ISBN-13: 9784938661922
刊行日: 1994/4
渾身の書下し、新経済学入門
マルクス経済学や近代経済学にも精通した著者が、人類学、社会学などの最新成果を取り込み、科学としての柔軟性と全体性を取り戻す新しい〈人間の学〉としての経済学を提唱。初学者に向けて、その原点と初心を示し、経済のしくみ、価値体系の謎に迫る。
目次
プロローグ 「ヘラクレスの柱」 を越えて
I 経済とは何か
第1章 経済の原理 ―― 労働の自己矛盾が人間社会を作った
はじめに 経済の概念
1 日本語の 「経済」 の語源
2 英語のeconomyの語源
3 ドイツ語のWirtschaftの語源
4 political economy / Volkswirtschaft
第1節 人間と経済
1 人間の生活活動の分類
2 「生産」 と 「消費」 の区別について
3 経済活動の中核は生産活動である
4 生産活動の中核は労働である
第2節 人間と労働 ―― 労働の自己矛盾と社会発展の原理
1 人間の労働の特徴
2 労働は自律的に変化する
3 労働の自己矛盾 ―― 「労働の効用」 と 「労働の不効用」
4 人間社会の変化・発展の原動力としての労働
5 社会発展の原理 ―― 労働の自己矛盾の二つの働き
6 他人支配の諸相 ―― 泥棒・略奪・強盗
第3節 人間と資本主義・社会主義
1 もう一つの他人支配 ―― 間接的他人支配
2 社会の外部・周辺部の資本主義 (商業) から、 社会内部の資本主義 (産業資本主義) へ
―― 近代資本主義の発生――
3 資本主義とは人間の本性から出てくるものである
4 人間の本性 ―― 性善説と性悪説
5 資本主義は他人 (外部) の原理、 性悪の原理
6 社会主義 (共産主義) は家族 (内部) の原理、 性善の原理
7 資本主義と社会主義は二者択一のものではなく、 一組の社会原理である
第2章 経済はいかにして発見されたのか ―― 経済分析の歴史
はじめに 「経済」 の発見
1 「埋め込まれた経済」
2 「離床した経済」
3 「市場経済」 の展開と経済概念の拡大
第1節 古代ギリシャ・ローマの経済分析
1 労働の蔑視
2 経済活動の位置づけ
3 貨幣経済の位置づけ
4 利潤・利子の位置づけ
第2節 中世キリスト教社会の経済分析
1 二重の枠に閉じ込められた経済
2 カトリック教会による全生活の支配
3 プロテスタントと資本主義の近代化
第3節 近代社会の経済分析
1 社会契約説 ―― 人間の発見
2 重商主義 (mercantilism)
3 重農主義 (physiocracy)
4 労働価値説 ―― 労働の発見
5 マルクス経済学と近代経済学
第3章 日本経済の原理 ―― 五公五民経済
はじめに 日本経済の長期発展構造
1 日本経済の構造転換
2 日本経済の発展構造
第1節 日本経済の 「近代化」
1 明治維新とは何だったのか
2 「近代化」 とは工業化のこと
第2節 戦前の日本経済
1 特殊性 (1) ―― 後発資本主義であること
2 特殊性 (2) ―― 封建的体質が残っていたこと
3 「近代化」 の財政的メカニズム ―― 上からの資本形成
4 戦前の日本経済の矛盾
第3節 戦後の日本経済
1 諸改革
a 財閥解体
b 農地改革
c 労働民主化
2 経済復興のメカニズム
a 傾斜生産方式
b 復興金融金庫
c 経済復興の性格
3 高度成長の構造
a 国内市場の拡大・深化
b 低賃金・高貯蓄
c 金融体制
d 技術導入
II 価格・貨幣とは何か
第4章 価格分析 ―― 価格の演出者は労働か効用か
はじめに 価格現象と価値概念 ―― 価格はイレモノ、 価値はナカミ
第1節 商品と経済財
1 価格を伴うものは何か ―― 価格分析の到達点
2 「商品」 とは ―― 「資本制生産様式の元素形態」
3 「経済財」 とは ―― 希少性をもった財
第2節 なぜ相異なる認識がでてくるのか
1 考察の枠組みの違い
2 視点の違い ―― 生産の目と消費の目と
第3節 「希少性の原理」 について
第5章 マルクス経済学の価格理論
はじめに 理論的枠組み
1 『資本論』 の論理構造
2 マルクス経済学の価格理論の構造
第1節 『資本論』 第1巻の価格理論
1 「社会的必要労働量」 による価値の決定
2 価値の貨幣形態 ―― 価格
3 価値の構成要素
4 商品の価値は絶えず引き下げられる傾向がある ―― 「特別剰余価値」 の概念
5 補論 ―― 現代経済における価値と価格の乖離について
第2節 『資本論』 第3巻の価格理論
1 剰余価値の利潤への転化
2 「価値」 の 「生産価格」 への転化 ―― 平均利潤の形成
第3節 独占価格論
第6章 近代経済学の価格理論
はじめに 近代経済学の価格理論の構造
第1節 限界効用価値説と 「折衷的価値論」
1 限界効用価値説
2 「折衷的価値論」
第2節 需要・供給による価格の決定
1 需要曲線・供給曲線
2 短期価格と長期価格
3 「部分均衡分析」 と 「一般均衡分析」
第3節 寡占価格論
第7章 貨幣分析 ―― 貨幣は平和のきずな
はじめに 貨幣の意味するもの
第1節 マルクス経済学の貨幣理論
1 貨幣の本質 ―― 貨幣とは特殊な商品である
2 貨幣発生の必然性
3 貨幣商品の変遷
4 貨幣の諸機能
a 価値尺度
b 流通手段
c 支払手段
d 蓄蔵貨幣
e 世界貨幣
第2節 近代経済学の貨幣理論
1 貨幣金属説と貨幣名目説の対立
2 貨幣金属説 (貨幣商品説)
3 貨幣名目説
a 貨幣国定説
b 貨幣指図証説
c 貨幣機能説
d 貨幣計算単位説 (抽象説)
4 貨幣数量説
第3節 経済人類学の貨幣理論
1 伝統的経済学の貨幣分析への批判
2 経済人類学の貨幣観
3 非市場社会の貨幣と市場社会の貨幣
4 内部貨幣と外部貨幣
5 全目的貨幣と限定目的貨幣
6 日本語の 「支払」 の語源的意味
エピローグ 交換から資本へ ―― 資本、 この人間的なるものよ
1 価格・貨幣は現象であり、 交換は本質である
2 交換の二つの起源
3 「単純商品生産」 はありうるか
4 交換から資本へ
あとがき
掲載図・表一覧
収録貨幣一覧
索 引