ジル・ドスタレール+ベルナール・マリス
斉藤日出治=訳
四六上製 264ページ
ISBN-13: 9784865781502
刊行日: 2017/11
貨幣への際限なき欲望から人間は解放されるのか?
エロス(生)とタナトス(死)の欲動の対立、および貨幣への根源的欲望というフロイトの洞察に基づき、経済成長とは「死の欲動」の無限の先送りだと看破したケインズ。2人の時代から半世紀以上を経て、規制を取り払われた経済活動が全地球を覆い尽くした今、資本主義の「自己破壊」と訣別する方途はあるのか?
目次
はじめに
序論 死に赴かんとする者……
1 フロイトと死の欲動
2 ケインズと貨幣欲望
3 今日におけるフロイトとケインズ
エピローグ 資本主義のかなたに
補論 ブルームズベリーと精神分析
謝辞
〈訳者解説〉フロイトとケインズで読む資本主義の破局的危機
訳者あとがき
文献目録
関連情報
【著者紹介】
●ジル・ドスタレール(Gilles Dostaler, 1946-2011)
1946年カナダ生まれ。1975年にパリ第8大学にて経済学博士号を取得。ケベック大学モントリオール校教授。ケインズ,ハイエク,フリードマンを主な研究対象として経済思想史を専攻した。
主著に,『ケインズ以後の経済思想――主要な経済学者たちの経歴と事典』(1995, Michel Beaudと共著),『ハイエクの自由主義』(2001),『ケインズの闘い――哲学・政治・経済学・芸術』(邦訳藤原書店,2008年)がある。
●ベルナール・マリス(Bernard Maris, 1946-2015)
1946年フランス・トゥルーズ生まれ。1975年トゥルーズ大学で経済学の学位を取得。その後,トゥルーズ大学で経済学を教えた。パリ第8大学のヨーロッパ研究所の教授も務め,米国カリフォルニアのロワ大学,ペルーの中央銀行でもミクロ経済学を教えた。ジャーナリストとして,『ヌーヴェル・オプセルヴァトゥール』『フィガロ』『シャルリー・エブド』などの紙誌に記事を執筆,小説の出版活動,反グローバリゼーションの政治活動にも取り組んだ。風刺週刊紙『シャルリー・エブド』の株主で,2015年1月7日の同紙編集部への襲撃で殺害された。
経済学の編著として,『ケインズか,市民派経済学者か』(1999),『マルクス,ああマルクスよ,なぜあなたはわたしを見捨てたのか?』(2010)など多数(いずれも未邦訳)。
【訳者紹介】
●斉藤日出治(さいとう・ひではる)
1945年長野県生まれ。1995年名古屋大学で経済学博士号取得。1986-2014年大阪産業大学で社会経済学などを教える。現在,大阪労働学校アソシエ副学長。
著書に,『物象化世界のオルタナティヴ』(昭和堂,1990年),『ノマドの時代』(大村書店,1994年),『国家を越える市民社会』(現代企画室,1998年),『空間批判と対抗社会』(現代企画室,2003年),『帝国を超えて』(大村書店,2005年),『グローバル化を超える市民社会』(新泉社,2010年)がある。
訳書に,ミシェル・アグリエッタ『通貨統合の賭け』(藤原書店,1992年),アンリ・ルフェーヴル『空間の生産』(青木書店,2000年)などがある。
資本主義は、利潤へのすさまじい競争、たえず高まる蓄積欲望によって、あらためて、自身のなかにさらに深く秘められているものを解き放ち、それを全エネルギーで突き動かす。それが死の欲動である。
フロイトとケインズが教えていることを本書で証明してみよう。すなわち、均衡への欲望は資本主義につきものであり、その欲望はつねに現前するのだが、それはたえず成長へと繰り延べされる、それこそが死の欲動にほかならない、ということを。
破壊すること、ついでみずからを破壊し死ぬことが、また資本主義の精神でもある。
(「序論」より)