- 堀 真理子
- 四六上製 288ページ
ISBN-13: 9784865781380
刊行日: 2017/09
本人による数百か所の台本改訂と詳細な「演出ノート」―― ベケットがアップデートし続けた『ゴドー』の神髄とは何か?
1953年に初演され、現代演劇に決定的な影響を与えた『ゴドー』。「不条理」や「ディスコミュニケーション」が日常化している現在、ベケット自身による改訂と演出から何を読み取ることができるか。
目次
本書で言及している『ゴドーを待ちながら』年表
まえがき
第Ⅰ部 『ゴドーを待ちながら』の誕生
第一章 『ゴドーを待ちながら』とサミュエル・ベケット
第二章 『ゴドー』が与えた衝撃
第三章 「ゴドー」を「待つこと」をめぐって
第Ⅱ部 ベケットが演出した『ゴドーを待ちながら』
第四章 演出家ベケットが遺した「演出ノート」
第五章 美しさと対照のバランス
第六章 バレエのような動き
第七章 せりふの音楽性とコメディ要素
第Ⅲ部 『ゴドーを待ちながら』の今日性
第八章 戦争の記憶の先に
第九章 忘却のかなたから
あとがき/サミュエル・ベケット年譜(1906-1989)/注/引用文献
関連情報
本書のねらいは『ゴドー』の舞台を楽しむために、またその戯曲を味わうための指針となるよう、この作品に秘められた未曾有の仕掛けを明かし、筆者なりに紐解いていくことである。その仕掛けの解読に欠かせないのがベケットの遺した『ゴドー』の「演出ノート」である。
ベケットが自分の戯曲を舞台化し、「演出家」としても活躍していたことは研究者や一部の演出家を除き、あまり知られていない。しかし、彼は作家業に負けないぐらい、「演出家」として綿密な構想を練って舞台作りに当たっていた。
ベケット自身の演出による『ゴドー』の初上演舞台は1975年、旧西ドイツ、西ベルリンのシラー劇場だった。『ゴドー』執筆から25年を経ての挑戦だったが、この上演でベケット自ら、出版された台本に何百か所も手を加え、より洗練された作品に作り直している。その演出上の改訂からは、ベケットがめざした舞台、作品の全容が見えてくる。
(本書「まえがき」より)
●堀真理子(ほり・まりこ)
1956年東京生まれ。青山学院大学大学院文学研究科英米文学専攻博士課程単位取得済退学。ロンドン大学MA(演劇学)。2000年度プリンストン大学客員研究員。現在、青山学院大学経済学部教授。専門は英米文学・演劇学。
主な著訳書に『ベケット巡礼』(三省堂、2007年)、J・ノウルソン『ベケット伝』(共訳、白水社、2003年)など。