- 石田紀郎
- A5並製 344ページ
ISBN-13: 9784865781700
刊行日: 2018/04
省農薬ミカン、合成洗剤、琵琶湖汚染、アラル海消滅、フクシマ……
農薬の害と植物の病気に苦しむ農家とともに省農薬ミカンづくりと被害者裁判に取り組み、「表面のきれいなもの、大きさの画一なもの」を求める消費者の意識から変えようと生協を立ち上げた京大教授がいる。琵琶湖畔に生まれ、琵琶湖汚染、アラル海消滅問題に関わり続ける。常に「下流から」の目線で、大学に身をおき、現場に寄り添う――公害、環境と社会の問題に取り組み続ける半生記。
目次
Ⅰ 農学から公害現場へ
1 生まれ育った琵琶湖
2 生き物と生き物の関係
3 ここから離れて農薬・農業を考えよう
Ⅰ 公害原論を考える
4 公害現場を歩き、被害者から見ること
Ⅱ 琵琶湖は琵琶湖を汚さない
5 下流から考えよう
6 第一次琵琶湖汚染総合調査団 一九七三年
7 飲み水調査
Ⅲ ミカンに育てられて
8 農薬裁判――農民の闘いに学ぶ
9 省農薬を実現したミカン山
Ⅳ 公害被害地から自分の街で
10 生活者の運動
11 合成洗剤追放運動――批判と提案
12 「原爆の図」展――全員に役割のある運動を
13 「きょうと・市民のネットワーク」結成
14 新しい生協を創る
15 教授になった話
Ⅴ アラル海の環境改変に学ぶ
16 バイカル湖から始まるカザフへの道
17 雨が降らない地域の生活?
18 カザフスタン共和国独立と日本との関係
19 カザフと日本の戦後は終わっていない
20 ベレケ・ソホーズでカザフの基礎勉強
21 沙漠の調査行
22 アラルは美しく死ぬべきだ?
23 地域研究の面白さ――人々との出会いを楽しむ
24 旧湖底沙漠に木を植える
Ⅵ 今、市民環境研究所で
25 フクシマと研究者
26 大学を考える
27 市民環境研究所で
関連情報
筆者はまた、もうしばらく、研究者としての活動を求め続けて、歩き続けようと思っている。なぜなら、今日の我が国の学界は、産学協同、官学協同研究の時代を完成させ、今や軍学協同、軍産官学協同の時代になっている。もはや、大学人にはこの問題を議論する気力も思想もないと思わざるをえない状況である。だから、われわれ市民は休み、傍観している訳には行かない。本書がそんな気分を促進してくれればと思う。
(本文より)
【著者紹介】
●石田紀郎 (いしだ・のりお)
1940年生まれ。63年に京都大学農学部卒業。同学部助手、助教授を経て、京都大大学院アジア・アフリカ地域研究科教授に。03年に退官した後、NPO法人「市民環境研究所」を設立し、代表理事に就任。その後、京都学園大学バイオ環境学部教授を兼任し、同職を10年4月まで務め、その後人間環境大学特任教授を12年3月まで務めたのち無職となる。40年来、公害や環境・農業問題を中心に、市民運動など幅広い分野で活躍中。90年からアラル海問題に強い関心を抱いており、カザフスタンには毎年渡航している。
著書に『ミカン山から省農薬だより』(北斗出版、2000)『環境学を学ぶ人のために』(共編、世界思想社、1993)他。