- ジャック・サピール 著
- 坂口明義 訳
- 四六上製 296頁
ISBN-13: 9784865781335
刊行日: 2017/7
「ユーロ解体」こそがヨーロッパを救う。「保護主義」論客による最大の問題作。
ドイツの極端な一人勝ち、英国の離脱と、EUの動揺が続く中、もう一つの大国フランスこそが果たせる役割とは? グローバリズムと「自由貿易」神話で焼け
野原と化したEUの現状に対し、フランスが主導するユーロ離脱と新たな「欧州通貨圏」構想により、各国の経済政策のコントロール奪回を訴える。
◎ブレグジット、米トランプ政権、仏大統領選をふまえた最新論考を「日本語版序文」として収録!
目次
日本語版への序――イギリスのEU離脱とトランプの勝利から脱グローバル化を考える
はじめに
第一部 商品のグローバル化――その冒険・遭難・結末
第1章 世界化の神話と伝説
第2章 商品グローバル化の制度は避けて通れないか?
第3章 グローバル化は誰に奉仕しているか?
第4章 グローバル化の重圧
第一部の結論
第二部 金融グローバル化の進展と限界
第5章 ブレトンウッズの失敗
第6章 ブレトンウッズ体制の解体から通貨無秩序の進行へ
第7章 金融グローバル化を内部から規制できるか?
第8章 国際通貨危機とその影響
第二部の結論――断末魔の金融グローバル化
エピローグ
第9章 現下の危機の行き詰まり
第10章 フランスに有利な解とは?
訳者あとがき/本書関連年表(1919-2017)/原注
関連情報
EUが「世界化(モンディアリザシオン)」に関して演じる役割を考察すること
が重要となる。最も頑迷なEU支持者がしばしば持ち出す議論の一つに、EUは
われわれを種々の災禍から「守ってくれるだろう」というものがある。しかしこ
れは大いに疑わしい。
現実にはEUは、その加盟諸国を守ってくれていないし、これまでも守ってくれ
たことがなかった。もしも守ってくれているとすれば、アメリカの金融危機(住
宅ローン市場が関係する危機)がEU諸国の銀行システムに対してこれほどの打
撃を与えることはなかったはずだ。実際にはEUは、商品・金融の世界化に屈服
してきただけでなく、それを先取りしさえしていた。
グローバル化プロセスの媒介者となっているのが、ブリュッセルの指令である。
このことから、ヨーロッパの様々な国の人民が、諸能力の「再国有化」――国に
より固有の差異はあるが――に賛成の立場をとっている。
(「日本語版への序」より)
著者紹介
●ジャック・サピール(Jacques Sapir, 1954-)
経済学者、社会科学高等研究院(EHESS)主任研究員。
EU・ユーロの問題性を問う『ユーロ・リベラリズムの終焉』(Seuil, 2006)
『ユーロを離脱すべきか?』(Seuil, 2012)『主権・民主主義・政教分離』
(Michalon, 2016)『ユーロは死んだか?』(Le Rocher, 2016)『フランス対
ユーロ、ヨーロッパ対ユーロ』(Cerf, 2016)といった一連の著作で大きな話題
を呼ぶ。
その他の著作に、『経済科学のブラックホール――時間とお金を考えられないこ
とについて論じる』(Seuil, 2003)『ソビエト体制の栄光』(La Découverte, 2015)等がある。(いずれも未邦訳)
【訳者】
●坂口明義(さかぐち・あきよし)
1959年生。専修大学経済学部教授。金融・経済理論が専門。著書に『貨幣経済学
の基礎』(ナカニシヤ出版、2008年)、『現代貨幣論の構造』(多賀出版、2001
年)、訳書にオルレアン『価値の帝国』(藤原書店、2013年)、アグリエッタ、
オルレアン『貨幣主権論』(監訳、藤原書店、2012年)、ボワイエ『金融資本主
義の崩壊』(共訳、藤原書店、2011年)、オルレアン『金融の権力』(共訳、藤
原書店、2001年)、アグリエッタ『成長に反する金融システム』(新評論、1998
年)など。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです