- 小倉和夫 著
- 四六上製 352頁
ISBN-13: 9784865782059
刊行日: 2018/12
新しい中国観にむけて―― 古代から現代まで、日本が中国とどう向き合ってきたのか
明治以降の日本にとって、中国は、近代化に乗り遅れた混乱と混迷の国であると同時に、文化的伝統には親近感を覚える国だった。しかし、古代にまで遡れば、政治的権威の源であり、学ぶべき故事来歴の豊かな模範であった。このような断絶し、矛盾した中国観が共存してきたが、中国が大国化した今、“新しい中国観”の確立が急務である。二千年前から続く関係史を鳥瞰し、“日本が中国とどう向き合ってきたのか”を探る労作。
目次
今なぜ、「日本にとって中国とは何だったか」を自問すべきなのか
――「はじめに」にかえて――
第一部 古代から江戸時代までの中国観
1 卑弥呼と中国
2 倭の五王と中国
3 『古事記』と『日本書紀』のなかの中国
4 聖徳太子と中国
5 遣唐使節にとっての中国
6 阿倍仲麻呂と中国
7 『枕草子』の中国
8 『源氏物語』の中の中国
9 円仁の見た中国
10 平清盛の中国観
11 道元の見た中国
12 北条時宗と中国
13 『方丈記』と『徒然草』に見る中国
14 『太平記』の中国
15 足利義満にとっての中国
16 能のなかの中国
17 能『白楽天』及び『唐船』と日中関係
18 秀吉にとっての中国
19 徳川三代(家康、秀忠、家光)にとっての中国
20 江戸文学のなかの中国
21 『国姓爺合戦』に見る中国と中国人
第二部 近代日本における政治家、外交官、実業家たちの中国観
1 勝海舟の中国論
2 福沢諭吉と中国
3 岡倉天心の中国
4 内村鑑三の中国観
5 徳富蘇峰にとっての中国と中国人
6 幸徳秋水と中国革命
7 後藤新平と中国
8 宮崎滔天の内なる中国
9 実業家たちにとっての中国
10 大隈重信の中国観
11 大川周明と中国
12 幣原喜重郎の中国観
13 石原莞爾にとっての中国
14 松岡洋右と中国
15 重光葵のなかの中国
16 石橋湛山の中国観
17 吉田茂と中国
18 岸信介、大平正芳、椎名悦三郎の中国観
第三部 近代日本の画家、文人の描いた中国と中国人像
1 芥川龍之介の中国
2 阿部知二『北京』に描かれた中国と日中関係
3 佐藤春夫『風雲』から見た中国
4 石川達三の小説に見る中国像
5 田村泰次郎『肉体の悪魔』と中国
6 火野葦平『赤い国の旅人』に見る中国
7 横光利一『上海』に見る中国と日本
8 近代日本人洋画家の「描いた」中国
――石井柏亭・梅原龍三郎・岸田劉生・藤島武二・
藤田嗣治・向井潤吉・安井曾太郎―
9 軍国主義のかくれた賛美?
歴史的視点にたった新しい中国観を育てるために――結びにかえて
注
あとがき
日中関係史年表(238-1980)
主要人名索引
関連情報
日本が自身を西洋化することによって、西洋の進出に対処しようとしたのに対して、中国は、西洋を中国化する方向で対処しようとしたともいえるのである。日本が一〇〇年かけて自らを西洋化したのに対して、中国は、二〇〇年、三〇〇年かけて西洋を中国化しようとする考えであったとみなしてもあながち間違いではない。
(本書より)
著者紹介
1938年、東京都生まれ。東京大学法学部、英ケンブリッジ大学経済学部卒業。1962年、外務省入省。文化交流部長、経済局長、ベトナム大使、外務審議官(経済担当)、韓国大使、フランス大使などを歴任し、2002年11月に退任。2010年まで国際交流基金理事長、現在同顧問、青山学院大学特別招聘教授、日本財団パラリンピックサポートセンター理事長。
著書に『パリの周恩来――中国革命家の西欧体験』(1992年、中央公論新社、吉田茂賞受賞)『日米経済摩擦――表の事情ウラの事情』(改訂版1991年、朝日文庫)、『「西」の日本・「東」の日本――国際交渉のスタイルと日本の対応』(1995年、研究社出版)、『中国の威信 日本の矜持――東アジアの国際関係再構築に向けて』(2001年、中央公論新社)、『吉田茂の自問』(2003年)、『日本のアジア外交 二千年の系譜』(2013年、以上藤原書店)、『日本人の朝鮮観』(2016年、日本経済新聞出版社)など。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです