- 清眞人 著
- A5上製 464頁
ISBN-13: 9784865781960
刊行日: 2018/10
30年間の探究から生まれたフロム論の決定版
エーリッヒ・フロムとは何者か?
フロムの思索的営為の背景の最深部として、彼の「神秘主義」論および彼の宗教論に初めて着目。マルクス、ヴェーバー、鈴木大拙、サルトル、ニーチェ、ブーバーらを対置し、フロムの思索の全体像とともに問題構造を浮かび上がらせた、日本初の総合的フロム論。
目次
はじめに
第1部 神秘主義的ヒューマニズムと精神分析
第一章 「人生の意味」への欲求と「宗教性」――フロムの精神分析的宗教論
第二章 マルクスの『経済学・哲学手稿』とフロム
第三章 フロムと神秘主義――「カタルシス的救済」、ヴェーバー、大拙
第四章 フロムとユダヤ教
――「人間主義的な宗教と倫理」の視点からの「脱構築」的解釈――
第五章 フロムとキリスト教
第六章 フロムの精神分析的アクチュアリティ
――「市場的構え」・「サド・マゾヒズム的性格」・「ネクロフィリア(死への愛)」――
第2部 フロムを包む対論的磁場
第一章 サルトルの実存的精神分析学に対するフロムの批判をめぐって
第二章 ニーチェとフロム――生の自己目的価値性をめぐって
第三章 フロムの《マルクス主義》批判
第四章 ブーバーとフロム――ハシディズム解釈をめぐって
第五章 初期フロムのキリスト教論――「キリスト論教義の変遷」
第六章 マルクーゼとフロム
――「弁証法的前進」か「退行」の自覚的批判的保持か?――
関連情報
■書名にあるとおり、本書の特徴は、宗教文化の分野のなかで「神秘主義」と呼び慣わされてきた伝統から彼が何を如何に摂取したのかという問題に焦点をあて、かかる問題の環を梃に彼の思索的営為の全体像を浮かび上がらせ、その問題構造に照明を当てようとした点にある。かくて、おのずと本書はフロムの宗教論に多大な関心を寄せるものとなった。
■これまで、日本におけるフロムへの注目は、多くの場合、彼における精神分析学と社会学との接合の試みが現代人の抱える心理的諸問題の解明に如何に貢献してきたかという側面に集中してきたと思われる。だが本書は、その問題側面もさることながら、彼の思索的営為の最も奥深いバックグラウンドをなすものとして彼の「神秘主義」論を取り上げ、またそれに陸続する彼の宗教論の諸局面に光を与えるべく努めたのだ。
(本書「あとがき」より)
著者紹介
●清眞人(きよし・まひと)
1949年生まれ、早稲田大学政経学部卒業、同大学院文学研究科哲学専攻・博士課程満期修了。元、近畿大学文芸学部教授。
本書に深く関連する著書としては、『《想像的人間》としてのニーチェ――実存分析的読解』晃洋書房、2005年。『遺産としての三木清』(共著)同時代社、2008年。『三島由紀夫におけるニーチェ――サルトル実存的精神分析を視点として』思潮社、2010年。『村上春樹の哲学ワールド――ニーチェ的長編四部作を読む』はるか書房、2011年。『サルトルの誕生――ニーチェの継承者にして対決者』藤原書店、2012年。『大地と十字架――探偵Lのニーチェ調書』思潮社、2013年。『聖書論??』藤原書店、2015年。『ドストエフスキーとキリスト教――イエス主義・大地信仰・社会主義』藤原書店、2016年。『否定神学と《悪》の文学Ⅰ 預言者メンタリティーと『白鯨』』Amazon Kindle電子書籍セルフ出版、2015年。『否定神学と《悪》の文学Ⅱ マンの『ファウスト博士』とニーチェ』Amazon Kindle電子書籍セルフ出版、2015年。『否定神学と《悪》の文学Ⅲ ドストエフスキー的なるものと『罪と罰』』Amazon Kindle電子書籍セルフ出版、2015年。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです