- ジャック・ル=ゴフ
- 菅沼潤 訳
- 四六上製 512ページ
ISBN-13: 9784865780017
刊行日: 2014/11
中世史の最高権威がダイナミックに描くヨーロッパ成立史の決定版!
現代われわれが考える「ヨーロッパ」は、いつ、いかにして生まれたのか? アナール派を代表する中世史の最高権威が、4世紀から15世紀に至る「中世」10世紀間に、古代ギリシア・ローマ、キリスト教、労働の三区分などの諸要素を血肉化しながら、自己認識として、そして地理的境界としての「ヨーロッパ」が生みだされるダイナミックな過程の全体像を明快に描く、ヨーロッパ成立史の決定版。
★英仏独西伊5か国共同出版!
【カラー口絵16頁】
目次
コレクション「ヨーロッパをつくる」の創刊にあたって
はじめに
序 中世以前
1 胚胎するヨーロッパ――4世紀から8世紀
異文化の混交/キリスト教化と統一
2 流産したヨーロッパ――8世紀から10世紀
シャルルマーニュの帝国/カロリング朝期の世界
3 空想のヨーロッパと潜在的ヨーロッパ――紀元千年
4 封建制ヨーロッパ――11世紀から12世紀
農村空間の変化/さまざまな階層とその精神構造/
流動的キリスト教世界と封建制王国/キリスト教精神の変容/
拡大するヨーロッパ
5 都市と大学の「黄金期」ヨーロッパ――13世紀
都市の成功/商業の成功/教育と大学の成功/
托鉢修道会の成功――大聖堂の時代
6 中世の秋、あるいは新時代の春?
おびえる中世/新時代の鼓動/ヨーロッパの地図
おわりに
訳者あとがき/ヨーロッパ中世史年表/ テーマ別参考文献/人名・地名索引
関連情報
本書では、中世にヨーロッパのどのような下絵が描かれたのか、また何がある程度までそれに抗い、それを反故にしていったのかということを、進歩と後退の直線的な過程という図式に陥ることなく概観することができたらと思う。しかしまた、これらの世紀(四世紀から十五世紀)が欠かせないものであること、今日と未来のヨーロッパに息づく過去からの遺産のなかでも、その重要性において中世からのそれに勝るものはないことを示すのもまた、本書のねらいとするところである。
ヨーロッパの実際の特徴、あるいはそうであるとされているものが、中世のあいだに明るみに出るし、またしばしばこのとき形成される。潜在的な統一と根本的な多様性との混在、諸民族の混交、東西あるいは南北の分断と対立、東側の限界の不確かさ、文化がその統一のために果たしている主要な役割といったものである。
(本書より)
●ジャック・ル=ゴフ(Jacques Le Goff, 1924-2014)
中世史家、『アナール』編集委員。
南仏のトゥーロン生まれ。青年時代を第二次大戦の戦火の中で過ごしたのち、高等師範学校に進学。在学中、プラハのカレル大学に留学。1950年、高等教育教授資格試験に合格。このときブローデルやモーリス・ロンバールが審査委員を務め、これがアナール派の歴史家たちに出会う最初の機会となる。以後、ソルボンヌのシャルル=エドモン・ペランの指導下で博士論文を準備するかたわら、アミアンのリセ、国立科学研究所、リール大学文学部にポストを得、またこの間、オックスフォード大学リンカーン・カレッジ、ローマ・フランス学院へ留学した。
1959年、アナール派が中心となって組織される高等研究院第六部門に入り、以後、フェーヴル、ブロック、ブローデルらのあとを受け、アナール派第三世代のリーダーとして活躍。1969年、ブローデルのあとを受けて、エマニュエル・ル=ロワ=ラデュリ、マルク・フェローとともに『アナール』誌の編集責任者となる。1972年、ブローデルの後任として第六部門部長となり、1975年には高等研究院第六部門の社会科学高等研究院としての独立に尽力。さらに1978年、同研究院に西洋中世歴史人類学研究グループを立ち上げ、1992年の退官までその代表の職を務めた。
著書に『煉獄の誕生』(法政大学出版局)『中世の夢』(名古屋大学出版会)『ル・ゴフ自伝』(法政大学出版局)『聖王ルイ』(新評論)『中世とは何か』『中世の身体』(藤原書店)など。
●菅沼潤(すがぬま・じゅん)
1965年東京都生まれ。フランス近代文学専攻。訳書にル=ゴフ『中世とは何か』『中世の身体』(共訳、藤原書店)、発表仏語論文に「1902年秋、ブリュージュにおけるプルースト」(慶應仏文学研究室紀要)など。