〔社会思想史学会年報〕社会思想史研究 No.45 [特集]社会批判はなおも可能か?

価格: ¥2,860 (税込)
[ポイント還元 114ポイント~]
数量:
在庫: 在庫あり

返品についての詳細はこちら

twitter

  • 社会思想史学会 編
  • A5並製 272頁
    ISBN-13: 9784865783230
    刊行日: 2021/09

〈特集〉社会批判はなおも可能か?

現実の不正や病理、歪みを問う批判的な討論は、より良き社会構築に不可欠だが、その当たり前のことが抑圧されつつある。今こそ必要とされる社会批判を学問的に再検討する。

〈寄稿〉藤野寛/小野寺研太/三宅芳夫/白瀨小百合/吉田敬介/山田竜作/上谷繁之/斉藤尚/岡崎弘樹/上野大樹/川出良枝/平子友長/崎山政毅/立川潔/平石耕/恒木健太郎/宇野重規/乙部延剛/佐藤空/太田仁樹/矢嶋直規/山尾忠弘/辰巳伸知/鬼頭葉子/田中拓道


目次

第10回(2020年度)社会思想史学会研究奨励賞の公示

〈特集〉社会批判はなおも可能か?
〈論文〉批判の規範的前提と歴史哲学 藤野 寛
〈論文〉社会批判とジェンダー 小野寺研太
〈論文〉社会批判はなおも可能か?【「今」でなければいつ?】 三宅芳夫

〈公募論文〉
アンリ・サン=シモンによる「管理」の概念【公行政の改革を目指した産業的管理の構想】 白瀨小百合
『啓蒙の弁証法』から読むキルケゴール【反知性主義か、啓蒙の自己省察か】 吉田敬介
カール・マンハイムの「自由のための計画」における宗教【計画化社会・実質的倫理・アーキタイプ】 山田竜作
一九二〇年代後半における河上肇の唯物史観理解【「自己清算」論文を中心として】 上谷繁之
塩野谷祐一の経済倫理学の再検討【人民投票型民主主義と討議民主主義の統合の試みをめぐって】 斉藤 尚
シリア現代思想における世俗主義と権威主義体制の結びつきの発見 岡崎弘樹

〈書評〉
『スミスの倫理――『道徳感情論』を読む』(竹本洋著) 上野大樹
Mme de Staël and political liberalism in France(Chinatsu Takeda著) 川出良枝
『19世紀前半のドイツ経済思想――ドイツ古典派、ロマン主義、フリードリヒ・リスト』(原田哲史著) 平子友長
『大洪水の前に――マルクスと惑星の物質代謝』(斎藤幸平著) 崎山政毅
『J・S・ミル社会主義論の展開――所有と制度、そして現代』(安井俊一著) 立川 潔
『市民の義務としての 〈反乱〉 ――イギリス政治思想史におけるシティズンシップ論の系譜』(梅澤佑介著) 平石 耕
『大正デモクラットの精神史――東アジアにおける「知識人」の誕生』(武藤秀太郎著) 恒木健太郎
『ファシズムと冷戦のはざまで――戦後思想の胎動と形成 1930-1960』(三宅芳夫著) 宇野重規
『フーコーの風向き――近代国家の系譜学』(重田園江著) 乙部延剛
『アメリカ保守主義の思想史』(井上弘貴著) 佐藤 空
『戦争と平和の経済思想』(小峯敦編著) 太田仁樹
『自然宗教をめぐる対話』(ヒューム著、犬塚元訳) 矢嶋直規
『人間の権利の擁護 娘達の教育について』(メアリ・ウルストンクラフト著、清水和子・後藤浩子・梅垣千尋訳) 山尾忠弘
『フランクフルト学派のナチ・ドイツ秘密レポート』(フランツ・ノイマン、ヘルベルト・マルクーゼ、オットー・キルヒハイマー著、R・ラウダーニ編、野口雅弘訳) 辰巳伸知
『世俗の時代(上・下)』(チャールズ・テイラー著、千葉眞監訳、木部尚志他訳) 鬼頭葉子
『良き統治――大統領制化する民主主義』(ピエール・ロザンヴァロン著、古城毅他訳) 田中拓道

2020年会員新著一覧(五十音順)
英文抄録/英文目次
公募論文投稿規程/公募論文審査規程/執筆要領/社会思想史学会研究奨励賞規程
編集後記

関連情報

〈特集趣旨文〉
 本号の特集テーマは「社会批判はなおも可能か?」である。基本的には例年そうであるように、同テーマで開催された前年度の社会思想史学会大会のシンポジウムにご登壇いただいた方々にご執筆いただいた。例年どおりでないのは、コロナ禍のために大会が史上初のオンライン開催となったことである。それだけではない。この大会を前にして、日本学術会議が推薦した新規会員候補105人のうち6名の任命が拒否されたことが明らかになった。本学会幹事会も任命拒否の理由を「ことば」によって明確に説明することと、そうした説明抜きの今回の措置を撤回することを求める声明を出した。
 現実の不正や病理や歪みを問う批判的な討論は、社会思想史の研究にとっても、民主的な社会にとっても不可欠である。しかしこの当たり前のことが、難しくなってはいないか。近年、批判が忌避される傾向にある。忖度や同調圧力などの言葉が現状の記述のためによく用いられている。公文書の改ざんなどが明るみに出ても、それに対する批判は積極的には受け入れられず、それどころか「野党は批判ばかり」といった冷笑的な反応に直面することも少なくない。世界的にも、選挙という体裁は維持しているが、野党や批判的メディアに対して抑圧的な権威主義体制の台頭が問題にされている。
 こうした情況において社会批判のあり方を反省的に考察することを意図して、「社会批判はなおも可能か?」というテーマを設定した。本号では3人の会員に寄稿していただいた。藤野寛会員は歴史哲学的な前提に注目して批判理論、とりわけアクセル・ホネットについて論じている。小野寺研太会員はジュディス・バトラーの一連の議論に注目しながら、社会批判とジェンダーについて検討し、ジェンダーの視点を思想史的に「使う」ことの意味についても考察している。三宅芳夫会員はカント主義的なメタクリティークとともに、インターステイト・システムと資本主義世界経済の複合システムに対する批判を取り上げている。
 いずれの論文も「社会批判はなおも可能か?」という問いかけにイエスと答えたうえで、それぞれの視角から議論を展開していただいている。今回のテーマである社会批判についてはもちろんのこと、社会批判を扱うのに最も適した研究領域の一つである社会思想史研究の現在についての考察としても、この特集はお読みいただけるのではないかと思う。(野口雅弘)

ページトップへ