- ピエール・ブルデュー 著
- 加藤晴久・倉方健作 編訳=解説
- 四六上製 264頁
ISBN-13: 9784865781571
刊行日: 2018/1
最良の総括的ブルデュー入門!
没後も圧倒的存在感を放つ世界的社会学者ブルデューが、その影響のもとに「実践(プラティック)」の歴史を開拓した歴史学者シャルチエと交わした貴重な対談(1988年)に加え、コレージュ・ド・フランス就任講義(82年)と、仏国立科学研究センター(93年)、英王立人類学研究所(2000年)での受賞講演を収録。学問領域を超えた聞き手に向けてブルデューが自らの知の総体を開示した、最高のブルデュー入門。
目次
第Ⅰ部 社会学者と歴史学者 ピエール・ブルデュー+ロジェ・シャルチエ(倉方健作訳)
まえがき――生の声で(ロジェ・シャルチエ)
第1回 社会学者のメチエ
第2回 幻想と認識
第3回 構造と個人
第4回 ハビトゥスと界
第5回 マネ、フロベール、ミシュレ
第Ⅱ部 社会学のための弁明 ピエール・ブルデュー(加藤晴久訳)
講義についての講義
社会学の擁護
参与的客観化
訳者解説
第Ⅰ部(倉方健作)
第Ⅱ部(加藤晴久)
編訳者あとがき(加藤晴久)/人名索引
関連情報
「社会学者でない人たち、専門家でない人たちに社会学のことを話すとき、選択可能なふたつの戦略のあいだで私はいつも迷います。最初の戦略は、社会学を歴史学や哲学のような、アカデミックな分野として示すことです。この場合には、返ってくるのはまさしくアカデミックな反応です。もう一方の戦略は、社会学独特の効果をもたらそうとすることです。つまり、聴衆を自己分析する立場に置くのです。この場合には、私が聴衆のスケープゴートにならざるをえないとわかっています。
社会学的な「真実」は――この「真実」にはかぎかっこを付けておきます――暴力を振るい、傷つけるのです。それは人を苦しませ、同時に、人々はあきらかにその原因である人物にその暴力を再び向けることで、この苦しみから解放されます。」
――ピエール・ブルデュー
(本書より)
「1988年にピエール・ブルデューとおこなったこれらの対話を読んで、私が最初に感じたことは、この5回の放送が私の記憶に残した彼の姿を再びそのまま見出したという思いだった。彼はエネルギッシュで、愉快で、情熱に溢れていた。この小著の長所は、コレージュ・ド・フランス教授という絶大な権威や、当時参加した論争のために隠されがちな彼の思考法を、生き生きとした対話のレベルで捉えているところにあると思われる。だからといって、最初期から変わることのない分析カテゴリーと明証性の要求の上に確立された彼の仕事の継続性や一貫性が覆い隠されることもない。
この5回の対話に見出されるのは、のちに彼自身が選んだり課せられたりした役割にはそれほど縛られていない、少し違ったブルデューである。朗らかで、快活で、他人にも自分自身にも皮肉を飛ばすブルデューであり、彼の仕事がもたらした学問上の断絶を確かに感じながらも、他分野や他種のアプローチとも対話する用意があるブルデューである。」
――ロジェ・シャルチエ
(本書より)
著者紹介
●ピエール・ブルデュー(Pierre Bourdieu, 1930-2002)
高等師範学校卒業。哲学教授資格を取得。リセの教員となるが、55年アルジェリア戦争に徴兵。アルジェ大学助手、パリ大学助手、リール大学助教授を経て、64年、社会科学高等研究院教授。教育・文化社会学センター(現在のヨーロッパ社会学センター)を主宰し学際的共同研究を展開。81年コレージュ・ド・フランス教授。以後、逝去するまでコレージュ・ド・フランス社会学教授の地位にあった他、ヨーロッパ社会学研究所を主宰し、雑誌『社会科学研究学報』と出版社レゾン・ダジールの責任者も務めた。20世紀における最も影響力ある社会科学者のひとりであり、新自由主義に反対するグローバルな動員に関与する指導的な知識人のひとりだった。
社会学ならびに人類学の数多くの古典的作品の著者であり、『ディスタンクシオン』『実践感覚』(邦訳みすず書房)をはじめとして、『再生産』(パスロンと共著)『社会学の社会学』『構造と実践』『話すということ』『資本主義のハビトゥス』『社会学者のメチエ』(シャンボルドン、パスロンと共著)『芸術の規則』『自由―交換』(ハーケと共著)『遺産相続者たち』(パスロンと共著)『ホモ・アカデミクス』『教師と学生のコミュニケーション』(パスロン、サン・マルタンと共著)『ハイデガーの政治的存在論』『政治』『住宅市場の社会経済学』『リフレクシヴ・ソシオロジーへの招待』(ヴァカンと共著)『実践理性』『結婚戦略』『国家の神秘』(ヴァカン他と共著)『パスカル的省察』『科学の科学』『自己分析』『国家貴族』『介入』など、また〈シリーズ・社会批判〉として『市場独裁主義批判』『メディア批判』など、多数の著書がある。(以上、別記したものを除き邦訳は藤原書店)
●ロジェ・シャルチエ(Roger Chartier, 1945-)
リヨンに生まれる。サン=クルー高等師範学校出身。ルイ・ル・グラン高等学校教諭、パリ第一大学助手、社会科学高等研究院助教授を経て、社会科学高等研究院の研究指導教授をつとめるかたわら、同研究院歴史学研究センター所長。2006年コレージュ・ド・フランス教授。
著書に『書物から読書へ』(邦訳1992、みすず書房)『読者と読書』(邦訳1994、みすず書房)『書物の秩序』(邦訳1996、ちくま学芸文庫)『読書の文化史』(邦訳1992、新曜社)『フランス革命の文化的起源』(邦訳1994、岩波書店)など。
【訳者】
●加藤晴久(かとう・はるひさ)
1935年生まれ。1958年東大仏文科卒。1960年同大学院修士課程修了。1961-64年、フランス国立高等師範学校に留学。明治学院大学講師を経て、1969年東大教養学部助教授(フランス語)。1990年教授。1996年定年退官し恵泉女学園大学教授。2004年に退職。日本フランス語教育学会会長(1991-1997)。国際フランス語教員連合副会長(1992-1996)。東京大学・恵泉女学園大学名誉教授。
訳書に、ファノン『黒い皮膚・白い仮面』(共訳、みすず書房)、ブルデュー『市場独裁主義批判』『パスカル的省察』『科学の科学』(藤原書店)ほか多数。著書に『憂い顔の『星の王子さま』』(書肆心水)、『ブルデュー 闘う知識人』(講談社選書メチエ)、『『ル・モンド』から世界を読む』(藤原書店)。編著に『ピエール・ブルデュー 1930-2002』(藤原書店)。
フランス共和国芸術文芸勲章 Arts et lettres(シュバリエ)、研究教育功労勲章 Palmes academiques(オフィシエ)受章。
●倉方健作(くらかた・けんさく)
1975年生まれ。1999年早稲田大学第一文学部卒。2002年東京大学大学院人文社会系研究科修士課程修了。2003-05年、フランス国立高等師範学校に留学。2007年東京大学大学院博士課程退学、2010年博士(文学)。2015年九州大学助教、2017年准教授。
著書に『あらゆる文士は娼婦である――19世紀フランスの出版人と作家たち』(石橋正孝と共著、白水社)。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです