- 清眞人 著
- A5上製 376頁
ISBN-13: 9784865783414
刊行日: 2022/3
思想の闘技場へ、ようこそ!
ショーペンハウアーが回帰する「共苦の倫理」に、ニーチェは対峙する!
著者のニーチェ論の集大成。
かけがえのない誰かとの格闘の場、対決が対話であり、対話が対決であるような場、相手とのそれが自己自身とのそれであり、その逆でもある場、自己の内なる矛盾が己に迫る「あれかこれか」の選択の決断……21世紀、ますます重要性を増すニーチェ思想の核心を抉り出す。
目次
総 序
第Ⅰ部―ショーペンハウアーの生きたアンビヴァレンツ
はじめに
第一章 ショーペンハウアーの立てる究極の問いと回答――彼の仏教的キリスト教論
第二章 己への否定的媒介者、ニーチェ
第三章 『意志と表象としての世界』の基本的問題構造
第四章 宇宙論的ペシミズムと「諦観」の美学
付論 1 グノーシス派キリスト教とショーペンハウアー
付論 2 フォイエルバッハとショーペンハウアー
第Ⅱ部―ショーペンハウアーへの照明
第一章 ショーペンハウアーの「現代的意義」をめぐって
――トーマス・マン、M・ホルクハイマー、A・シュミット
第二章 ショーペンハウアーと性――R・ザフランスキー『ショーペンハウアー』
第三章 ヴェーバーのなかのショーペンハウアー
第四章 「宇宙樹」比喩と「大洋と小波」比喩、そして「空」観
――エリアーデ、ショーレム、大拙
第五章 ヴェーバーと大拙――それぞれの「大乗仏教」論
第六章 西田幾多郎とショーペンハウアー
第七章 ジンメル『ショーペンハウアーとニーチェ』への批評
第八章 ショーペンハウアーならびにニーチェとエリウゲナとの関係について
――坂部恵『ヨーロッパ精神史入門』を手掛かりに
付録 私の個人叢書「架橋的思索 二つの救済思想のあいだ」・「序言」抄
注
関連情報
この拙著『格闘者ニーチェ』三巻本は、ニーチェの思想を、さらにいえば、それが彼の死後――二十世紀において――形成することになった思想的磁場の在りようを、次の三巻をもって究明しようと試みるものである。すなわち、第Ⅰ巻『ショーペンハウアー ニーチェの最大の「師」にして「対決者」』・第Ⅱ巻『自己格闘者ニーチェ』・第Ⅲ巻『マンとハイデガー 二つの探照燈』の三巻をもって。一言にしていうならば、この三巻本はこれまで私が書き記してきたニーチェ研究の集大成である。
(「総序」より)
本巻『ショーペンハウアー――ニーチェの最大の「師」にして「対決者」』は第Ⅱ巻『自己格闘者ニーチェ』と対をなす。一方の思想の抱える問題性を摑み取ろうと思うならば、他方のそれを知らねばならぬ。両者は互いに《己が己である・汝が汝である》ための必須の媒介者なのだ。――「個体化の原理」による呪縛の果てに「残忍」という他者支配の極北に向かう「権力への意志」たる「生への意志」の心理的構造をめぐるショーペンハウアーの考察、それをそのまま裏返しにして、真逆にも、「否!」から「諾!」の論理を導きだすなら、すなわち、それがニーチェ、この私の思想にほかならない!
(本巻「はじめに」より)
著者紹介
●清眞人(きよし・まひと)
1949年生まれ、早稲田大学政経学部卒業、同大学院文学研究科哲学専攻・博士課程満期修了。元、近畿大学文芸学部教授。
本書に深く関連する著書としては、『〈受難した子供〉の眼差しとサルトル』御茶の水書房、1996年。『実存と暴力』御茶の水書房、2004年。『《想像的人間》としてのニーチェ――実存分析的読解』晃洋書房、2008年。『三島由紀夫におけるニーチェ――サルトル実存的精神分析を視点として』思潮社、2010年。『村上春樹の哲学ワールド――ニーチェ的長編四部作を読む』はるか書房、2011年。『サルトルの誕生――ニーチェの継承者にして対決者』藤原書店、2012年。『大地と十字架――探偵Lのニーチェ調書』思潮社、2013年。『聖書論Ⅰ 妬みの神と憐れみの神』『聖書論Ⅱ 聖書 批判史考』藤原書店、2015年。『ドストエフスキーとキリスト教――イエス主義・大地信仰・社会主義』藤原書店、2016年。『フロムと神秘主義』藤原書店、2018年。個人叢書「架橋的思索 二つの救済思想のあいだ」として、第Ⅰ巻『ヴェーバーにおける合理と非合理』、第Ⅱ巻『大拙における二律背反と煩悶』、第Ⅲ巻『二人の葛藤者――ヴェーバーとトラー』、第Ⅳ巻『ニーチェにおけるキリスト教否定と仏教肯定』(以上、Amazon Kindle電子書籍セルフ出版)、『高橋和巳論――宗教と文学の格闘的契り』藤原書店、2020年がある。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです