- 石井 亨
- 四六並製 400ページ
ISBN-13: 9784865781717
刊行日: 2018/03
2017年3月28日、産廃90万トン撤去実現。
瀬戸内・香川県の豊かな島に産業廃棄物が不法投棄され、甚大な健康被害と環境汚染をもたらした「豊島事件」。
責任は行政の黙認にあるのか、事業者にあるのか? 島民は一致団結できるのか?
撤去を求める住民運動に身を投じ、県議会議員を二期務める一方、一転ホームレス状態にも陥った、闘争の渦中の人物が、43年の歴史を内側から描く。
目次
はじめに
プロローグ ふる里を奪われる人々――福島・水俣・豊島
第Ⅰ部 「豊島事件」とは何か
第一章 豊島事件との再会――住民会議最年少メンバーとして
第二章 ゆたかなふる里わが手で守る――調停の始まり
第三章 豊島からの報告――被害の実態に科学的に迫る
第Ⅱ部 国を動かし、県を動かす
第四章 銀座の空の下――国を動かすために
第五章 根無し草――中間合意と国の責任
第六章 あんたらは希望の星なんやから――県内100会場座談会
第七章 死んでこい――県議会へ
第八章 おてんと様は見てまっせ――調停成立の先にあるもの
第Ⅲ部 前代未聞の産廃撤去事業
第九章 困?難――産廃撤去への試行錯誤
第一〇章 島を離れる日
エピローグ もう「ゴミの島」とは言わせない
あとがき
豊島産業廃棄物不法投棄事件に対する住民運動(1890-2018)
豊島公害調停 最終合意文書
関連情報
豊島(てしま)事件――おそらくそれは、人類史上に残る挑戦である。
有害産業廃棄物により汚染された土壌および地下水を、廃棄物の除去・無害化とともに再利用し、環境基準に達するまで浄化する。果たしてそれは、自然科学的に、あるいは社会科学的に可能なことなのか。未だかつて達成したことのない、この問いに向き合う歴史は、今年四三年目の春を迎える。
本書は、我が国最大と言われた豊島有害産業廃棄物不法投棄事件が、香川県の判断の誤りと、その後繰り返される過ちの結果であることを突き止め、全国の方々の支援をうけて全面撤去を勝ち取り実現させた豊島住民運動の歴史を記したものである。
また、なぜこれほどまでに過酷な運動を維持できたのか、運動を通してステークホルダーとして成長していく豊島の運動に迫り、併せてその運動に翻弄される筆者の人生にも目を向けた記録である。
●中坊公平氏(豊島事件弁護団長)のことば
「豊島の人の中に、当たり前のことかもしれんけど、やはり己の立場、自分の立場がすべて前提であって、ほんまに島のことのために自分は犠牲になっても良いというパブリック(公)のものの考え方がないのではないか。だれでも持たないのが普通だけど……
あんたらの運動は犠牲を払ってでも追い求めている姿が共感を呼んでいた。いささかでも「私」が見えたら落下するんですよ……
知事に抗議してどないなりますか、抗議するんやったら自分自身に抗議しなさい……
あんたらは希望の星なんやから。産廃に悩む多くの人があちこちにいて、あんたらを見てるのやから。過疎地の人が見てるのやから。この道は引き返すことができない……」
【著者紹介】
●石井亨(いしい・とおる)
1960年香川県豊島生。1984年ビッグベンドコミュニティーカレッジ卒。元香川県議会議員、元廃棄物対策豊島住民会議事務局、元豊島公害調停選定代表人。
著書に『未来の森』(農事組合法人てしまむら、2007)、共著書に『戦う住民のためのごみ問題紛争辞典』(リサイクル文化社、1995)『住民がみた瀬戸内海――海をわれらの手に』(環瀬戸内海会議編、技術と人間)、論文に「小論・豊島事件と住民自治」(『都市問題』91巻3号)ほか。
◎ウェブサイト「てしまびと」 http://teshimabito.com/