- 多田富雄 著
- [解説]池内紀・橋本麻里
- 四六上製 320頁 カラー口絵8頁+モノクロ2頁
ISBN-13: 9784865781274
刊行日: 2017/6
世界的な免疫学者であるとともに、名随筆家でもあった多田富雄の多彩な作品を精選!
免疫学の第一線の研究者として、国内外の各地を忙しく旅する中、風土と歴史に根ざした食・美の魅力に分け入る。病に倒れ半身麻痺を負ってからも、常に愉しむことを忘れなかった著者の名随筆の数々。
[推薦]石牟礼道子・梅若玄祥・中村桂子・永田和宏・福岡伸一・松岡正剛・養老孟司
目次
Ⅰ 食の愉しみ
春夏秋冬、能と酒/日本酒への不満/茸と地方文化/米中毒/立食パーティー/クレモナの納豆作り/集まる所と喰う所/神も許さぬ……/だだちゃ豆/きのこ
の世界/脳の中のお品書き/郷土料理 千年の知恵/賞味期限に頼らぬ知恵/馬鹿鍋顛末記/エンジェル鍋
Ⅱ ガラクタの思想
葉うらのそよぎ/サヴォナローラの旅/面を打つ/ふしぎな能面/キメラの肖像/真 贋/美を求める心/ガンダーラの小像/エジプト・エジプト・エジプト
(一)/エジプト・エジプト・エジプト(二)/消えゆく聖像/カンボジアの石像、ビルマの仏頭/古代メキシコの女の土偶/アンティークカーペット入門
Ⅲ 旅の記憶
パラヴィチーニ家の晩餐/グランビーのねずみおばさん/サンティアゴの雨/トウガラシ/からだの声をきく/自然はどこに/バルカン半島の時間/インコンビ
ニエンス・ストア/ドゴンへの道/買い物のルール/アフリカを汚しているもの/肌の色/オランダ修交四百年/会話のルール/自然に戻す/チンクエ・テーレの坂道
〈解説〉
パラントロ仲間 池内 紀
世界の破片をつなぎ合わせる 橋本麻里
関連情報
ガラクタの思想、それは小さな断片から大きな世界を見てしまう想像力の世界である。
どんなに小さくてもよい。別に完全な名品でなくてもよい。
身近に置いてそれを眺めているうちに、断片の向こうにひとつの世界が見えてくる。
それは歴史であったり、民俗であったり、それを作った名もない工人の姿であったり、同じ時代の名品の記憶であったり、それを取り巻く異国の風景であったりする。
ガラクタの断片は、時空を超えた異次元の世界に入り込むための小さな入り口なのである。
――T. T.
■世界的な免疫学者であって、いやでも多忙な日常が待っている。そのなかで、わずかにまとまった時間のとれるのが国際的な学会であって、そそくさとお義理を果たしさえすれば、ほんの数日にせよ天下晴れて自由人になれる。いつでも、いつまでも旅のできる人はノーテンキなヒマ人にすぎないが、寸暇を盗んで旅に出る人こそ本当の旅人間というものだ。
――池内 紀(本書解説より)
■ガラクタ――歴史の破片同士をつなぎ合わせていけば、高度を上げながら稜線を歩いて頂を目指すように、人類の歴史が眼下に広がっていくさまが見渡せる。六畳一間の書斎(だったのかどうか知らないが)から世界を見晴るかすよすがとして、多田さんは買い集めた「ガラクタ」たちを身近に置いて愛でたのではないか。
――橋本麻里(本書解説より)
著者紹介
●多田富雄(ただ・とみお)
1934年、茨城県結城市生まれ。東京大学名誉教授。専攻・免疫学。元・国際免疫学会連合会長。1959年千葉大学医学部卒業。同大学医学部教授、東京大学医学部教授を歴任。71年、免疫応答を調整するサプレッサー(抑制)T細胞を発表、野口英世記念医学賞、エミール・フォン・ベーリング賞、朝日賞など多数受賞。84年文化功労者。
2001年5月2日、出張先の金沢で脳梗塞に倒れ、右半身麻痺と仮性球麻痺の後遺症で構音障害、嚥下障害となる。2010年4月21日死去。
著書に『免疫の意味論』(大佛次郎賞)『生命へのまなざし』『落葉隻語 ことばのかたみ』(以上、青土社)『生命の意味論』『脳の中の能舞台』『残夢整理』(以上、新潮社)『独酌余滴』(日本エッセイスト・クラブ賞)『懐かしい日々の想い』(以上、朝日新聞社)『全詩集 歌占』『能の見える風景』『花供養』『詩集 寛容』『多田富雄新作能全集』(以上、藤原書店)『寡黙なる巨人』(小林秀雄賞)『春楡の木陰で』(以上、集英社)など多数。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです