- 金時鐘
- [解説]金石範 [解題]細見 和之
- 四六変上製 424ページ
ISBN-13: 9784865781687
刊行日: 2018/04
「練達な日本語に狎れ合わない自分であること。それが私の抱える私の日本語への、私の報復です。」
70年代終わりから90年代半ばにかけての評論を、エッセイ、文学論、民謡・音楽論、在日論、社会批評の5つに区分けして収録。日本の植民地支配下にあった幼少期を綴る代表的エッセイ「クレメンタインの歌」(1979)ほか、時代の変遷のなか朝鮮と日本の戦後を振り返る。
[解説]金石範
[月報]倉橋 健一/西世 賢寿/瀧 克則/野口 豊子
[推薦]鶴見 俊輔・辻井 喬・金石範・高銀・吉増 剛造・四方田 犬彦・鵜飼 哲・佐伯 一麦
目次
1 クレメンタインの歌――エッセイ
クレメンタインの歌
私の出会った人々
いまこそ精神の時――四十周年の8・15に思う
花のありか――「ハンギョレ・コンサート」から一年
草むらの時
私の読書日記
白磁の骨壺――望郷の蒐集家・鄭詔文氏を送る
苦難と人情と在日同胞
サオギさん、安らかにお眠りください
2 見えない壁こそ壁――在日論
こぼれた話
伝えることのむずかしさ
語韻の城
見えない壁こそ壁
足元からの国際化
言葉に救いを
「本名」について思うこと
私の日本語、その成功と失敗
日本語の石笛
3 詩を生きること――文学論
野口豊子詩集『草束』に寄せて
やさしき夜叉のうた。――藤波玖美子詩集『風のように』
それでも日本語に不信である――金素雲追悼
材質の奥からのことば――『瀧克則詩集 器物』
より詩的な句集――鈴木六林男句集『惡霊』の一句
金素月とその詩について
消えた「ハイネ」
紙鳶一つ高くあがれり
在日世代にまで及んだ「短歌」――李正子歌集『ナグネタリョン・永遠の旅人』を読む
詩を生きること――慈しみのなかで、かくも孤絶して
私から遠い現代詩
繰り言からの自由
現代詩の可能性――高田文月『不意の時刻』
散文の射程
苦節の民族遺産の数かず――日帝時代民族文学対訳選『そばの花の咲く頃』に寄せて
4 隔てた思いが奏でる響き――民謡・音楽・映画論
歌よとどけ! ひとつの心 ひとつの歌
歌い継ぐ歌のかなしさ――韓国歌曲の夕べに寄せて
隔てた思いが奏でる響き
逆光のなかの洪蘭坡の生涯
歓呼の渦の外で――「在日・韓国民主文化芸術人フォーラム」を終えて
「パンソリ」と「恨」について――韓国映画「風の丘を越えて――西便制」
百年の芽吹き――音楽舞劇「セヤセヤ」に寄せて
〈在日〉の可能性への賛歌――「田月仙オペラリサイタル」に寄せて
苦節の原動力――『ウリ民謡・ユクチァペギの夕べ』に寄せて
それでも歌はひびく――ウリ民謡の夕べを終えて
5 「戦後」この長き歳月――社会批評
重い問いの所在――『中国・朝鮮論』“良心”の限界を見る
揺らぐ燐光
死者も口を開ける
「痛惜の念」をはばむ壁――盧泰愚大統領の訪日をめぐって
おそれ考――私と「昭和」
見なれた死角――三ケ根山所感
「戦後」この長き歳月
加虐には顔がない――お互いが越えねばならない差別
北も南もわが祖国――連立政権のかげで思ったこと
またもやこの夏のこと
透かし見る背後の像――志賀勝著『民族問題と国境』に寄せて
見えてきた「戦後」
「あとがき」のついでに――応援の内、外(上) 金時鐘
〈解説〉金時鐘の文体のことなど 金石範
〈解題〉幼少年期の記憶から 文集? 細見和之
関連情報
1929年(旧暦1928年12月)朝鮮釜山に生まれ、元山市の祖父のもとに一時預けられる。済州島で育つ。48年の「済州島四・三事件」に関わり来日。50年頃から日本語で詩作を始める。在日朝鮮人団体の文化関係の活動に携わるが、運動の路線転換以降、組織批判を受け、組織運動から離れる。兵庫県立湊川高等学校教員(1973-92年)。大阪文学学校特別アドバイザー。詩人。
主な作品として、詩集に『地平線』(ヂンダレ発行所、1955)『日本風土記』(国文社、1957)長篇詩集『新潟』(構造社、1970)『原野の詩――集成詩集』(立風書房、1991)『化石の夏――金時鐘詩集』(海風社、1998)『金時鐘詩集選 境界の詩――猪飼野詩集/光州詩片』(藤原書店、2005)『四時詩集 失くした季節』(藤原書店、2010、第41回高見順賞)他。評論集に『さらされるものと さらすものと』(明治図書出版、1975)『クレメンタインの歌』(文和書房、1980)『「在日」のはざまで』(立風書房、1986、第40回毎日出版文化賞。平凡社ライブラリー、2001)他。エッセーに『草むらの時――小文集』(海風社、1997)『わが生と詩』(岩波書店、2004)『朝鮮と日本に生きる』(岩波書店、2015、大佛次郎賞)他多数。