- 後藤新平 著
- 後藤新平研究会 編
解説=新保祐司
- B6変上製 280頁 口絵4頁
ISBN-13: 9784865783087
刊行日: 2021/3
後藤新平の遺書 約百年前に出版された、日本初のミリオンセラー!
日本初の普通選挙を目前に控え、脳溢血に倒れた後藤新平。
その2カ月後、生命を賭して始めた「政治の倫理化」運動。
約1年をかけ、日本全国津々浦々、計260回・390時間の講演。
1926年4月20日、第一声として、「決意の根本と思想の核心」を、未来を担う若者たちに向けて自ら語った名講演が、今甦る!!
1927.4.16の講演記録『政治倫理化運動の一周年』も収録。
目次
まえがき 後藤新平研究会
政治の倫理化 後藤新平
はしがき 後藤新平
紹介挨拶 阪谷芳郎
普選に直面して政治の倫理化を提唱す
はじめに
1 党弊を憂い立つ
党争の外に立った従来の態度/少年団訓練の真意/最近決心の由来/過去の提案と実績/世評何かあらん/
過去の怠慢を懺悔/なぜ既成政党は私の運動を恐れるのか/友人の忠告/単身独立の決心
2 現代の政治状況を大観する
日本の政情――第五十一帝国議会の不面目/出口の見えない人口問題/世界における日本の地位はどうか/
唯物主義の思想界を見よ/日本の理想主義と西洋の進歩主義との調和を提唱/決意
3 政治の中心思想は倫理観念だ!
グラッドストーン七十一歳にして立つ/根本的謬見の撃破――「政治は力なり」の一語/聖徳太子の出現とご事業/
憲法十七条/政治の倫理化が太子の聖慮/ルーズベルトの政界革新運動/政治と科学との関係/
ウィルソンの憲法論/現代の科学――アインシュタインの相対性原理/カール・マルクスは時代後れ/
新理想主義の提唱/自著『国家衛生原理』の精神/政府の職能の変遷/政治は奉仕である/
わが国の政党は封建政党
4 青年よ覚醒して起て!
陳勝呉広となる決心/政権獲得運動ではない/三十代の青年を中心とする/一視同仁の国民運動/
三党首訪問の真意/会見の顛末/新党樹立ではない/旧政党革新の後援運動である/
パウルゼンの政治的闘争の四原則/理想選挙の実例/殉教者の熱情/菅公、楠公の例/
正邪の観念は大和民族の生命
閉会の辞 阪谷芳郎
普通選挙とは――日本の選挙制度史の概略〔編集部注〕
普選準備会綱要――政界革新教化運動 〔附〕普選準備会準則
一 普選準備会設立の要義
二 政治の倫理化について
(一)政治は奉仕なり
(二)選挙の腐敗を匡正せよ
(三)大経綸を樹立せよ
(四)青年よ奮起せよ
三 普選準備会綱目
四 普選準備会準則
五 普選準備会準則補註
親愛なる少年団盟友諸君 二荒芳徳
政治倫理化運動の一周年
一周年を迎えて 昭和二年四月十六日 於青山会館
普選準備会事業成績一斑
補足事項
普選準備会成立までの経過――政党政治の倫理化に向けて
遊説行脚の要領
普通選挙の負担
地方の民心
小冊子『政治の倫理化』が果たした貢献
真の忠孝とは――若槻首相の『国民に訴ふ』を批判する
教化運動としての「政治の倫理化」
「国難来」を悲しむ
自治の自覚――国民自身が自らを任じることを願って
政治の秘訣
普通選挙への対応とその先へ――ご婦人の質問に答えて
自治警察について
〈解説〉後藤新平と西郷隆盛をつなぐもの 新保祐司
一 新型コロナウイルス禍と後藤新平
二 『国難来』
三 西郷隆盛と後藤新平
四 「政治の倫理化運動」
五 「大中至正、中庸の道」
後藤新平 日本・世界比較史年表(1924–29)
カバーより
私の眼中に右傾も左傾もない
この間にいる私は、もとより左傾でもなければ右傾でもありません。すなわち左傾は不可とすると同時に、右傾もまたよろしくないとするのです。
ただ大中至正の途あり
ただ大中至正、中庸の道〔不偏不党で公正な道〕を行くことをよしとするのです。しかし、ある人はこれを見て脱線と言うのです。
政治の倫理化が太子の聖慮
聖徳太子のご事蹟は、つまるところ政治の倫理化であったと拝察します。すなわち、政治は力なりという思想とは正反対でした。
(後藤新平『政治の倫理化』1926.4.20より)
カバーソデより
■わが輩が、現代の国情、ことに政界の状況を眺めて、憂慮痛憤に堪えないことは、今日の日本において、実に奇怪な政治的用語が流行し、このために国民精神の根本を損なったことです。それは、何であるかというと、「政治は力なり」という言葉です。
■力とは物質的、現実的な力という意味なので、この言葉の流行するところ、国を挙げて、低級劣悪な物質力崇拝の風潮に走らせたのです。この大勢を転回しなくては、とうてい今日の日本の悪風を一洗することはできません。
■すなわち、政治闘争の倫理化が必要となるのです。これは無用でありましょうか。
(後藤新平『政治の倫理化』1926.4.20より)