- 山田鋭夫 著
- 四六上製 288頁
ISBN-13: 9784865783506
刊行日: 2022/6
「ゆたかな生(ウェルビーイング)」をめざして!
岸田政権の「新しい資本主義」ビジョンに触発され、「めざすべき経済社会とは何か」(前編)と、「資本主義はどういう仕組みで変化するのか」(後編)を分析、「市民社会」と「ゆたかな生(ウェルビーイング)」をキーワードに、来るべき新しい社会の構築を企図する渾身作!
目次
序説 「ゆたかな生」をめざして
1 「新しい資本主義」を超えて
2 めざすべき経済社会とは何か
3 資本主義はどういう仕組みで変化するのか
4 「市民社会」という語
5 「ウェルビーイング」という語
前編 市民社会とウェルビーイング
第1章 人間―自然の物質代謝と市民社会――内田義彦の視座
1 はじめに
2 マルクスの物質代謝論
3 内田義彦の物質代謝視座
4 物質代謝の再建と市民社会
5 おわりに
第2章 見えざる手からあやつる手へ――内田義彦とS・ボウルズ
1 はじめに――ホモ・エコノミクスと利己心
2 スミスにおける利己心と共感
3 利己心の等置と正義
4 市場と道徳
5 インセンティブとモラルの分離不可能性
6 不完備契約の市民化効果
7 おわりに
第3章 「新しい資本主義」を新しくする――岸田ビジョンを超えて
1 岸田政権の「新しい資本主義」ビジョン
2 「新しい資本主義」は新しいか
3 「新しい資本主義」ビジョンの問題点
4 ポストコロナ経済社会の方向性
第4章 ウェルビーイング主導の人間形成型社会――R・ボワイエのパンデミック論から
1 パンデミックと資本主義の趨勢
2 人間形成型発展とは何か
3 人間形成型モデルへの予兆
4 人間形成型発展とウェルビーイング
5 おわりに――ゆたかさ概念の転換へ
後編 資本主義のレギュラシオン理論
第5章 レギュラシオン理論とは何か
1 はじめに
2 可変性の政治経済学
3 歴史的制度的マクロ経済学
4 金融主導型の発展様式
5 資本主義の多様性
6 制度の政治経済学
7 制度階層性の逆転と新自由主義連合
8 おわりに――ポストコロナの経済社会
第6章 資本主義をどう調整するか
1 市場経済か資本主義か
2 資本主義の社会的調整
3 労働力商品の売買と日本の市民社会論
4 資本原理と社会原理
第7章 社会主義から国家資本主義へ
1 はじめに――移行経済論の今昔
2 イアン・ブレマー『自由市場の終焉』
3 ブレマー国家資本主義論の反響
4 国家と資本主義の関係
5 国家資本主義概念の諸相
6 調整様式としての国家資本主義
7 おわりに――市場・国家・市民社会
第8章 制度の内部代謝とレジーム危機
1 はじめに
2 出発点としての経路依存論
3 制度変化の諸類型
4 制度変化の概念的理解
5 新自由主義における経済と政治
6 おわりに
あとがき
参考文献
関連情報
ビジネスの現場でも、社員の健康や仕事満足感などがよい状態にあることを指し、そのウェルビーイングを高めてゆこうとする動きが報じられている。邦訳語も多様で「幸せ」「幸福(度)」といったものもあれば、「よき生」「善き生」と訳される。本書では「ゆたかな生」としたいと考えている。
本書は、「新しい資本主義」や「コロナ後の経済社会」を念頭において新しく考えたことを展開しようとするものである。換言すれば岸田政権の「新しい資本主義」をさらに「新しくする」ことを意図している。
いや、それ以上に、「新しい資本主義」を超えて、その先にわれわれが見据えるべき羅針盤としての「ゆたかな生」(ウェルビーイング)を模索しようという試みである。
著者紹介
●山田鋭夫(やまだ・としお)
1942年愛知県生。1969年名古屋大学大学院経済学研究科博士課程単位取得退学。名古屋大学名誉教授。専攻は理論経済学・現代資本主義論・市民社会論。
著書に『経済学批判の近代像』(有斐閣,1985年),『レギュラシオン・アプローチ』(藤原書店,1991年;増補新版1994年),『レギュラシオン理論』(講談社現代新書,1993年),『20世紀資本主義』(有斐閣,1994年),『さまざまな資本主義』(藤原書店,2008年),Contemporary Capitalism and Civil Society (Springer, 2018),『内田義彦の学問』(藤原書店,2020年),Civil Society and Social Science in Yoshihiko Uchida(Springer, 2022)など。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです