ISBN-13: 9784894340176
刊行日: 1995/6
自立への意志を提唱する待望の本格作。
地震学、法学、経済学、哲学、宗教、環境、歴史、医療、建築・土木、文学、ジャーナリズム等、多領域の論者が、生活者の視点から、震災があぶりだした諸問題を総合的かつ根本的に掘り下げ、「正常状態」の充実をめざす、待望の本格作の緊急出版。
目次
I シンポジウム 阪神大震災と戦後日本
一海和義 (中国文学) / 飛田雄一 (外国人留学生支援) / 惣宇利紀男 (公共経済学) /
杉原 達 (文化交流史) / 丸山照雄 (宗教評論) / 山田國廣 (環境問題研究) /
南部ひろ (新聞記者) / 平井正治 (土木・港湾日雇労働) ― 司 会 ― 桑田禮彰 (哲 学)
はじめに ――私の震災
第1部 阪神大震災の実態に迫る
1 呆然自失から激しい怒りへ
すべての問題を断片的に体験する / 心の変化
2 地震発生
地震予知はできない / 地震とつきあう
3 地震直後
ガス爆発の恐怖 / 情報不足で何が起こったか / 電話の混乱 / 午前5時46分
4 地域のなかの水
井戸水と川の水 / 地下浄水池の利用
5 避難所
設備ゼロの避難所 / リーダーシップの発生 / 弱者の排除 / いろいろな避難所
6 ボランティア
ボランティアの自発性と組織性・効率性 / 「自覚自願」 と手当 /
ボランティア・システムを重層的につくっていこう / ボランティアは既成組織の枠を超えたときはじまる
第2部 阪神大震災と戦後50年
1 戦後の政治・経済システム
生活・消費・環境の共生 / 集中から分散へ / 現実に動きはじめている分散化
2 共生の階層構造を考える
外国人を住人と認めない行政 / 労働者を置き去りにする行政 / 階層構造をおさえた多文化主義
3 法の内と外
非常時の権限集中の法規定をめぐって / 責任回避のシステム / 論議の先走り /
野焼きという 「超法規的措置」 / 住民側の対抗力
4 住民による復興計画案
神戸の治安行政に生活をまかせておいていいのか / 被災者の自立を援助する行政を /
専門家がサポートする住民側の代案を出そう
5 経済の立て直しはどうするのか
景気浮揚策・失業対策・職場創出案 / 新しい地場産業を創り出す / 神戸新空港計画と復興援助の資金
6 戦後の建設・土木中心の政治・経済
建設業の重層構造が生む災害 / ゼネコンの謝罪 / ゼネコンの公共性
おわりに ――私たちの戦後の生きざまをふり返る
II 震災の思想
現在の正常状態をもっと充実すべきである
「阪神原始社会」 出現 / その日暮らしの日本経済 / 心の世紀のために
井上泰夫 (ゲスト)
新しい町づくり / 震災のなかのやわらかさ
疫 学 / 大学医学部と救急医療 / 地域医療
2 「救急医療」 の次にくるもの
PTSD / 心のケア / 日本人の死生観
1 地震予知とは何か
認識の溝 / 国家プロジェクト地震予知計画 / 東海地震 /
経験主義的予知 / 予知は原理的に可能か
2 阪神大震災を考える
震度の問題 / 前兆幻想 / 長期的予知の失敗 /
新たな震災被害軽減システム / 科学の基礎研究の充実を
自立と排除 / 避難所生活とプライバシー / 体育館モデルとテント村モデル / おわりに