- 金時鐘
- [解説]四方田犬彦
- 四六変上製 432ページ
ISBN-13: 9784865781892
刊行日: 2018/12
日本社会の欠落を鋭く突く
在日二世への文学論、朝鮮人が日本語で書く意味、朝鮮語教員の体験、金嬉老事件に際しての証言、日本社会で在日が置かれている困難な立場についての批評……五〇~七〇年代後半の評論集。
貴重な単行本未収録稿を収める!!
長編ルポ「釜が先だ!」、「私の作品の場と『流民の記憶』」、「さらされるものと、さらすものと」、鼎談「差別の醜と解放への道」(金時鐘+野間宏+安岡章太郎)ほか
【解説】四方田犬彦
【解題】細見和之
【月報】鄭仁/高亨天/音谷健郎/大槻睦子
【推薦】鶴見俊輔・辻井喬・金石範・高銀・吉増剛造・四方田犬彦・鵜飼哲・佐伯一麦
目次
1 自己復元への希求――エッセイ
主体と客体の間
二つの閉塞性
釜が先だ!――ルポルタージュ釜ケ崎
自己復元への希求――わが内なる「朝鮮の苦悩」
くたばれ、好物!
しきたり、いぶかり、ありきたり
名前あれこれ
二つの狂気
夏へかけて
2 第二世文学論――文学論
権敬沢の作品について
私の作品の場と「流民の記憶」
盲と蛇の押問答――意識の定型化と詩を中心に
第二世文学論――若き朝鮮詩人の痛み
ダイナミズムの変革――『浜田知章第二詩集』の意味するもの
「カリオン」という詩雑誌について
反逆者からの反逆へ
諧謔、この朝鮮の内なる笑い
この苦き対話
ふたすじの光の交叉――金史良と金芝河
“ブーム”のかげに――尹東柱考
私の座位からの背中あわせの独白――村松武司『朝鮮植民者』に寄せて
苦き遺産の開示――『金史良全集?』に寄せて
亡霊の抒情
3 さらされるものと、さらすものと――教育論
在日朝鮮人とことば――「反差別闘争と民族解放闘争」での問題提起より
さらされるものと、さらすものと――朝鮮語授業の一年半
差別語について
なぜ“朝鮮語”か
4 金嬉老裁判での証言ほか――社会批評
欠落の埴輪――わが意識の中に埋もれてあるもの
骨片考
金嬉老裁判での証言 速記録
日本語のおびえ――閉ざされた金嬉老の言葉を追って
かさなる陰画――日本企業進出下の韓国の風景
5 鼎談 差別の醜と解放への道(金時鐘+野間宏+安岡章太郎)
あとがき(金時鐘)
〈解説〉面罵論(四方田犬彦)
〈解題〉在日二世にむけて 文集?(細見和之)
関連情報
●金時鐘 (キム・シジョン)
1929年(旧暦1928年12月)朝鮮釜山に生まれ、元山市の祖父のもとに一時預けられる。済州島で育つ。48年の「済州島四・三事件」に関わり来日。50年頃から日本語で詩作を始める。在日朝鮮人団体の文化関係の活動に携わるが、運動の路線転換以降、組織批判を受け、組織運動から離れる。兵庫県立湊川高等学校教員(1973-92年)。大阪文学学校特別アドバイザー。詩人。
主な作品として、詩集に『地平線』(ヂンダレ発行所、1955)『日本風土記』(国文社、1957)長篇詩集『新潟』(構造社、1970)『原野の詩――集成詩集』(立風書房、1991)『化石の夏――金時鐘詩集』(海風社、1998)『金時鐘詩集選 境界の詩――猪飼野詩集/光州詩片』(藤原書店、2005)『四時詩集 失くした季節』(藤原書店、2010、第41回高見順賞)他。評論集に『さらされるものと さらすものと』(明治図書出版、1975)『クレメンタインの歌』(文和書房、1980)『「在日」のはざまで』(立風書房、1986、第40回毎日出版文化賞。平凡社ライブラリー、2001)他。エッセーに『草むらの時――小文集』(海風社、1997)『わが生と詩』(岩波書店、2004)『朝鮮と日本に生きる』(岩波書店、2015、大佛次郎賞)他多数。