- 安里英子 著
- 四六上製 496頁
ISBN-13: 9784865784176
刊行日: 2024/3
冒される琉球弧の島々のくらし
1972年の本土「復帰」以降、島々の環境、文化、くらしが「リゾート開発」によって破壊されてゆく実態を取材した名著『揺れる聖域』から30年。その後も問題は全て積み残されたまま、開発、観光(オーバーツーリズム)、政治、そして米軍・自衛隊基地による軍事要塞化に、島はますます蝕まれてゆく。
1991年版に大幅に増補し、「本土復帰」から50年以上を経た沖縄の今を抉る。
目次
Ⅰ 揺れる聖域――リゾート開発と島のくらし 1972‐1990
序章
第1章 八重山諸島
与那国島/小浜島/新城島(上地島)/新城島(下地島)/西表島/石垣市野底/竹富島/波照間島
第2章 宮古諸島
平良市下崎/大神島/池間島/下地町/上野村/城辺町
第3章 沖縄諸島
玉城村/知念村/久高島/糸満市/与那城村屋慶名・平安座島・宮城島/名護市安部/国頭村奥/瀬底島/水納島/伊是名島/具志川島
第4章 奄美諸島
与論島/奄美大島・加計呂麻島
Ⅱ 壊れゆく聖域――揺れる聖域・その後 1991‐2023
1 リゾート開発、観光、基地
1 島の自立をはばむリゾート開発――宮古島、池間島
2 小さな島の巨大開発――伊良部島、下地島
3 島々のリゾート開発による破壊と再生
4 島に突き刺さったままの劣化ウラン弾
5 オスプレイ問題からみえる日米の腐敗――沖縄の「復帰」はアメリカの都合
6 壊れゆく聖域――沖縄観光の行方
7 サンゴ礁文化と暮らし――収奪される島々
8 収奪される島々と自律への模索
2 琉球の精神・歴史・文化
1 島々のダイナミズムと内向する魂――海人と神人の世界
2 久高島・自治の可能性――島の霊力と「久高島土地憲章」
3 ヤポネシア論と反「復帰」論の現在
4 「琉球処分」140年目の沖縄で考える――「平和の礎」から見える日本のアジア侵略
関連情報
本書は、1991年に琉球弧の島々を回って、リゾート開発と島の暮らしをルポした本『揺れる聖域』とその後の開発状況を加えた新版である。初版から30年以上も経って2022年には日本「復帰」50年の節目となり、私なりに「復帰」とは何かを考え、「反復帰論」「ヤポネシア論」「琉球弧」の思想を再考した。再び出版することの意味は、沖縄の島々の環境破壊が止まるどころか、ますますひどくなってきたからだ。巨大資本は魔の手のようにところかまわず、島を囲いこみ、リゾート建設は巨大化の一途だ。
琉球弧の島々は要塞化している。米軍基地の密集している沖縄島(本島)は米軍と自衛隊の共同使用として強化され、名護市辺野古の新基地建設は20年に近い、市民による抵抗運動にもかかわらず、豊穣な海に土砂を投入し続けている。(「はじめに」より)
著者紹介
●安里英子(あさと・えいこ)
1948年、沖縄県那覇市首里生まれ。ライター。1977年、復帰5年目に1人でミニコミ誌『地域の目』を発行。地域の自治・暮らしの問題にかかわる。90年から97年にかけて琉球弧の島々をまわりリゾート開発の実態をルポすると同時に御嶽などの聖地を巡る。朝鮮人強制連行(軍夫)の調査・研究をすすめる「NPO法人・沖縄恨之碑の会」共同代表としても活動。
『揺れる聖域』(沖縄タイムス社)で第5回地方出版文化賞次席(1991年)、第2回女性文化賞(1998年)。著書に『琉球弧の精神世界』(1999年)、『凌辱されるいのち』(2008年、以上、御茶の水書房)、『沖縄・共同体の夢』(2002年、榕樹書林)、『新しいアジアの予感』(2018年、藤原書店)など。詩集『神々のエクスタシー』(2017年、あすら舎)で第40回山之口貘賞。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです