- 高銀+石牟礼道子 著
- 四六変上製 160頁
ISBN-13: 9784865780116
刊行日: 2015/1
韓国と日本を代表する知の両巨人
文学とは何か、人間とは何かについて魂を交歓させ語り尽くした三日間。
目次
Ⅰ 思春期の少年にようやく出会えた 第一日目
小さい時にお目にかかっていたら……
戦時下の私にとっての「朝鮮」
植民地下の私にとっての「日本」
チッソと朝鮮半島
精霊の存在、祈る人
虚無主義と現実主義のあいだ
海という人類最後の聖地
和やかだった父の最期
霊的な動物
野性の喪失
転機となった、ある労働者の死
Ⅱ 何のための文学か? 第二日目
人間の始まりと終わり
「ひと様のお墓」
海を行き来する詩
土地の精霊
原初そのものとしての海
ミナマタは終わっていない
現代人が喪失した言葉と感覚
闘いと祈り――時間の故郷と空間の故郷
魂が飛んでいる人
人間の孤独と華やかさ
平和の文学――文字なき人びとの声を書きたい
知性と野性
むしろ東洋で自然を虐殺している
「私」を正当化するだけの文学
マウル(村)の美しさ
マウル(村)を破壊した朝鮮戦争
「ナ(私)」ばかりを描く文学
水俣病が破壊した絆と「もやいなおし」
「愛する」という自分との闘い
憎悪を操る現代文明
戦後日本の対米追従
奇蹟のような出会い
Ⅲ 海の彼方へのあこがれ 第三日目
海からやってくる懐かしい人
歌の島
宇宙と対話をする狂人=詩人
「東京にも日本という国はなかった」
「イオド」という幻の島
「中庭」としての海と、「寄りもの」からできた島
「セノヤ」という掛け声
大きな光の矢が海に直入する――壮大なエロスの時刻
星がごはんとしてあった
夢の中の女性 高 銀
深いところで世界を共有 石牟礼道子
関連情報
【高 銀】
私の故郷に、小さな無人島がひとつありました。「ノレソン」という名で、「歌の島」という意味です。松の木などがあって、風で波が立ったりした時に、歌のような音が流れてくるので、そんな名前がつきました。いま考えると、おそらく何らかの事故で海で亡くなった漁師たちの魂が、いろんなことを聞かせたくて歌っていたのではないか、と思えてきます。それで、そういう亡くなった漁師たちに、もっと歌ってくれと言われて、私も詩人になったような気がします。
【石牟礼道子】
お月様の出る夜、とくに夏の夜、家を抜け出して、夜中にひとりで海辺に行くんです。それで岩に腰かけて歌うんです。まだこない未来を呼ぶと言いますか、海の向こうにある、まだ見えないもの、まだ聞こえないもの、それに向かって呼びかけるような気持ちです。その頃から詩人の素質が芽生えていたんだろうと思いますが、とにかく一種の恍惚感をもって海辺で歌っていました。
著者紹介
●高銀(コ・ウン, Ko Un)
1933年韓国全羅北道生。韓国を代表する詩人。道で拾ったハンセン病患者の詩集を読み,詩人を志す。朝鮮戦争時,報復虐殺を目撃,精神的混乱に。その後出家,僧侶として活躍するが,還俗し,投獄・拷問を受けながら民主化運動に従事。2000年6月の南北会談に金大統領に同行,詩を朗読。著書に詩集・小説・評論集等150余巻。邦訳『祖国の星』(金学鉉訳,新幹社)『華厳経』(三枝壽勝訳,御茶の水書房)『「アジア」の渚で』(吉増剛造との共著,藤原書店)『高銀詩選集 いま,君に詩が来たのか』(青柳優子,金應教,佐川亜紀訳,藤原書店)。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです
●石牟礼道子のプロフィール、関連書籍は
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