- 中村桂子 著
- [解説]鷲谷いづみ
[月報]末盛千枝子/藤森照信/毛利衛/梶田真章
- 四六変上製 288頁 口絵2頁
ISBN-13: 9784865782264
刊行日: 2019/6
21世紀の新しい知「生命誌」
生命を“分子の機械”と捉える生命科学への疑問から創出した新しい知「生命誌」。
「生命誌」は、ゲノムを基本に、人間も含むあらゆる生物の“歴史”と“関係”を読み解く。
ヒトクローン、遺伝子組換えなどの現代生物学の問題に、科学と日常の眼で答える。
目次
はじめに
Ⅰ 生命科学から生命誌へ
1 ゲノムとは何か――生命の謎に挑む
2 「生きている」とはどういうことか――生命科学から生命誌へ
3 科学の呪縛を解く
4 生命誌から持続可能性を考える
5 生命科学による機械論から生命論へ
6 遺伝子工学とバイオテクノロジー
7 ヒトゲノム解析の意味――遺伝子が示す「差別」の錯誤
8 「ヒトクローン」――生命科学の本質を見誤ってはいけない
9 軽んじられた「生命」考
Ⅱ 生命誌の扉をひらく
はじめに
第一章 生命科学から生命誌へ
第二章 人間と自然の関係
第三章 文化としての科学
第四章 生命の物語
第五章 ヒトゲノム・プロジェクト
第六章 時間を解きほぐす
第七章 アフリカの朝もや
第八章 生命誌研究館
おわりに――おもしろいことが次々とわいてくる
参考文献
初版第二刷のための「あとがき」
初出一覧
あとがき
[解説]生きものの知恵に学ぶ(鷲谷いづみ)
関連情報
「科学」は今、科学技術に吸収され、経済効果だけが求められるようになってきています。とくに生命科学でそれが目立ちます。しばらく前までは生物学は役に立つ学問とはされていませんでした。けれどもDNA研究が進み、そこから技術が生まれると、新しい芽生えであるだけに期待も大きく、時代の流れに乗って科学技術として評価される研究――主として医学に近い研究が主流になりました。
科学技術となると、特許を求めての競争、経済効果での評価が優先します。生きているってどういうことだろうと問うたり、生きものを見ているとおもしろいと感じたりする喜びからは遠くなっていきました。
科学技術に吸収されない新しい知として考えだしたのが「生命誌」です。五〇代も半ば近くになって、やっと自分で考え、自分でつくりだしたものを世に問うことができました。
(本文より)
著者紹介
●中村桂子(なかむら・けいこ)
1936 年東京生まれ。JT 生命誌研究館館長。理学博士。東京大学大学院生物化学科修了、江上不二夫(生化学)、渡辺格(分子生物学)らに学ぶ。国立予防衛生研究所をへて、1971 年三菱化成生命科学研究所に入り(のち人間・自然研究部長)、日本における「生命科学」創出に関わる。しだいに、生物を分子の機械と捉え、その構造と機能の解明に終始することになった生命科学に疑問を持ち、ゲノムを基本に生きものの歴史と関係を読み解く新しい知「生命誌」を創出。その構想を1993 年、JT 生命誌研究館として実現、副館長に就任(~ 2002 年3 月)。早稲田大学人間科学部教授、大阪大学連携大学院教授などを歴任。
著書に『生命誌の扉をひらく』(哲学書房)『「生きている」を考える』(NTT 出版)『ゲノムが語る生命』(集英社)『「生きもの」感覚で生きる』『生命誌とは何か』(講談社)『生命科学者ノート』『科学技術時代の子どもたち』(岩波書店)『自己創出する生命』(ちくま学芸文庫)『絵巻とマンダラで解く生命誌』『小さき生きものたちの国で』『生命の灯となる49 冊の本』(青土社)『いのち愛づる生命誌』(藤原書店)他多数。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです