- 二至村 菁
- [推薦]日野原重明
- 四六上製 440ページ
ISBN-13: 9784865780338
刊行日: 2015/09
終戦後の貴重なカラーを含む写真と手紙で知る、古都の光と闇。
占領軍政を耐える日本人群像を、GHQ未発表資料や証言とともに、25歳の米軍医の眼をとおして鮮やかに描くノンフィクション!
【カラー口絵16頁】
●本書を推薦します。
聖路加国際大学名誉理事長/聖路加国際病院名誉院長
日野原重明
戦争はどんな人間をもクレージーにしてしまうほど異常な事態です。太平洋戦争中の731部隊の行動はその後どのような影響をもたらしたのか、それが本書によって明白にされています。
目次
〈プロローグ〉旅立ち――「なつかしいお父さんとお母さんへ」[1947年9月]
Ⅰ 京都へ来たくなかった米軍医――1947年
1 京都到着――「日本でいちばんすばらしい仕事」[9月]
2 七日がたって――「いやまったく今夜は」[9月]
3 京のもてなしと結核――「なにもかもしてくれるんです」[9月]
4 引揚港、舞鶴――「おかえりなさい!」[10月]
5 京都の売れ筋事業――「あれほど幸せだったことは」[10月]
6 貧富の中身――「たのしみがほんとに」[10月~11月]
7 満州からの道のり――「泣かんとおらんならん」[12月]
8 前任軍医――「すらっとしてすかっとして」[12月]
9 引揚港の婦人相談――「心身の傷手をいやさしめ」[12月]
10 仏面獣心の京女――「わるいことせな損どす」[12月]
11 クリスマスと学生たち――「どこの学校ですの」[12月]
12 上官サムス大佐――「筆記は無用」[12月]
Ⅱ 米軍支配を耐える京都のひとびと――1948年
13 善意の限界――「敗戦の傷もの」[1月]
14 PXの若者――「生きていくのがせいいっぱい」[2月]
15 日本人を健康にする作戦――「あったかく清潔にしていたいんです」[3月]
16 トラホーム――「洗面器一杯の井戸水」[4月]
17 病院スト是か非か――「日本には革命が必要」[5月]
18 老いと母の日――「ひとのいのちがかかっているときに」[5月]
19 いつでも性病感染中――「じぶんを何様だと」[6月]
20 米国留学解禁――「はちきれるような新鮮さ」[6月]
21 福井大地震――「いっぽうの端が燃えて」[6月]
22 降伏の記憶――「前途は明るいか」[8月]
23 七三一部隊からの帰還――「不思議な天の恩」[8月]
24 アメリカ式看護――「病むひとの苦しみを」[8月]
25 日本がえらんだ人口対策――「生きた新兵器」[10月]
26 ジフテリア予防接種事故――「ワクチンに寝首を」[11月]
Ⅲ 別れと自立――1949年
27 密輸された特効薬――「あたりまえだろ」[1月]
28 ハンセン病の外来治療――「いまぼくらが始めれば」[2月]
29 別れの贈り物――「船がでるまで」[3月]
30 京都出発――「風呂へ行きますか」[4月]
31 京都占領終了――「日本で失職するために」[11月]
32 米軍が去ったあとの京都――「蚊とハエのいない生活」[1950年4月~66年9月]
〈エピローグ〉四〇年後にかかってきた電話
――「ドクターキムラは? フジタさんは?」[2000年2月]
注
あとがき
本書関連公衆衛生史年表 (1902~2000)
人名索引
事項索引
関連情報
◎1947年秋、敗戦以来ずっと極貧の生活がつづく京都へ、陽気で素直でおおらかなアメリカ人軍医がやってきた。インターンを終えただけのジョン・D・グリスマン軍医は京都府庁衛生部を監督しつつ、61通の私信で日本占領の理不尽な内情をあけすけに両親に書きおくった。そして当時アメリカでも高価だったコダックのカラーフィルムで100枚をこえる写真を撮影した。
◎敗戦から数年のあいだ、日本の写真はすべて白黒フィルムで撮影された。そのため米軍占領時代の日本は暗くまずしく、みすぼらしい国であったように思われていた。だがグリスマン軍医が1947年から1949年までのあいだに出会った日本の赤ん坊や母親、戦争から帰還した夫たち、花街の女性、傷痍軍人、農民、子どもから老人にいたるまで、みんな明るく躍動的で美しかった……。
◎本書は米軍占領下で日本人が体験した苦闘の日々を、アメリカ人軍医を軸として、700近い資料と証言を使って生き生きと描いたノンフィクション物語である。
●二至村 菁(にしむら・せい)
1947年、京都生まれ。米国Earlham大学卒業(生物学、化学)、カナダMcGill大学理学部修士課程修了(遺伝学)後、同志社大学文学部(国文学)卒業。京都大学文学部国語国文学科研修員を経て1982年、トロント大学大学院博士課程修了(日本史、Ph.D.)。トロント大学東アジア学部助教授、上智大学国際関係研究所客員研究員、トロント大学科学技術史研究所客員研究員(日本史専攻)を歴任。著書に『日本人の生命を守った男――GHQサムス准将の闘い(講談社、2002)『エキリ物語』(中公新書、1996)。