- 大石尚子 編
- A5上製 288頁
ISBN-13: 9784865784114
刊行日: 2024/1
日本・イタリアのSI(ソーシャル・イノベーション)事例研究の最新成果!
過度の市場主義が世界に浸透するなか、農と食の持続可能性をいかに守るべきか。「中山間地域における小農中心」という地理的条件の類似した日本とイタリアを対比、農と食を結ぶローカルなイノベーションの事例を紹介し、地域・国家レベルでの食農・地域振興政策を提言する、画期的な国際的共同研究の成果。
目次
はじめに [大石尚子]
Ⅰ ソーシャル・イノベーションとマクロ政策
第1章 ソーシャル・イノベーションの定義と日欧の食農政策展開 [大石尚子]
第2章 Territorialising the EU cohesion policy in inner peripheries. Italy’s National Strategy for Inner Areas
(国家政策としての農村開発――欧州戦略の展開とイタリア・インナーエリア政策)
[Giancarlo Cotella, Elisabetta Vitale Brovarone]
第3章 ソーシャル・イノベーションとしての総合的地域食政策 (ローカル・フードポリシー) [秋津元輝]
第4章 社会的協同組合による「農」を介した社会的包摂――「地の塩コンソーシアム」の取り組みについて [白石克孝]
第5章 農業・農村を支える欧州共通農業政策 [石倉研]
Ⅱ ローカルから見る農村地域のソーシャル・イノベーション
第1章 空き住宅を1ユーロで売る――過疎町村の奇抜な振興策 [矢作弘]
第2章 International migrations in extra-urban areas: exploring challenges and opportunities in Italy and Japan
(都市地域外における外国人移民――日伊における課題と可能性) [Magda Bolzoni]
第3章 イタリアの6次産業化――オリーブオイルとワインを事例として [中村貴子]
第4章 イタリア南部における移民支援と農業労働 [坂梨健太]
第5章 日本における農村イノベーションの取り組み
1 地域型社会的企業「え~ひだカンパニー株式会社」 [風岡宗人]
2 起業型地域おこし協力隊による農村イノベーションの取り組み――愛媛県西条市を事例に [江欣樺]
Ⅲ Insights Emerging from Social Innovation Experiences in Italian Rural Areas
(イタリア農村におけるソーシャル・イノベーションの経験に学ぶ)
第1章 Common issues of Italian and Japanese agriculture(日伊の農業における共通問題) [Mariarosaria Lombardi, Naoko Oishi]
第2章 Lesson learned from the EU project: Social Innovation in Marginalized Rural Areas (2016-20)
(欧州研究プロジェクトから学ぶ――限界集落におけるソーシャル・イノベーション(SIMRA 2016-20)) [Maurizio Prosperi]
第3章 A study-case of an Italian Social Innovation: The Rural Hub VaZapp’
(イタリアのソーシャル・イノベーションの事例分析――ルーラル・ハブ ヴァザップ) [Mariarosaria Lombardi, Antonio Stasi]
結びにかえて――イタリア・ソーシャル・イノベーションモデルの日本での実装とその効果 [大石尚子]
関連情報
今、気候変動、環境汚染問題とともに、日本では人口減少と高齢化によって食糧生産基盤の弱体化が加速している。特に衰退の一途を辿っているのが中山間地域などの条件不利地域である。日本、イタリアは共に国土の70%を中山間地域が占め、そこで営まれる大部分は小農である。小農は農業の多面的機能を発揮し、持続可能性を実現する意味でもその重要性が確認されている。持続可能な社会の実現は、中山間地域の再生無しにはあり得ない。さらに、人々の食行為は、あらゆるシステムが関係する。SDGsを実現するためにも、人々のライフスタイルの革新を促す包括的な食農政策が求められている。
戦後今に至るまで、日本の農業政策は欧州農業政策を手本にしてきたが、それは、アメリカよりも地理的条件にいくつかの点において類似性があるからであろう。本書では、事例研究においては、特にイタリアに焦点を当てている。日本とイタリアという国に、地理的条件や社会の発展プロセス、農業・農村問題などに幾つかの共通点を見出すことができるからである。
(「はじめに」より)
編者紹介
●大石尚子(おおいし・なおこ)
龍谷大学政策学部教授。1973年生まれ。兵庫県西宮市出身。同志社大大学院 総合政策科学研究科ソーシャル・イノベーション研究コース博士課程修了。博士(ソーシャル・イノベーション)。専門分野はソーシャル・イノベーション、農業・農村政策、特に食農分野におけるソーシャル・イノベーション。主な著書『シリーズ田園回帰8 世界の田園回帰』(共著、農山漁村文化協会、2017年)、『ソーシャル・イノベーションの理論と実践』(共著、明石書店、2022年)。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです