モードの誘惑

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  • 山田 登世子
  • 四六変上製 320ページ
    ISBN-13: 9784865781847
    刊行日: 2018/08

「モードは殺されるためにある」 鮮烈に時代を切り取る「モード」論を集成!

惜しまれつつ急逝した仏文学者、山田登世子(1946-2016)が遺した、文化、芸術、衣装、風俗に大胆に切り込む膨大な単行本未収録原稿から、「モード」「ブランド」に関わる論考を精選。
流行現象に現れた人間の心性に注目し、歴史理解へとフィードバックする、著者ならではの視点が発揮された、単行本未収録名文集。


目次


Ⅰ ブランド
ブランドの百年/ブランドの戯れ/ブランドとカリスマのおかしな関係/モード革命と「ブランド現象」/ブランドという虚業/生活の場からの「問いかけ」/ファッション・ブランド

Ⅱ 黒/靴
黒の脱構築/黒の男たち/黒のドレス/欲望のあやうい戯れ/靴を紐解く/靴をめぐる愛

Ⅲ シャネル
シャネルのモード革命/シャネルは海の香り/ゴージャスからリュクスへ/シャネル・ブームをよむ/映画『ココ・シャネル』に寄せて/「モード、それは私だ」/タイタニックからシャネルまで

Ⅳ 誘惑のモード
女たちのモード革命/世紀末パリのきらめき/ヴェネチアの魔の衣装/誘惑論/みんな「女」になってしまった/誰に媚びるの?/身嗜みが輝く。/デオドラント文化の行方/なぜ《顔》なのか/なぜ美人は“美人”になったのか/エフェメラの誘惑

関連情報

モードを成立させるもの、それは、明日にはもう消えてゆく、つかの間の目新しさである。この新奇性のきらめきは、永遠性や耐久性の対極にある。ファッション産業が新奇性から成ることをよく心得ていたシャネルは、永遠性に価値をおかなかったのだ。
けれどもブランド論としてさらに重要なのは、シャネルが「本物」に反対したことだろう。コピー=偽物の流通は本物を殺すというのがオートクチュールの意見である。けれども、まったくコピーされず、模倣もされないような商品、つまり「はやらない」ブランドに、いったいブランド力があるのだろうか。
つまりシャネルは発想の「逆転」をやってのけたのである。ルイ・ヴィトンに代表されるような本物至上主義にたいして、シャネルはこう言ったのだ。偽物がなぜ悪い、偽物があってはじめて本物の価値がせりあがる、と。シャネルのこの「逆転の発想」は、十九世紀のブランド観をくつがえす力をもっていた。
(本書より)


【著者紹介】
●山田登世子(やまだ・とよこ)
1946-2016年。福岡県田川市出身。フランス文学者。愛知淑徳大学名誉教授。
主な著書に、『メディア都市パリ』『モードの帝国』(ちくま学芸文庫)、『娼婦』(日本文芸社)、『声の銀河系』(河出書房新社)、『リゾート世紀末』(筑摩書房、台湾版『水的記憶之旅』)、『晶子とシャネル』(勁草書房)、『ブランドの条件』(岩波書店、韓国版『Made in ブランド』)、『贅沢の条件』(岩波書店)、『誰も知らない印象派』(左右社)、『「フランスかぶれ」の誕生』(藤原書店)など多数。
主な訳書に、バルザック『風俗研究』『従妹ベット』上下巻(藤原書店)、アラン・コルバン『においの歴史』『処女崇拝の系譜』(共訳、藤原書店)、ポール・モラン『シャネル 人生を語る』(中央公論新社)、モーパッサン『モーパッサン短編集』(ちくま文庫)、ロラン・バルト『ロラン・バルト モード論集』(ちくま学芸文庫)など多数。

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