- 宮島喬 著
- A5上製 368頁
ISBN-13: 9784865781182
刊行日: 2017/3
大幅増補! 名著待望の復刊!!
格差はいかに形成され、いかに正当化され、いかに再生産されるのか?
難解といわれるブルデュー理論を、その根本的視座〈文化的再生産論〉を軸に初めて包括的に整理し、いち早く日本社会に適用・展開、その領域拡大にも大きく寄与した名著に、エスニシティ、子どもの貧困と再生産など新たなテーマを大幅に増補して、待望の復刊!
目次
増補新版序文
はしがき・凡例
序論 なぜ文化的再生産論か
Ⅰ 文化的再生産論の射程
1 文化的再生産論の展開
2 再生産論としての教育論の構造――ブルデュー、パスロンの教育論の視角と論点
3 ブルデュー社会学の論理――社会的決定と自律性をめぐって
4 選別とハビトゥスの社会学
Ⅱ ブルデュー理論からの展開
5 言語、コミュニケーション、力の関係――ブルデューのコミュニケーション論
6 ハビトゥスとしての戦略――ブルデューの婚姻戦略論をめぐって
7 文化的再生産論の動的な再構成――文化資本、ハビトゥスの力動化
8 エスニシティと文化的再生産論
〔補 論〕
9 日本における文化的再生産過程のいくつかの側面――経験的アプローチから
10 「子どもの貧困」と貧困の再生産――一ノートとして
Ⅲ ハビトゥスとしての文化
11 ハビトゥスとしての文化――文化社会学序説
1 文化と意味
2 「型」としての文化とその規範化
3 社会集団と言語ハビトゥス
4 ハビトゥスと学校的規範
5 文化的支配と象徴的な力
6 選別と再生産――教育への視角
7 「正統」の表象の形成とハビトゥス
8 コミュニケーションと力関係
あとがき(初版)
初出一覧
関連情報
……スーザン・ストレンジが「国家の退場」と述べた意味での国家主権の相対化が進み、また時期的にはインターネット、通信衛星技術が可能にする情報化が並行的に進み、グローバリゼーションが一段と進んだ。
ブルデュー自身も気付いていたが、欧米および日本の一社会を取っても、経済的格差化はいっそう進み、高水準の失業、非正規雇用率の上昇、公的扶助の受給者の増加などにそれが現れ、その一方、情報化の進展ゆえに可視的なライフスタイルや表明される意識の上では平準化がみられ、その次元に目を奪われると、不平等社会の現実がみえなくなる。たとえば日本の高校進学率は九八%に達し、大学進学への希望を親たちに問えば、希望する割合は六割を超えよう。フランスではコレージュ(公立中学校)に通う移民の子弟もバカロレア取得の希望を語るし、筆者のたまたま知ったところでは、パリのグラン・デコールの政治学院の特別入試を意識している者もいた(同校ではZEP〔優先教育地域〕に属する学校出身者向けの特別入試が行われている)。しかし現実には、進学への、あるいは学歴達成への障害はさまざまに存在して、格差は解消されていない。
そこには、どのような「文化的障害」があるのだろうか。
(本書より)
著者紹介
●宮島喬(みやじま・たかし)
1940年生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程中退。東京大学文学部助手、お茶の水女子大学助教授、同教授、立教大学教授、法政大学大学院教授(社会学研究科)を歴任。現在、お茶の水女子大学名誉教授。専攻は社会学。主に文化の社会学の諸理論にもとづき日本とヨーロッパの移民やマイノリティの研究に携わる。
著書に『移民社会フランスの危機』、『多文化であることは』、『ヨーロッパ市民の誕生――開かれたシティズンシップへ』(以上岩波書店)、『文化と不平等』(有斐閣)など多数。訳書にP・ブルデュー+J-C・パスロン『再生産』(藤原書店)、デュルケーム『自殺論』(中公文庫)など多数。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです