- 安里英子
- 四六上製 368ページ
ISBN-13: 9784865782066
刊行日: 2018/12
沖縄・女性の視点から見つめ直す、新しいアジア
琉球という己れの足元を深く掘り下げ、同時にアイヌ、台湾、朝鮮半島、日本とのつながりを、民俗・生活の根源にある「自然」「いのち」から一つ一つたどり直す――
揺れ動く現代の沖縄から発信する、揺るがない琉球の歴史のこころとは?
琉球に生まれた女性が、日本列島の南と北を結び、世界へひらく、精神史の旅。
目次
序
Ⅰ 琉球から世界へ
民族を超えた共同体を
シマ連合社会における自治の可能性
国家を超える暮らしの連合
朝鮮人「軍夫」の戦後七〇年
沖縄の日本「復帰」とヨーロッパの沖縄学
日本民俗研究のダイナミズム
Ⅱ 琉球文化からみた アイヌ民族・台湾原住民文学・朝鮮詩集
ヤポネシアの北と南を結ぶ/二風谷の風/金田一京助とアイヌ語研究/知里真志保の内なるアイヌ研究/偉星北斗と伊波普猷/ジョン・バチェラーとバチェラー八重子/武田泰淳『森と湖のまつり』について/チカップ美恵子さんのこと/アイヌ語による「アメイジング・グレイス」/池澤夏樹『静かな大地』を読む/津島佑子『ジャッカ・ドフニ』
台湾原住民文学とは何か/「パンノキ」とアミの文学/赤子を守護する火の神/台湾ルカイ族にみる生命礼賛とアワ文化/津島佑子『あまりに野蛮な』をめぐる世界
『朝鮮詩集』と沖縄/朝鮮・石垣島のわらべうた/尹東柱の生誕百年に思う
Ⅲ 琉球の女性原型
琉球の女性原型
オナリ神信仰と男性中心の発生
島尾ミホの聖なる闇
Ⅳ アジアの原風景
サンゴ礁文化と照葉樹林文化・島々の多様性
世界遺産の功罪と基層文化への回帰
「復帰」後の開発問題
「沖縄振興開発計画」と住民によるオルターナティブな視点
エピローグ
琉球の小宇宙を巡る旅――インタビューに答えて
関連情報
ヤポネシアの中ほどにある琉球の島々から、大陸に向かって両手を拡げると、右手がアイヌモシリの大地に届き、左手は台湾に届く。中国大陸や朝鮮半島は、すぐそこだ。身体の向きを南にずらすとフィリピンやサイパンやベラウなど、沖縄の多くの人々が移民として渡った、太平洋の島々が輪になってつながってくる。
そんな視界のよい島に私は住んでいるのだと実感する。古来、それらの地域や島々は鎖状につながり、共通する文化も基底にはある。
(本書「序」より)
【著者プロフィール】
安里英子 (あさと・えいこ)
1948年、沖縄県那覇市首里生まれ。ライター。1977年、復帰5年目に一人でミニコミ誌『地域の目』を発行。地域の自治・暮らしの問題にかかわる。90年から97年にかけて琉球弧の島々をまわりリゾート開発の実態をルポすると同時に御嶽などの聖地を巡る。
『揺れる聖域』(沖縄タイムス社)で第5回地方出版文化賞次席(1991年)、第2回女性文化賞(1998年)。主著に『琉球弧の精神世界』(1999年)、『凌辱されるいのち』(2008年、以上、御茶の水書房)など。
詩集『神々のエクスタシー』(2017年)で第40回山之口貘賞。
現在の主な活動は、朝鮮人強制連行(軍夫)の調査・研究をすすめる「NPO法人・沖縄恨之碑の会」の共同代表をつとめる。