- アラン・コルバン 著
- 小倉孝誠・綾部麻美 訳
- 四六上製 256頁 カラー口絵8頁
ISBN-13: 9784865783155
刊行日: 2021/5
“感性の歴史”の第一人者による、「草」と「人間」の歴史
「草原」「草むら」「牧草地」「牧場」など、「草」という存在は、神聖性、社会的地位、ノスタルジー、快楽、官能、そして「死」に至るまで、西洋文化の諸側面に独特の陰影をもたらす表象の核となってきた。“感性の歴史家”の面目躍如たる、「草」をめぐる感情・欲求の歴史。
目次
本書を読むにあたって(小倉孝誠)
序章
第1章 草と始原の風景
第2章 幼年時代と草――記憶
第3章 牧場の体験
第4章 牧草地あるいは「草の充足」
第5章 草、一時の避難所
第6章 小さな草の世界
第7章 「眠りよりも穏やかな草」(ルコント・ド・リール)
第8章 干し草刈りの匂い――草の仕事とその情景
第9章 社会的地位を示す草
第10章 「緑の草に白大理石の足が二本輝く」(ラマルチーヌ)
第11章 草、すなわち「大いなる姦淫」の場(エミール・ゾラ)
第12章 「死者の草」(ラマルチーヌ)
終章
訳者あとがき
原注/人名索引
関連情報
草や草原はわれわれ日本人にも馴染み深いものだが、風土と気候の違いのせいで、日仏では植生がかなり異なり、したがって草や草原の種類と様態も異なる。また、基本的にフランス人は田舎や田園が好きだし、草地や草原にたいする愛着も強い。本書は、草という自然要素が、人間(あるいは人類)の誕生から、幼年時代、青年時代、壮年期、そして死までの時間的流れに寄り添うかのように、人間の感情や感覚生活と分かち難くつながっていることを、さながら一編の抒情詩のように描いてみせた。(「訳者あとがき」より)
【著者紹介】
●アラン・コルバン(Alain Corbin)
1936年フランス・オルヌ県生。カーン大学卒業後、歴史の教授資格取得(1959年)。
リモージュのリセで教えた後、トゥールのフランソワ・ラブレー大学教授として現代史を担当(1972-1986)。1987年よりパリ第1大学(パンテオン=ソルボンヌ)教授として、モーリス・アギュロンの跡を継いで19世紀史の講座を担当。現在は同大学名誉教授。
“感性の歴史家”としてフランスのみならず西欧世界の中で知られており、近年は『身体の歴史』(全3巻、2005年、邦訳2010年)『男らしさの歴史』(全3巻、2011年、邦訳2016-17年)『感情の歴史』(全3巻、2016-17年、邦訳2020年-刊行中)の3大シリーズ企画の監修者も務め、多くの後続世代の歴史学者たちをまとめる存在としても活躍している。
著書に『娼婦』(1978年、邦訳1991年・新版2010年)『においの歴史』(1982年、邦訳1990年)『浜辺の誕生』(1988年、邦訳1992年)『音の風景』(1994年、邦訳1997年)『記録を残さなかった男の歴史』(1998年、邦訳1999年)『快楽の歴史』(2008年、邦訳2011年)『処女崇拝の系譜』(2014年、邦訳2018年)など。(邦訳はいずれも藤原書店)
【訳者紹介】
●小倉孝誠(おぐら・こうせい)
1956年生。慶應義塾大学教授。専門は近代フランスの文学と文化史。
1987年、パリ第4大学文学博士。1988年、東京大学大学院博士課程中退。著書に『身体の文化史』『愛の情景』『写真家ナダール』(中央公論新社)、『犯罪者の自伝を読む』(平凡社)、『革命と反動の図像学』『ゾラと近代フランス』(白水社)、『恋するフランス文学』(慶應義塾大学出版会)など。また訳書に、コルバン『時間・欲望・恐怖』(共訳)『感性の歴史』(編訳)『音の風景』『風景と人間』『空と海』(以上藤原書店)、フローベール『紋切型辞典』(岩波文庫)など、監訳書に、コルバン他監修『身体の歴史』(全3巻、日本翻訳出版文化賞受賞)『男らしさの歴史』(全3巻、共に藤原書店)がある。
●綾部麻美(あやべ・まみ)
1982年生。慶應義塾大学法学部専任講師。専門は20世紀フランス詩。
慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程単位取得満期退学。2014年パリ第10ナンテール大学博士。著書に『フランス文学史II』(共著、慶應義塾大学通信教育部、2016年)など。主な論文にFrancis Ponge : un atelier pratique du ≪ moviment ≫(博士論文、未刊)、≪ Francis Ponge et Eugene de Kermadec: autour du Verre d’eau ≫ (Textimage, no 8, hiver 2016,≪ Poésie et image a la croisee des supports ≫ [revue en ligne : http://revue-textimage.com/13_poesie_image/ayabe1.html])、「フランシス・ポンジュの『論理的または造形的な美しさ』――『1965年4月フェノザの栄光に、この未完成の小石膏像』をめぐって」(『藝文研究』第119-2号、慶應義塾大学藝文学会、2020年)などがある。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです