- アルベール・カミュ 著
- 中村まり子 訳
- 〈解説〉岩切正一郎
- 〈解説鼎談〉松岡和子・松井今朝子・中村まり子
- 四六変上製 224頁
ISBN-13: 9784865784053
刊行日: 2023/11
演劇人による“聴いてわかる”新訳!
全体主義の恐怖
“緊急事態宣言”が連発される新型コロナ下、本訳は俳優座で上演。
話題になった小説『ペスト』(1947)同様、人々が疫病に倒れ、独裁者が支配する管理・監視社会に、我々は何を考えるのか。
「あなた方はみな有罪。生まれつき支配されたという罪を背負ってるの。」
目次
戒厳令(プロローグと三部)
訳者あとがき(中村まり子)
〈鼎談〉『戒厳令』について
翻訳家、シェイクスピア全訳 松岡和子
時代小説家、歌舞伎研究、演劇評論家 松井今朝子
俳優、翻訳家 中村まり子
〈解説〉岩切正一郎
関連情報
「カミュは非常にギリシャ悲劇を意識していますね。コーラスが出てくるということ1つをとってもそうだし。ペストというのが、人間なのか何かわからない。人類を滅ぼしかねない疫病の擬人化とも読めるし、そういうものの象徴とも読める。そういう書き方は、シュールレアリスムだなと思いました。」(翻訳家 松岡和子)
「これって、全体主義の話ですよね。ペストというのは、完全に全体主義のメタファーですよね。だから今、ぴったりなんじゃないかと思います。というのは、マイナンバーじゃないけどみんなに登録させて……そういう話が出てきますよね。」(時代小説家 松井今朝子)
「同調主義の、監視社会の中にいる話。どんどんその中に取り込まれていく。怖いですよね。」(俳優、翻訳家 中村まり子)
著者紹介
●アルベール・カミュ(Albert Camus, 1913-60)
仏領アルジェリア出身。生後1年でフランス人入植者の父が第1次大戦で戦死。兄、耳が不自由な母とともに祖母の家で暮らし、生活は貧困の中にあった。高等中学在学中の17歳時に重い結核に罹患。1932年、アルジェ大学文学部に進学、哲学を専攻。学位論文『キリスト教形而上学とネオプラトニズム』(1936年)。大学卒業後、1938年にアルジェの新聞の記者となり、また劇団活動も。1940年、反政府活動によりアルジェリアからの退去命令を受けフランス本土に渡る。第2次大戦中から『コンバ』紙主筆としてレジスタンス運動。1942年の小説『異邦人』、評論『シーシュポスの神話』等で打ち出した“不条理”の哲学で注目され、1947年の小説『ペスト』はベストセラーに。劇作家としては『カリギュラ』『誤解』『戒厳令』(本作)『正義の人びと』などの戯曲を残した。1951年、『反抗的人間』を契機にサルトルと論争。政治における暴力の問題に苦悩。1954年アルジェリア戦争に際しても言論への賛同を得られず次第に孤立。1956年『転落』発表後、1957年、43歳の若さでノーベル文学賞を受賞。1960年、サンス~パリ間の通称ヴィルブルヴァンで自動車事故により46歳で死去。
〈主な作品〉
小説『異邦人』(1942)、『ペスト』(1947)、『転落』(1956)、『追放と王国』(1957)
戯曲『カリギュラ』(1944)、『誤解』(1944)、『戒厳令』(1948、本作)、『正義の人びと』(1949)
エッセイ、評論等『裏と表』(1937)、『結婚』(1939)、『シーシュポスの神話』(1942)、『反抗的人間』(1951)、『夏』(1954) 他多数。
【訳者】
●中村まり子(なかむら・まりこ)
東京都出身。文化学院大学部仏文科中退。子供時代から父(中村伸郎)の在籍した劇団文学座、NLTの舞台に子役として出演。
1969~72年、劇団 浪曼劇場(三島由紀夫 主宰)に在籍。
1972~73年、現代演劇協会 劇団 雲に在籍。
1972年、パリ・ユシェット座にて「ベラ・レーヌ演劇教室」に参加。
1972~88年、渋谷ジァンジァン“金曜夜10時劇場”イヨネスコ作「授業」15年ロングラン。
1980年より演劇企画ユニット〈パニック・シアター〉を主宰し、現在に至る。
2007年、湯浅芳子賞・戯曲上演部門賞。
2013年、第6回小田島雄志・翻訳戯曲賞。
【主な出演作品】
〔舞台〕「サロメ」「地球は丸い」(浪曼劇場) 他
〔映画〕「12人の優しい日本人」(中原俊監督) 他
また、テレビ、ラジオドラマ、ナレーション等多数出演。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです