子安宣邦
四六上製 264ページ
ISBN-13: 9784865780680
刊行日: 2016/04
なぜ「大正」を今、読み直さなければならないか?
幸徳秋水・大杉栄の抹殺、河上肇の『貧乏物語』と貧困・格差論、津田左右吉の「神代史」史料批判と和辻哲郎による『古事記』復興、大川周明による「日本精神」の呼び出しから、戦争へとつながる国家権力の暴走が大正時代にすでに兆していたことを読み解く。
目次
1 なぜいま大正なのか
2 「大逆事件」とは何であったのか
3 「大逆事件」 その物語と証言
4 幸徳秋水とアナーキズム
5 大杉栄と〈無類の思想〉
6 大杉栄と二つの批判的先見性
7 河上は〈貧乏〉を再発見したか
8 河上は『貧乏物語』をどう廃棄したのか
9 〈貧困・格差〉論と「資本主義」の読み方
10 「神代史」は「作り物語」である
11 津田「神代史」研究と〈脱神話化〉の意味
12 和辻哲郎と『古事記』の復興
13 大川周明と「日本精神」の呼び出し
あとがき
関連情報
■「大正」を読みながら、私は大正が作った昭和の全体主義の中に生み落とされたのではないかと思うようになった。
■このように見ることによって「大正」も「昭和」も私においてその意味を変えた。
■「大正」を読むことは、「昭和」を読み直すこととなった。「昭和」はそれ自身をとらえ直し、読み直すことを可能にする「大正」という外部的視点をもったのである。
■私がその中に生み落とされた「昭和」の全体主義は、これを生み落とした「大正」から見ることによって、記憶の中の心象を脱して解読可能な歴史的構成体になったのである。
(「あとがき」より)
●子安宣邦
1933年川崎市生まれ。東京大学文学部卒業。東京大学大学院博士課程(倫理学専攻)修了。文学博士。大阪大学名誉教授、日本思想史学会元会長。著書に『「アジア」はどう語られてきたか』『昭和とは何であったか』(藤原書店)『日本近代思想批判』『江戸思想史講義』『漢字論』『思想史家が読む論語』(岩波書店)『国家と祭祀』『「近代の超克」とは何か』『和辻倫理学を読む』(青土社)『平田篤胤の世界』『仁斎学講義』(ぺりかん社)『日本ナショナリズムの解読』『歎異抄の近代』(白澤社)など多数。