の大作!
天草生まれの著者が、十数年かけた徹底した取材調査ののち完成させた、天草・島原の乱を描いた最高傑作「春の城」。取材紀行文「草の道」、多彩な執筆陣による解説、地図、年表、登場人物紹介、系図、関係図を附した完全版!
目次
草の道
「草の道」関連地図
草の道/ちちははこひし/それぞれの旅/神話の形象/煤の中のマリア/永遠の頁/指のことば/鈴木さま/湯島点描/石の槽/「日本が心配」(上)/「日本が心配」(下)/遠き声/潮鳴り/夢の水場/峠にて/天草学の発信所/水蓮/秋のかげろう/山城のこと/恩真寺/魂を祀る家/天草・東向寺/苔の花/湯島のデイゴ(上)/湯島のデイゴ(下)/花あかり/腐葉土/わたしは日本人です/渚のおもかげ/常夜の御灯り/臼杵行/空にしるすことば
〈幕間〉「春の城」の構想(インタビュー)
春の城
「春の城」関連広域地図/島原拡大図/天草拡大図
主要な登場人物/家系図(有馬、三宅・細川、松倉家)/人物相関図
第一章 早崎の瀬戸
第二章 赤い舟
第三章 丘の上の樹
第四章 召 命
第五章 菜種雲
第六章 御 影
第七章 神 笛
第八章 狼 火
第九章 夕光の桜
第十章 炎 上
参考文献
「春の城」執筆を終えて
悪代官にも情が移って
〈インタビュー〉石牟礼道子、「春の城」を語る
〈対談〉「春の城」と『苦海浄土』 石牟礼道子+鶴見和子
あの乱の系譜に連なる人々
煉獄にかかる虹――なぐさめ深きものたちの祈りと天草四郎
「春の城」と「草の道」 鶴見和子
納戸仏さま――全集版あとがきにかえて
[解説]
私たちの春の城はどこにあるのか? 田中優子(江戸文化研究者)
驚くべき、ふつうの人たちの話 赤坂真理(作家)
犬も人もそれ以外もみんな悲しかったけれども 町田康(作家)
『春の城』のコスモロジー 鈴木一策(哲学宗教思想研究者)
編集後記
初出一覧
〈参考〉天草・島原事件関連年表(1517-1642)
「草の道」関連地図
草の道/ちちははこひし/それぞれの旅/神話の形象/煤の中のマリア/永遠の頁/指のことば/鈴木さま/湯島点描/石の槽/「日本が心配」(上)/「日本が心配」(下)/遠き声/潮鳴り/夢の水場/峠にて/天草学の発信所/水蓮/秋のかげろう/山城のこと/恩真寺/魂を祀る家/天草・東向寺/苔の花/湯島のデイゴ(上)/湯島のデイゴ(下)/花あかり/腐葉土/わたしは日本人です/渚のおもかげ/常夜の御灯り/臼杵行/空にしるすことば
〈幕間〉「春の城」の構想(インタビュー)
春の城
「春の城」関連広域地図/島原拡大図/天草拡大図
主要な登場人物/家系図(有馬、三宅・細川、松倉家)/人物相関図
第一章 早崎の瀬戸
第二章 赤い舟
第三章 丘の上の樹
第四章 召 命
第五章 菜種雲
第六章 御 影
第七章 神 笛
第八章 狼 火
第九章 夕光の桜
第十章 炎 上
参考文献
「春の城」執筆を終えて
悪代官にも情が移って
〈インタビュー〉石牟礼道子、「春の城」を語る
〈対談〉「春の城」と『苦海浄土』 石牟礼道子+鶴見和子
あの乱の系譜に連なる人々
煉獄にかかる虹――なぐさめ深きものたちの祈りと天草四郎
「春の城」と「草の道」 鶴見和子
納戸仏さま――全集版あとがきにかえて
[解説]
私たちの春の城はどこにあるのか? 田中優子(江戸文化研究者)
驚くべき、ふつうの人たちの話 赤坂真理(作家)
犬も人もそれ以外もみんな悲しかったけれども 町田康(作家)
『春の城』のコスモロジー 鈴木一策(哲学宗教思想研究者)
編集後記
初出一覧
〈参考〉天草・島原事件関連年表(1517-1642)
関連情報
島原の原城といえば、私にとってはただならぬところである。
三万七千もの一揆勢が原の古城に立てこもり、幕府軍十二万を迎え討って全滅した。幕府は、女子供といえども一人残らず撫で切りにせよと命じた。天草の人口は半減したと記録は伝える。
邪教を盲信する百姓ばらとあなどられていた原の城を落とすのに近代兵器が持ちこまれた。鉄砲・玉薬等の責任者として着任したのが、三河武士、鈴木三郎九郎重成である。彼は、事件終結後、亡地となった天草の復興を命じられて死者たちを手厚く弔い、寺社を建て、生き残りの島民が暮らしてゆけるよう田畑をよみがえらせた。
この島のことをどう考えればよいか。どういう人々が生き残っていたのか。鈴木重成はそれまで接していた侍身分の者たちとは、まるで異なる魂美しい人間たちを、この島で発見したのではないか。今もテーマとしてわたしの中にのこっている。
(石牟礼道子)
水俣事件を通して私は、石牟礼道子が四郎に見える。天草の「もだえ神」として、多くの哀しみをみとり、その腕に抱くようにして患者たちを書き留めてきた。
チッソ本社座り込みのときに石牟礼道子は、島原天草一揆について、「乱を起こした人たちと私はつながっている」と感じたという。
近世においては家と身分と禄を守るために、近代においては企業と自治体と国家を守るために、多くの個人がおとしめられる。市民としての個人は、つながり、戦い、訴えることによってしか、自らを救えないことがある。『春の城』は、時空を超えた普遍の物語である。
(田中優子)
三万七千もの一揆勢が原の古城に立てこもり、幕府軍十二万を迎え討って全滅した。幕府は、女子供といえども一人残らず撫で切りにせよと命じた。天草の人口は半減したと記録は伝える。
邪教を盲信する百姓ばらとあなどられていた原の城を落とすのに近代兵器が持ちこまれた。鉄砲・玉薬等の責任者として着任したのが、三河武士、鈴木三郎九郎重成である。彼は、事件終結後、亡地となった天草の復興を命じられて死者たちを手厚く弔い、寺社を建て、生き残りの島民が暮らしてゆけるよう田畑をよみがえらせた。
この島のことをどう考えればよいか。どういう人々が生き残っていたのか。鈴木重成はそれまで接していた侍身分の者たちとは、まるで異なる魂美しい人間たちを、この島で発見したのではないか。今もテーマとしてわたしの中にのこっている。
(石牟礼道子)
水俣事件を通して私は、石牟礼道子が四郎に見える。天草の「もだえ神」として、多くの哀しみをみとり、その腕に抱くようにして患者たちを書き留めてきた。
チッソ本社座り込みのときに石牟礼道子は、島原天草一揆について、「乱を起こした人たちと私はつながっている」と感じたという。
近世においては家と身分と禄を守るために、近代においては企業と自治体と国家を守るために、多くの個人がおとしめられる。市民としての個人は、つながり、戦い、訴えることによってしか、自らを救えないことがある。『春の城』は、時空を超えた普遍の物語である。
(田中優子)