- 野村幻雪 著
- 笠井賢一 編
- 四六上製 336頁 カラー口絵16頁
ISBN-13: 9784865783377
刊行日: 2022/2
能という芸能の本質を説く珠玉の随筆と対話を集成
狂言の家から能楽に転じて芸の道を追求、伝統ある「雪」号を授与されるも、惜しくも昨年8月に急逝した著者が、晩年に書き残した、芸そして自らの生涯をめぐる珠玉の随筆・対談集。
●追悼出版
目次
Ⅰ 芸を思う
一 梅は匂ひよ 桜は花よ 人は心よ
二 いろはにほへと
三 能楽よもやま話
四 全てがわが師匠
Ⅱ 能役者人生
一 能役者人生――温故知新
二 生涯初心不可忘
三 わが人生を語る
四 能は生きている
五 伝統の継承、心を伝える――オリンピック・パラリンピック能楽祭に寄せて
Ⅲ 芸を語らう
一 『実朝』と、世界遺産と 八嶌正治+野村四郎
二 能と狂言の目指す究極の姿を探し求めて 野村万作+野村四郎
三 『卒都婆小町』を語る 粟谷能夫+粟谷明生+野村四郎
四 「感じる」ことが大切 石井倫子+野村四郎
五 謡は文学、型は彫刻、舞台は絵画 中原伸之+野村四郎
六 伝統に胡座をかくことなく創意工夫で継承する心 中村時蔵+野村四郎
雪号授与(二〇二一年)
雪号授与にあたって 二十六世観世宗家 観世清和
雪号の称号をいただき 野村四郎改メ 野村幻雪
〈編者あとがき〉能役者 野村幻雪(笠井賢一)
初出一覧/野村幻雪略年譜・主要演能(出演)記録
関連情報
人間の一生というものも有為転変です。その中で芸能というものがどうやって生きるかということ、その転変というものにただ沿ったのではなくて、その有為転変する価値観の移り変わりとともに呼吸をしながら、伝統と改革というものがその中から生まれて来やしないかと思うのです。
先人がどんどんいなくなっていくというのは、なにか散る花を見るような感じがいたします。花が散ると、次には芽を吹くわけですが、日本の芸能というのは、桜の花のように散ったらその人の人生とか持っていた芸とかがすべて終わりになってしまうような気がします。
しかし花が散り葉が散る、散ると土に戻り、翌年にまた芽が息吹く、これは輪廻思想、循環思想です。秋に木の葉が散って、そしてまた春に青い芽を吹いて緑が甦る、これが自然の哲理です。ですから過去を大事にして今につながっていくわけです。時代が移り変わっても、能は能でもっていつも新鮮になって甦ってくる。時代が移り変わろうと、能の精神というのはそういうふうに存在したいものだなと思っています。
(本文より)
著者紹介
●野村幻雪(四郎改メ)(のむら・げんせつ)
観世流シテ方。1936年生まれ。和泉流狂言方六世野村万蔵(人間国宝)の四男、本名四郎。3歳で『靱猿』の猿で初舞台。15歳まで狂言の舞台に立つ。15歳より25世観世元正宗家に入門、能の道に進む。観世寿夫にも師事。1955年『俊成忠度』で初シテ、64年『道成寺』を披く。東京藝術大学名誉教授。芸術選奨文部大臣賞、芸術院賞、観世寿夫記念法政大学能楽賞受賞。紫綬褒章受章。日本能楽会会長。2016年観世流シテ方として重要無形文化財各個認定(人間国宝)。2021年雪号を授与される。息子に野村昌司。兄の野村萬、万作は共に和泉流狂言方として重要無形文化財各個認定(人間国宝)。2021年8月死去。
主な著作およびDVDとして、『お稽古手帳』『能を彩る 文様の世界』(共著)『仕舞入門講座』(以上、檜書店)、『仕舞入門テキスト』『日本の伝統 能・狂言入門テキスト』(以上、NHK出版)、DVD『観世流仕舞集 第5巻』、DVD『仕舞入門』雪・月・花(以上、檜書店)、カセットテープ『梅枝』『小塩』『朝長』(東英サウンドファミリー)などの他、自伝・芸談として『狂言の家に生まれた能役者』(白水社)、『芸の心 能狂言 終わりなき道』(山本東次郎と共著、藤原書店)がある。
【編者】
●笠井賢一(かさい・けんいち)
1949年生。銕仙会(能・観世流)プロデューサーを経て、アトリエ花習主宰。演出家・劇作家として古典と現代を繫ぐ演劇活動を能狂言役者や現代劇の役者、邦楽、洋楽の演奏家たちと続ける。多田富雄作品をはじめ新作能の演出を多数手がける。
主な演出作品に、石牟礼道子作・新作能『不知火』、多田富雄作・新作能『一石仙人』、東京藝術大学邦楽総合アンサンブル『竹取物語』『賢治宇宙曼荼羅』、北とぴあ国際音楽祭オペラ『オルフェーオ』、アトリエ花習公演『言葉の力――詩・歌・舞』、創作能舞『三酔人夢中酔吟――李白と杜甫と白楽天』など。著作に『花供養』(編著、多田富雄・白洲正子著)、『芸の心 能狂言 終わりなき道』(編著、野村四郎・山本東次郎著)など。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです