ドキュメンタリー作品は、時に、見る者の心の琴線に触れる。事実の積み重ねが、心の底にある真情を揺さぶる。実社会を捉えた映像と音声のインパクトは大きい。作品が記憶に刻み込まれ、意識が変わる。一歩踏み出し、何らかの行動を起こすようになるかもしれない。共感が広がれば、いつかきっと、社会が少しは変わるかもしれない。社会派ドキュメンタリーは、人と社会を変える可能性を秘めている。
テレビの社会派ドキュメンタリーはどのように作られているのか。制作者たちは、いかにテーマを見つけ、深めていくのか。制作の過程でどのような困難にぶつかり、どう乗り越えたのか。なぜ、問題を世に問うことにしたのか。こうした関心から、第一線で活躍してきた国内テレビ局の制作者たちに、詳細な聞き取り調査を行い、語りそのものを重視したオーラル・ヒストリーの形にまとめた。それが本書である。(「はじめに」より)
【編者紹介】
●小黒 純(おぐろ・じゅん)
広島市生まれ。上智大学法学部卒業後、三井物産で営業職、毎日新聞で記者職。1992年、上智大学と米オハイオ州立大学の両大学院で修士号。帰国後、共同通信で脳死臓器移植や外務省機密費問題などの調査報道に携わる。2004年から龍谷大学、2012年から同志社大学でジャーナリズムの教育・研究に従事。2018年、ライアソン大学(カナダ・トロント)客員研究員。日本マス・コミュニケーション学会で理事を務めた他、日本オーラル・ヒストリー学会、日本教育工学会などに所属。
主な著作に『検証 病める外務省――不正と隠蔽の構造』(岩波書店、2002年)、『凍れる心臓』(共著、共同通信社、1998年)、『超入門ジャーナリズム――101の扉』(共著、晃洋書房、2010年)など。
調査報道サイト「ウオッチドッグ」で地域ジャーナリズムを実践。特定非営利活動法人「情報公開クリアリングハウス」理事。2021年から独立系メディア「InFact」代表理事。
●西村秀樹(にしむら・ひでき)
1951年、名古屋市生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業後、1975年、毎日放送入社。主に、報道局でニュースや番組を制作、編成局勤務。元近畿大学人権問題研究所教員、元同志社大学・立命館大学嘱託講師、元日本ペンクラブ理事。
主な番組に『遥かなり・厳冬のエレベスト――植村直己 壮絶の58日』(1981年)、『JNN報道特集 妻たちの7年間――第十八富士山丸事件』(1990年)など。
主な著作に『北朝鮮抑留――第十八富士山丸事件の真相』(岩波現代文庫、2004年)、『大阪で闘った朝鮮戦争』(岩波書店、2004年)、『朝鮮戦争に「参戦」した日本』(三一書房、2019年。韓国で翻訳、2020年)など。
●辻 一郎(つじ・いちろう)
1933年1月、奈良県生まれ。京都大学法学部卒業後、1955年、新日本放送(現・毎日放送)入社。主として報道畑を歩き、取材活動にあたる一方、番組制作にも携わる。テレビ番組『若い広場』『70年への対話』で日本民間放送連盟賞、『対話1972』『20世紀の映像』でギャラクシー賞などを受賞。毎日放送取締役報道局長などを経て退職後、大手前大学教授、日本マス・コミュニケーション学会理事、「地方の時代」映像祭審査委員長などを歴任。
主な著作に『忘れえぬ人々――放送記者40年のノートから』(1998年)、『父の酒』(2001年)、『私だけの放送史――民放の黎明期を駆ける』(2008年、以上清流出版)、『メディアの青春――懐かしい人々』(大阪公立大学共同出版会、2018年)など。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです
《訂正表》
本書初刷に誤記がございました。
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読者、関係者の皆様に深くお詫び申し上げます。 藤原書店編集部
訂正表(PDF。2021年8月17日現在)