●光州詩片
Ⅰ
風/ほつれ/遠雷/まだあるとすれば/火/崖
Ⅱ
褪せる時のなか/この深い空の底を/骨/窓/噤む言葉――朴寛鉉に/囚/浅い通夜/冥福を祈るな
Ⅲ
そうして、今/三年/距離/狂う寓意/めぐりにめぐって/心へ/日日よ、愛うすきそこひの闇よ
〈解説〉「光州事態」と「在日」(三木卓)
あとがき
●季期陰象
日の底で/彼岸花の色あいのなか/風船のある場所/手のあわいに/熟れない季節を/乾く/木の断章/遠い朝/鳥/謹我新年/ひそむ/明日
●エッセイ
南北朝鮮「融和」の中の断層――民衆不在の統一指向/にび色の日射しの下で/開かれた手の年/「光州事態」の内と外/“六十億ドル”に絡むもの/詩が書けるということ/忘れはてた何か――「言い忘れたこと」をめぐって
●講演
金芝河の詩をささえているもの/“醜”を生きる思想――金芝河の詩精神/寺田博さんのこと
あとがき――『光州詩片』が詩集でありえた事実(金時鐘)
〈インタビュー〉「私からは忘れさせない」――『光州詩片』『季期陰象』をめぐって
〈解説〉たましいの速度での「帰郷」――『光州詩片』から『季期陰象』へ(細見和之)
〈解題〉光州詩片/季期陰象 ほかエッセイ(細見和之/浅見洋子)
著者紹介
●金時鐘(キム・シジョン)
1929年(旧暦1928年12月)朝鮮釜山に生まれ、元山市の祖父のもとに一時預けられる。済州島で育つ。48年の「済州島四・三事件」に関わり来日。50年頃から日本語で詩作を始める。在日朝鮮人団体の文化関係の活動に携わるが、運動の路線転換以降、組織批判を受け、組織運動から離れる。兵庫県立湊川高等学校教員(1973-88年)。大阪文学学校特別アドバイザー。詩人。
主な作品として、詩集に『地平線』(ヂンダレ発行所、1955)『日本風土記』(国文社、1957)長篇詩集『新潟』(構造社、1970)『原野の詩――集成詩集』(立風書房、1991)『化石の夏――金時鐘詩集』(海風社、1998)『金時鐘詩集選 境界の詩――猪飼野詩集/光州詩片』(藤原書店、2005)『四時詩集 失くした季節』(藤原書店、2010、第41回高見順賞)『背中の地図』(河出書房新社、2018)他。評論集に『さらされるものと さらすものと』(明治図書出版、1975)『クレメンタインの歌』(文和書房、1980)『「在日」のはざまで』(立風書房、1986、第40回毎日出版文化賞。平凡社ライブラリー、2001)他。エッセーに『草むらの時――小文集』(海風社、1997)『わが生と詩』(岩波書店、2004)『朝鮮と日本に生きる』(岩波書店、2015、大佛次郎賞)他多数。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです