- 木村汎 著
- A5上製 672頁
ISBN-13: 9784865782288
刊行日: 2019/06
戦後70余年、未だ日ロ間で平和条約が締結されないのはなぜか?
「俺のもの(「領土」)は俺のもの、お前のもの(「経済力」)をどう分けるか、交渉しよう」
北方領土返還は如何にして実現可能か? 旧ソ連からプーチンに至るロシアの対外交渉を、交渉学の諸理論から紐解き、対ロ外交の修羅場を経験した専門家の証言をもとに緻密に分析・検討し、日ロ関係の展望を考察する。
目次
本書の構成
第Ⅰ部 交渉の一般理論――米欧諸国での発展
第1章 交渉とは何か――交渉の種類
第2章 交渉は「芸術」か、「科学」か
第3章 交渉の決定要因は何か
第4章 交渉が必ずたどる三段階
第5章 文化は、交渉に影響する
第6章 異文化間交渉を成功させる方法
第Ⅱ部 ロシア式交渉――なぜ、特異なのか
第1章 変化と連続――帝政、ソビエト、プーチン期
第2章 ロシア人の交渉観――戦争と交渉は同一カテゴリー?
第3章 プーチンの交渉観――弱い者は打ち負かされる
第4章 まず、先制パンチを喰らわせる
第5章 開始後は、のらりくらり
第6章 最終段階こそ、最重要
第7章 ロシア式交渉戦術の特徴
第8章 ロシア人の十八番戦術は、何?
第9章 株式会社“ロシア”のビジネス交渉
第10章 対ロ経済交渉の必勝法
第Ⅲ部 日本式交渉――なぜ、ユニークなのか
第1章 交渉嫌い、交渉回避
第2章 独自の交渉法
第3章 対ロ交渉に成功するノウハウ
第4章 北方四島返還のチャンスはあった
第5章 プーチンvs安倍――どちらが最終的勝者?
謝辞
ロシア対日交渉史(1853-2019)/注/事項索引/人名索引
関連情報
■〈俺のものは俺のものであり、お前のものをどう分けるか、交渉しよう〉。これこそがロシア式交渉の真髄であると、ロウニー中将(対ソ軍縮交渉米特別代表)は結論する。ロシア人は相手側に向かって常に譲歩を要求し、それが容れられない場合には交渉が進捗しない責任を相手側に転嫁させようと試みる。
■ロシア人は実に忍耐強い。ロシア外交官は、何百回となく同一のことを繰り返して倦むことをしらない。彼らは、何事をなしとげるためにも時間というものがかかること、しかもたとえ時間をかけても成果があがらないことすら十分心得ている。
■安倍首相は、プーチン大統領に対して「北方領土での日ロ共同経済活動」を提案したと噂される。これがもし実施されるならば、同領土の対日返還ではなく、その事実上の放棄に繋がる可能性のほうがより一層高い、と筆者は懸念する。
(本書より)
著者紹介
●木村汎(きむら・ひろし)
1936年生まれ。京都大学法学部卒。米コロンビア大学Ph.D.取得。北海道大学スラブ研究センター教授、国際日本文化研究センター教授、拓殖大学海外事情研究所教授を経て、現在、北海道大学および国際日本文化研究センター名誉教授。専攻はソ連/ロシア研究。主な著書として、『ソ連式交渉術』(講談社)、『総決算 ゴルバチョフ外交』(弘文堂)、『ボリス・エリツィン』(丸善ライブラリー)、『プーチン主義とは何か』(角川oneテーマ21)、『遠い隣国』(世界思想社)、『新版 日露国境交渉史』(角川選書)、『プーチンのエネルギー戦略』(北星堂)、『現代ロシア国家論――プーチン型外交』(中央公論叢書)、『メドベージェフvsプーチン――ロシアの近代化は可能か』『プーチン――人間的考察』『プーチン――内政的考察』『プーチン――外交的考察』(藤原書店)、『プーチンとロシア人』(産経新聞出版)など多数。2016年、第32回正論大賞受賞。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです