- 荻原眞子 著
- 四六上製 256頁
ISBN-13: 9784865783186
刊行日: 2021/6
生命(いのち)をめぐる思索の旅
「ウマイ」とは、南シベリアを中心として、ユーラシアの東西の諸民族に広く共通する生命の母神
膨大なロシア語文献を渉猟し、シベリア全域の民族譚を掘り起こすとともに、アイヌのユーカラ、『源氏物語』、柳田国男「山人論」との類縁性を探る。後期旧石器時代から数万年、人類が繋いできた「いのちの原点」とは!?
目次
はじめに――いのちの原点「ウマイ」を考える
序 章 シベリア――大地・民族・言語・文化
一 シベリアの大地
二 シベリアの植民地化
三 ロシア帝国における学術探検
四 シベリアの民族学研究
五 シベリア諸民族の言語
六 シベリア諸民族社会の生業――狩猟民文化(狩猟・漁撈・採集)
Ⅰ 生命の民族誌
第一章 シベリア諸民族の生命観
一 「生きている」ということについて
二 病気・死をもたらす「悪霊」
三 シベリア諸民族の精神世界
第二章 生命を授かる
一 アイヌでは
二 北東シベリアの諸民族では
三 トゥングース語系諸族の霊魂観
四 南シベリアの諸民族では
五 西シベリアの諸民族では
第三章 はかなき生命
一 産屋のこと
二 生命を脅かすもの
三 命を脅かすもの――物怪
四 悪霊を回避する
五 悪霊を陽動する――命名・汚穢な名など
六 子どもの死
第四章 霊魂の鳥(1)――樹上葬
一 嬰児の樹上葬
二 霊魂の樹
三 樹上葬の問題
第五章 霊魂の鳥(2)――鳥竿
一 チャンスンとソッテ
二 鳥竿とシャマンの補助霊
三 ラスコー洞窟の鳥人と倭建命の間
四 死霊の鳥
Ⅱ 山の主・ウマイ母神
第一章 アルタイの山岳崇拝
一 山の神
二 シベリアの狩猟民文化――狩猟漁撈採集
三 アルタイ山岳崇拝――狩猟領域としての聖山
四 女性に課せられたタブー
五 山岳崇拝と山の主
六 アルタイの主・生命を宿す山
第二章 山・ウマイ母神
一 洞窟絵画のもう一つの図像
二 シベリア諸民族のウマイ
(1)「母胎、後産など」としてのumaj―ome―umaについて
(2)出産・子どもの守護神としてのウマイ
(3)カルタシュとプゴ(ホ)ス
三 ウマイと鳥・樹木
四 山で生命を授かる
五 天神になったウマイとカルタシュ・プゴ(ホ)ス
六 山にある生命と樹梢に宿る生命
第三章 日本の山の神
一 山の神と木樵・狩人
二 山の神の話
三 山の神――産の神
四 山の神は女神?
第四章 シベリアの狩猟民世界――山の主とウマイ
一 山の主は獲物の配剤者
二 山は生命の母胎・ウマイ
三 ウマイ――後期旧石器時代の洞窟絵画
終 章 ウマイ母神――ユーラシア最古層の狩猟民文化
一 人類の拡散――シベリアの後期旧石器文化
二 日本の後期旧石器文化――氷河期の狩猟民文化
三 生命の山――ウマイ母神
おしまいに
注
参考文献
図表一覧
索引(人名/主要民族名/主要地名)
序 章 シベリア――大地・民族・言語・文化
一 シベリアの大地
二 シベリアの植民地化
三 ロシア帝国における学術探検
四 シベリアの民族学研究
五 シベリア諸民族の言語
六 シベリア諸民族社会の生業――狩猟民文化(狩猟・漁撈・採集)
Ⅰ 生命の民族誌
第一章 シベリア諸民族の生命観
一 「生きている」ということについて
二 病気・死をもたらす「悪霊」
三 シベリア諸民族の精神世界
第二章 生命を授かる
一 アイヌでは
二 北東シベリアの諸民族では
三 トゥングース語系諸族の霊魂観
四 南シベリアの諸民族では
五 西シベリアの諸民族では
第三章 はかなき生命
一 産屋のこと
二 生命を脅かすもの
三 命を脅かすもの――物怪
四 悪霊を回避する
五 悪霊を陽動する――命名・汚穢な名など
六 子どもの死
第四章 霊魂の鳥(1)――樹上葬
一 嬰児の樹上葬
二 霊魂の樹
三 樹上葬の問題
第五章 霊魂の鳥(2)――鳥竿
一 チャンスンとソッテ
二 鳥竿とシャマンの補助霊
三 ラスコー洞窟の鳥人と倭建命の間
四 死霊の鳥
Ⅱ 山の主・ウマイ母神
第一章 アルタイの山岳崇拝
一 山の神
二 シベリアの狩猟民文化――狩猟漁撈採集
三 アルタイ山岳崇拝――狩猟領域としての聖山
四 女性に課せられたタブー
五 山岳崇拝と山の主
六 アルタイの主・生命を宿す山
第二章 山・ウマイ母神
一 洞窟絵画のもう一つの図像
二 シベリア諸民族のウマイ
(1)「母胎、後産など」としてのumaj―ome―umaについて
(2)出産・子どもの守護神としてのウマイ
(3)カルタシュとプゴ(ホ)ス
三 ウマイと鳥・樹木
四 山で生命を授かる
五 天神になったウマイとカルタシュ・プゴ(ホ)ス
六 山にある生命と樹梢に宿る生命
第三章 日本の山の神
一 山の神と木樵・狩人
二 山の神の話
三 山の神――産の神
四 山の神は女神?
第四章 シベリアの狩猟民世界――山の主とウマイ
一 山の主は獲物の配剤者
二 山は生命の母胎・ウマイ
三 ウマイ――後期旧石器時代の洞窟絵画
終 章 ウマイ母神――ユーラシア最古層の狩猟民文化
一 人類の拡散――シベリアの後期旧石器文化
二 日本の後期旧石器文化――氷河期の狩猟民文化
三 生命の山――ウマイ母神
おしまいに
注
参考文献
図表一覧
索引(人名/主要民族名/主要地名)
関連情報
・本書は生命をめぐる思索の旅である。その手がかりは、ユーラシア、特にシベリアの民族学研究で蓄積されてきた知見である。
・まず、シベリア諸民族の人びとが生まれくる生命をいかに守り育んできたのか、それを支えてきた観念や習俗がどのようであったのか、「生命」をどのように観じていたのかを辿ってみる。
・人間や動物の生と死から、人は生命の実体を見、やがてそこにいわゆる霊魂を介在させて生命を解することにもなる。現代の私たちもまた、現実の生命とともに観念・こころのなかの生命を持ちつづけている。
・「ウマイ」とは、南シベリアを中心として、ユーラシアの東西の諸民族に広く共通する生命の母神のことである。
・古くには、後期旧石器時代の洞窟絵画にみられる女陰がある。一方、南シベリアのアルタイ・サヤン山脈地域の諸民族には出産と子どもを守護するウマイの信仰習俗がある。ウマイの原義は母胎や後産などの意で、正に生命の誕生に関わっている。
・そして、ウマイという語は南シベリアを中心に西は中央ユーラシア、東は内モンゴル、中国東北部にまで共通に認められる。さらに、アムールランドの諸民族ではウマイに類する語は鳥の巣を意味する。こうしてみると、後期旧石器時代の洞窟絵画の女陰図像とウマイの間に通ずる脈絡を想定してみたくなる。
【著者紹介】
●荻原眞子(おぎはら・しんこ)
1942年 中国山西省太原生まれ。
上智大学外国語学部ロシア語学科、東京大学教養学科文化人類学、同大学院社会学研究科文化人類学修士課程で学ぶ。1976年同博士課程単位取得退学。1990年学術博士。1976-1991年国際商科大学(1980年東京国際大学)、1991-1993年湘南国際女子短期大学、1993-2008年千葉大学文学部。千葉大学名誉教授。
著書に『東北アジアの神話・伝説』(1995、東方書店)、『北方諸民族の世界観――アイヌとアムール・サハリン地域の神話・伝承』(1996)『ロシア科学アカデミー人類学民族学博物館所蔵アイヌ資料目録』(1997)『ロシア民族学博物館所蔵アイヌ資料目録』(2007、以上いずれも草風館)、共編著に『民族文化の世界上下』(1990、小学館)、『海外アイヌ・コレクション総目録』(2001-2003年度文部科学省科学研究費・研究報告書、2004、南山大学人類学研究所)、福田晃との共編著に『アイヌ・日本からユーラシアへ 英雄叙事詩』(2018、三弥井書店)他がある。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです
・まず、シベリア諸民族の人びとが生まれくる生命をいかに守り育んできたのか、それを支えてきた観念や習俗がどのようであったのか、「生命」をどのように観じていたのかを辿ってみる。
・人間や動物の生と死から、人は生命の実体を見、やがてそこにいわゆる霊魂を介在させて生命を解することにもなる。現代の私たちもまた、現実の生命とともに観念・こころのなかの生命を持ちつづけている。
・「ウマイ」とは、南シベリアを中心として、ユーラシアの東西の諸民族に広く共通する生命の母神のことである。
・古くには、後期旧石器時代の洞窟絵画にみられる女陰がある。一方、南シベリアのアルタイ・サヤン山脈地域の諸民族には出産と子どもを守護するウマイの信仰習俗がある。ウマイの原義は母胎や後産などの意で、正に生命の誕生に関わっている。
・そして、ウマイという語は南シベリアを中心に西は中央ユーラシア、東は内モンゴル、中国東北部にまで共通に認められる。さらに、アムールランドの諸民族ではウマイに類する語は鳥の巣を意味する。こうしてみると、後期旧石器時代の洞窟絵画の女陰図像とウマイの間に通ずる脈絡を想定してみたくなる。
(「はじめに」より)
【著者紹介】
●荻原眞子(おぎはら・しんこ)
1942年 中国山西省太原生まれ。
上智大学外国語学部ロシア語学科、東京大学教養学科文化人類学、同大学院社会学研究科文化人類学修士課程で学ぶ。1976年同博士課程単位取得退学。1990年学術博士。1976-1991年国際商科大学(1980年東京国際大学)、1991-1993年湘南国際女子短期大学、1993-2008年千葉大学文学部。千葉大学名誉教授。
著書に『東北アジアの神話・伝説』(1995、東方書店)、『北方諸民族の世界観――アイヌとアムール・サハリン地域の神話・伝承』(1996)『ロシア科学アカデミー人類学民族学博物館所蔵アイヌ資料目録』(1997)『ロシア民族学博物館所蔵アイヌ資料目録』(2007、以上いずれも草風館)、共編著に『民族文化の世界上下』(1990、小学館)、『海外アイヌ・コレクション総目録』(2001-2003年度文部科学省科学研究費・研究報告書、2004、南山大学人類学研究所)、福田晃との共編著に『アイヌ・日本からユーラシアへ 英雄叙事詩』(2018、三弥井書店)他がある。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです