- ジャック・ル=ゴフ
- 井上櫻子 訳
- 四六上製 328ページ
ISBN-13: 9784865780536
刊行日: 2015/12
“貨幣”は近代の産物である――中世史の泰斗による貨幣論の決定版!
『中世の高利貸』において、K・ポランニーを参照しつつ、高利貸の姿を通じて、社会に埋め込まれた“経済”のありようを素描した中世史の泰斗が、ついに貨幣そのものを俎上に載せる。宗教との相剋のなかでの貨幣による社会的結合の深化と、都市・国家・資本主義の胎動を描く、アナール派による貨幣論の決定版。
目次
謝辞
序
第1章 ローマ帝国とキリスト教化の遺産
第2章 カール大帝から封建制へ
第3章 12世紀末から13世紀初頭にかけての貨幣の急増
第4章 貨幣の最盛期としての13世紀
第5章 13世紀の商業革命における交易、銀、貨幣
第6章 貨幣と揺籃期の国家
第7章 貸付、債務、高利貸し
第8章 新たな富と貧困
第9章 13世紀から14世紀へ、貨幣の危機
第10章 中世末期における税制の完成
第11章 中世末期の都市、国家、貨幣
第12章 14、15世紀の物価、賃金、貨幣
第13章 托鉢修道会と貨幣
第14章 ユマニスム、メセナ、金銭
第15章 資本主義か愛徳か
結論
訳者あとがき/原注/参考文献一覧/人名索引
関連情報
本書で取り上げる主要テーマは二つある。一つは、中世の経済、生活、心性において貨幣というもの、あるいはむしろさまざまな貨幣がいかなる境遇にあったか、ということ。そしてもう一つは、宗教が支配的な社会の中で、キリスト教徒としてあるべき貨幣に対する態度やその使い道について、キリスト教がどのように考え、それを説いていたか、ということである。
第一の点については、中世を通じて、貨幣の流通量はごく限られており、そして何よりその種類が細分化し、多様であったと考えられる。そして、この貨幣の細分化こそ、経済的停滞状態から脱するのを困難にした原因の一つなのである。第二の点については、個人であれ、国家であれ、貨幣を求め、使用することが次第に正当化されるようになったのが認められるが、それは正当化の条件を定め、運用する機関であった教会が提示する条件を無視してのことであった。
(序より)
●ジャック・ル=ゴフ(Jacques Le Goff, 1924-2014)
中世史家、『アナール』編集委員。
南仏のトゥーロン生まれ。青年時代を第二次大戦の戦火の中で過ごしたのち、高等師範学校に進学。在学中、プラハのカレル大学に留学。1950年、高等教育教授資格試験に合格。このときブローデルやモーリス・ロンバールが審査委員を務め、これがアナール派の歴史家たちに出会う最初の機会となる。以後、ソルボンヌのシャルル=エドモン・ペランの指導下で博士論文を準備するかたわら、アミアンのリセ、国立科学研究所、リール大学文学部にポストを得、またこの間、オックスフォード大学リンカーン・カレッジ、ローマ・フランス学院へ留学。
1959年、アナール派が中心となって組織される高等研究院第六部門に入り、以後、フェーヴル、ブロック、ブローデルらのあとを受け、アナール派第三世代のリーダーとして活躍。1969年、ブローデルのあとを受けて、エマニュエル・ル=ロワ=ラデュリ、マルク・フェローとともに『アナール』誌の編集責任者となる。
1972年、ブローデルの後任として第六部門部長となる。1975年、高等研究院第六部門の社会科学高等研究院としての独立に尽力。
邦訳著書に『煉獄の誕生』(法政大学出版局)『中世の夢』(名古屋大学出版会)『ル・ゴフ自伝』(法政大学出版局)『聖王ルイ』(新評論)『中世とは何か』『中世の身体』『ヨーロッパは中世に誕生したのか?』(藤原書店)など。
●井上櫻子(いのうえ・さくらこ)
1977年生。パリ第4大学博士課程修了。慶應義塾大学文学部准教授。専攻は18世紀フランス文学。著書に『ルソーを学ぶ人のために』(共著、世界思想社、2010年)。共訳書に『ブローデル歴史集成』?(藤原書店、2007年)『叢書「アナール 1929-2010」』第?~?巻(藤原書店、2010-2015年)など。