- 竹山道雄
- 平川祐弘 編
- 四六上製 592ページ
ISBN-13: 9784865781069
刊行日: 2016/12
ナチズム及びソ連・東欧の共産主義体制の根底をつらぬく、異教を排除する「力と力の論理」を看破した問題作。
戦前・戦後と一貫してリベラルの論陣を張った竹山道雄(1903-83)。
ユダヤ人迫害の根底にあるキリスト教文明への懐疑、また戦後のソ連・旧東独社会を自らの目で確かめて提起した共産主義体制の虚像の看破など、論壇の主流に迎合しない鋭利な批判的論説を集成。
[解説]佐瀨昌盛
[コラム]苅部直
目次
第Ⅱ巻序 平川祐弘
第Ⅰ部 妄想とその犠牲
妄想とその犠牲
『ツァラトストラかく語りき』(全3巻)訳者あとがき
第Ⅱ部 聖書とガス室
聖書とガス室
ユダヤ人焚殺とキリスト教
バテレンに対する日本側の反駁
一神教だけが高級宗教ではない
第Ⅲ部 剣と十字架
ソ連地区からの難民
剣と十字架――ドイツの旅より
第Ⅳ部 ソビエト見聞
ソビエト見聞
〈解 説〉見て、感じて、考えた人 佐瀨昌盛
〈竹山道雄を読む〉自由の脊骨――竹山道雄・和辻哲郎・ニーチェ 苅部直
関連情報
【本セレクションの特徴】
◎単行本・著作集に未収録の論考を積極的に収録。
◎現代的意義の大きい論考は、著作集からも精選して収録。
◎竹山を知る論者による「解説」と、より若い世代による「竹山道雄を読む」を掲載。
竹山は戦前は日本軍部を、戦中はヒットラーを批判したのみか、戦後は東ドイツ、ソ連、中共をふくむ全体主義の実状を生き生きと報じた、勇気ある筆の人だった。しかし竹山のルポルタージュは国際関係論的な「全体主義事情」という視角内のみでは収まりきれない部分がある。自分の眼で見て、感じて、考える現地観察を行ない、さらに突っ込んだ、宗教文明論的な掘り下げを行なう。竹山は独仏英の書物を広く深く読んだ人である。ナチスのユダヤ人焚殺の背景をさぐるうちに、その議論は『聖書とガス室』の学問的考察に及ぶ。歴史を鳥瞰してキリスト教とアンチセミティズムの関係にまで踏みこんだところに竹山の思想家としての面目が認められよう。第Ⅱ巻を『西洋一神教の世界』と名付けた所以である。
(第Ⅱ巻編者序より)
【著者紹介】
●竹山道雄(たけやま・みちお/1903-1984)
1920年旧制第一高等学校入学、1923年東京帝国大学文学部入学、1926年東京帝国大学卒業後、一高の講師となる。20代でベルリン、パリに計3年間留学、帰国後、一高の教授となる。1948年『ビルマの竪琴』(中央公論社)を刊行、毎日出版文化賞を受賞(以後、二度に渡り映画化される)。1950年一高廃止と共にその後身の東京大学教養学部の教授となるが、翌年には辞し、文筆に専念する。『新潮』『芸術新潮』『心』『文藝春秋』『自由』などを舞台に、「見て・感じて・考える」を根本姿勢とし、時代の風潮に流されない執筆活動を続ける。著書は『古都遍歴』『昭和の精神史』『まぼろしと真実』『剣と十字架』など、芸術論から時論、紀行文など幅広く、ニーチェ『ツァラトストラかく語りき』『善悪の彼岸』イプセン『人形の家』ゲーテ『若きヱルテルの悩み』など優れた翻訳も残す。1983年『竹山道雄著作集』全8巻刊行。
【編者紹介】
●平川祐弘(ひらかわ・すけひろ)
1931年東京生。比較文学比較文化。東京大学名誉教授。
竹山道雄の女婿にあたる。著書に『和魂洋才の系譜』『西欧の衝撃と日本』『マッテオ・リッチ伝』『小泉八雲』(サントリー学芸賞)『ラフカディオ・ハーン――植民地化・キリスト教化・文明開化』(和辻哲郎文化賞)『天ハ自ラ助クルモノヲ助ク――中村正直と〈西国立志編〉』『アーサー・ウェイリー『源氏物語』の翻訳者』(エッセイスト・クラブ賞)『ダンテ『神曲』講義』『内と外からの夏目漱石』『竹山道雄と昭和の時代』など、訳書にダンテ『神曲』、ボッカッチョ『デカメロン』、マンゾーニ『いいなづけ』(読売文学賞)他多数。
2016年より『平川祐弘決定版著作集』全34巻(勉誠出版)刊行中。