価値の帝国
経済学を再生する
商品の詳細
- アンドレ・オルレアン
- 坂口明義
- A5上製 360ページ
ISBN-13: 9784894349438
刊行日: 2013/11
合理的主体による完全に合理的な選択がなぜ破滅的な結果を招くのか。
「価値」を“労働”や“効用”の反映と捉える従来の経済学における価値理論を批判し、価値の自己増殖のダイナミズムを捉える模倣仮説を採用。
現代金融市場の根源的不安定さを衝き、社会科学としての経済学の再生を訴える、気鋭の経済学者の最重要著作、完訳。
●第1回ポール・リクール賞受賞作
目次
日本語版への序文
序説
第I部 経済学批判
第1章 価値実体――労働と効用
第2章 商品の客観性
第3章 稀少性
第II部 価値という制度
第4章 貨幣
第5章 価値を考えるための領域統合的な枠組み
第III部 市場金融
第6章 金融的評価
第7章 流動性と投機
結論
関連情報
金融システムが自己修正する能力は皆無に近い。この点については、事実によってあまりにも明白である。サブプライム危機の事例においては、2007年初めに不動産価格が反転し、サブプライム・ローンの焦げ付きが憂慮すべき水準に達するに及んで、ようやく風向きが変わった。(…)われわれの考えでは、これは格付け機関が犯す「誤り」によるものではない。格付け機関が行っているのは、単に周囲の諸信念に同調することにすぎず、そうした信念を洗練された意見へと置き換えることにすぎない。別の機関であったとしても、同様のことを行っていただろうし、そうしなければ――もしも別様の行動をとるならば――顧客を失っていただろう。そう考えられる理由は、この盲目が決して心理学的事実ではなく、金融ゲームに固有な諸制約からの帰結であることにある。このような〔予め歯止めをかける〕仕方で危機が回避されたことはないということは、金融の歴史全体を通じて既に証明されている。このことは、金融業者の非合理性や強欲を想定することとは全く無関係である。
われわれの分析は、金融市場には、金融市場の行き過ぎを是正するいかなる復元力も存在しないことを示している。金融的競争は特殊な性質、すなわち根本的に不安定な性質を有している。
(本書より)
●アンドレ・オルレアン(Andr? ORL?AN)
1950年生。国立科学研究センター(CNRS)研究主任、社会科学高等研究院(EHESS)研究主任、パリ‐ジュルダン経済学共同研究ユニット(PSE)研究員、フランス政治経済学会(AFEP)会長。金融論・ミクロ経済学が専門で、近年はコンヴァンシオン理論の展開に注力。著書に『貨幣主権論』(共編著、藤原書店、2012年)、『世界をダメにした経済学10の誤り』(共著、明石書店、2012年)、『熱狂から恐慌へ――金融危機を考える』(2009年)、『進化ミクロ経済学』(共著、2006年)、『金融の権力』(藤原書店、2001年)、『貨幣の暴力――金融危機のレギュラシオン・アプローチ』(共著、法政大学出版局、1991年)など。
われわれの分析は、金融市場には、金融市場の行き過ぎを是正するいかなる復元力も存在しないことを示している。金融的競争は特殊な性質、すなわち根本的に不安定な性質を有している。
(本書より)
●アンドレ・オルレアン(Andr? ORL?AN)
1950年生。国立科学研究センター(CNRS)研究主任、社会科学高等研究院(EHESS)研究主任、パリ‐ジュルダン経済学共同研究ユニット(PSE)研究員、フランス政治経済学会(AFEP)会長。金融論・ミクロ経済学が専門で、近年はコンヴァンシオン理論の展開に注力。著書に『貨幣主権論』(共編著、藤原書店、2012年)、『世界をダメにした経済学10の誤り』(共著、明石書店、2012年)、『熱狂から恐慌へ――金融危機を考える』(2009年)、『進化ミクロ経済学』(共著、2006年)、『金融の権力』(藤原書店、2001年)、『貨幣の暴力――金融危機のレギュラシオン・アプローチ』(共著、法政大学出版局、1991年)など。