- 清眞人 著
- A5上製 376頁
ISBN-13: 9784865783438
刊行日: 2022/4
ドイツ的観念が迸る激突!
先行者ニーチェ!
その巨大さを照らしだすマンとハイデガー!
著者のニーチェ論の集大成。
20世紀を代表するドイツの知的巨人、トーマス・マンとマルティン・ハイデガー。
二つの知性は、先行者ニーチェに何を見出し、何を問題としたのか?
二人のニーチェとの闘いは、ニーチェ思想の根幹にかかわる優れて今日的課題を照射するとともに、二人の思想の問題性も炙り出す。
21世紀、ますます重要性を増すニーチェ思想の核心を抉り出す。
目次
第Ⅰ部 トーマス・マンとニーチェ
はじめに
第一章 「芸術家気質と市民性との悲痛な対立」というマンの視点
第二章 「芸術家気質」とは?
第三章 マンの「市民的ヒューマニズム」
第四章 「弁証法的弁神論」をめぐる議論
第五章 「人間的相互性」の欠如をめぐる苦悩とマゾヒズム
第六章 「ドイツ的なるもの」
第七章 「ドイツ的なるもの」と音楽
第八章 追補 マンへの不満
第Ⅱ部 ニーチェ主義者としてのハイデガー
第一章 ハイデガー論の難所
第二章 ハイデガーにおける「権力への意志」と「意志への意志」との区別
第三章 『形而上学入門』における「技術technē」/「詩作的思惟」/「暴力‐行為性」
第四章 講義録『ニーチェ』と『存在と時間』
第五章 ニーチェにおける「存在」と「生成」の対立、それをめぐるハイデガーの議論
第六章 反政治性の政治性という逆説
第七章 結び
関連情報
この拙著『格闘者ニーチェ』三巻本は、ニーチェの思想を、さらにいえば、それが彼の死後――二十世紀において――形成することになった思想的磁場の在りようを、次の三巻をもって究明しようと試みるものである。すなわち、第Ⅰ巻『ショーペンハウアー ニーチェの最大の「師」にして「対決者」』・第Ⅱ巻『自己格闘者ニーチェ』・第Ⅲ巻『マンとハイデガー 二つの探照燈』の三巻をもって。一言にしていうならば、この三巻本はこれまで私が書き記してきたニーチェ研究の集大成である。
(「総序」より)
本巻第Ⅰ部の課題は、マンの視点の働きを彼の最晩年の大作『ファウスト博士』を基軸に置きながら、マンの様々な言説や作品のなかに探り直し、その作業を通してマンのニーチェに対する対決・格闘の在りようを浮かびあがらすことである。(本巻・第Ⅰ部「はじめに」より)
ハイデガーは、人間存在の本質を「権力への意志」を生きるという点に見たニーチェの人間学的見解を最大の参照軸に据えたうえで、それを《存在と時間》という問題系に引き入れることでまず『存在と時間』を書いたのであり、ニーチェの主張のなかに、くだんの「存在の意味」に対する最も真正なる回答を見るのである。
(本巻・第Ⅱ部・第四章より)
著者紹介
●清眞人(きよし・まひと)
1949年生まれ、早稲田大学政経学部卒業、同大学院文学研究科哲学専攻・博士課程満期修了。元、近畿大学文芸学部教授。
本書に深く関連する著書としては、『〈受難した子供〉の眼差しとサルトル』御茶の水書房、1996年。『実存と暴力』御茶の水書房、2004年。『《想像的人間》としてのニーチェ――実存分析的読解』晃洋書房、2008年。『三島由紀夫におけるニーチェ――サルトル実存的精神分析を視点として』思潮社、2010年。『村上春樹の哲学ワールド――ニーチェ的長編四部作を読む』はるか書房、2011年。『サルトルの誕生――ニーチェの継承者にして対決者』藤原書店、2012年。『大地と十字架――探偵Lのニーチェ調書』思潮社、2013年。『聖書論Ⅰ 妬みの神と憐れみの神』『聖書論Ⅱ 聖書 批判史考』藤原書店、2015年。『ドストエフスキーとキリスト教――イエス主義・大地信仰・社会主義』藤原書店、2016年。『フロムと神秘主義』藤原書店、2018年。個人叢書「架橋的思索 二つの救済思想のあいだ」として、第Ⅰ巻『ヴェーバーにおける合理と非合理』、第Ⅱ巻『大拙における二律背反と煩悶』、第Ⅲ巻『二人の葛藤者――ヴェーバーとトラー』、第Ⅳ巻『ニーチェにおけるキリスト教否定と仏教肯定』(以上、Amazon Kindle電子書籍セルフ出版)。『高橋和巳論――宗教と文学の格闘的契り』藤原書店、2020年がある。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです