- 中村桂子 著
- [解説]村上陽一郎
[月報]新宮晋/山崎陽子/岩田誠/内藤いづみ
- 四六変上製 352頁 口絵2頁
ISBN-13: 9784865782554
刊行日: 2020/1
生命の起源から、未来へつながる
70年代、日本における“生命科学”の出発に深く関わり、そこから新しい知“生命誌(バイオヒストリー)”を創出した著者。DNA、ゲノム……科学の中から、人間をふくむすべての生きものの“つながる”をやさしく語る。
目次
はじめに
Ⅰ 生命誌の考え方
「生命誌」の新しい“世界観”――はじめににかえて
第1章 生命誌の基本――人間の中にあるヒト
第2章 生命観の変遷をたどる――共通性と多様性への関心
第3章 DNA(遺伝子)が中心に――共通性への強力な傾斜
第4章 ゲノムを単位とする――多様や個への展開
Ⅱ 生命は自己創出する
第1章 自己創出へ向かう歴史――真核細胞という“都市”
第2章 生と性と死のふしぎ
Ⅲ 生命誌を読み解く
第1章 オサムシの来た道――日本列島形成史
第2章 ゲノムを読み解く――個体づくりに見る共通と多様
第3章 心を考える――ヒトから人間へ
Ⅳ 生命誌から未来を考える
第1章 「クローン」と「ゲノム解析」
第2章 ホルモンから「生きもの」を見る
第3章 生命を基本とする社会
生命誌研究への思い――あとがき
Ⅴ 生命誌からはじまる思想
第1章 水の生命誌
第2章 生成の中に生命の基本を探る
あとがき
[解説]読む人と書く人の対話(村上陽一郎)
初出一覧
関連情報
私はどうしてここにいるのだろう。生きているってどういうことなのだろう。おそらく、子ども時代から思春期にかけてだれもが問うであろう問いに、奥手の私はおとなになって、出産を経験したときに向き合いました。そのときにはすでに、DNAを中心にして生命現象を理解しようとする生命科学の中にいましたので、おのずとそれを基本に置きながら、「生」や「私」という問題を考えることになったのです。
「科学ってめんどうだよね」「科学の考え方って偏っていて全体を見ないから好きじゃない」。いろいろなお声が聞こえてきます。そのとおりです。でもそこから出発して日常につなげていくと、これからの社会を暮らしやすくする考え方が生まれてくると思っています。そこでこの巻は、生命誌の考え方、なぜ生命誌なのかについて語った講座を主にしました。考え方の流れをつかんでいただけることを願っています。
(本文より)
著者紹介
●中村桂子(なかむら・けいこ)
1936 年東京生まれ。JT 生命誌研究館館長。理学博士。東京大学大学院生物化学科修了、江上不二夫(生化学)、渡辺格(分子生物学)らに学ぶ。国立予防衛生研究所をへて、1971 年三菱化成生命科学研究所に入り(のち人間・自然研究部長)、日本における「生命科学」創出に関わる。しだいに、生物を分子の機械と捉え、その構造と機能の解明に終始することになった生命科学に疑問を持ち、ゲノムを基本に生きものの歴史と関係を読み解く新しい知「生命誌」を創出。その構想を1993 年、JT 生命誌研究館として実現、副館長に就任(~ 2002 年3 月)。早稲田大学人間科学部教授、大阪大学連携大学院教授などを歴任。
著書に『生命誌の扉をひらく』(哲学書房)『「生きている」を考える』(NTT 出版)『ゲノムが語る生命』(集英社)『「生きもの」感覚で生きる』『生命誌とは何か』(講談社)『生命科学者ノート』『科学技術時代の子どもたち』(岩波書店)『自己創出する生命』(ちくま学芸文庫)『絵巻とマンダラで解く生命誌』『小さき生きものたちの国で』『生命の灯となる49 冊の本』(青土社)『いのち愛づる生命誌』(藤原書店)他多数。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです