――でも、ぼくは常に書いていた。とくに、書くようになる前はね。ぼくの考えでは、人は書く前のほうが作家なんだ。書きはじめたときには、もう終わっている。書くという行為は、他人と自分自身を見る一つの方法なんだ。
――人は他人を見ている自分を見るんだ。書くずっと前に文体を手に入れているのさ。
――文体をもっていなければ、練ってもあまり役に立たないな。よい本を書くにも、悪い本を書くにも同じくらいエネルギーを使うからね。
(本書より)
【著者紹介】
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ダニー・ラフェリエール(Dany Laferrière)
1953年,ハイチ・ポルトープランス生まれ。小説家。4歳の時に父親の政治亡命に伴い,危険を感じた母親によってプチ=ゴアーヴの祖母の家に送られる。彼にとっての「最初の亡命」であり,創作の原点と後に回想。若くしてジャーナリズムの世界に入るも,23歳の時に同僚が独裁政権に殺害されたため,カナダ・モンレアルに移住。1985年,処女作である『ニグロと疲れないでセックスする方法』(邦訳藤原書店刊)で話題を呼ぶ(89年に映画化。邦題『間違いだらけの恋愛講座』)。90年代はマイアミで創作活動。2002年より再びモンレアル在住。『エロシマ』(87年。邦訳藤原書店),『コーヒーの香り』(91年),『甘い漂流』(94年。邦訳藤原書店),『終わりなき午後の魅惑』(97年),『吾輩は日本作家である』(08年。邦訳藤原書店),『帰還の謎』(09年,モンレアルの書籍大賞,フランスのメディシス賞受賞。邦訳藤原書店)など作品多数。2010年にはハイチ地震に遭遇した体験を綴る『ハイチ震災日記』(邦訳藤原書店)を発表した。その他,映画制作,ジャーナリズム,テレビでも活躍している。2013年12月よりアカデミー・フランセーズ会員。
【訳者紹介】
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小倉和子(おぐら・かずこ)
1957年生。東京大学大学院博士課程単位取得退学。パリ第10大学文学博士。現在,立教大学異文化コミュニケーション学部教授,日本ケベック学会顧問。現代フランス文学・フランス語圏文学専攻。著書に『フランス現代詩の風景』(立教大学出版会),『遠くて近いケベック』(御茶の水書房,共編著),訳書にデュビィ,ペロー編『「女の歴史」を批判する』,コルバン『感性の歴史家 アラン・コルバン』,サンド『モープラ』,ラフェリエール『帰還の謎』『甘い漂流』(以上藤原書店)他。