- アラン・コルバン 著
- 綾部麻美 訳
- 四六変上製 208頁・カラー口絵4頁
ISBN-13: 9784865784190
刊行日: 2024/4
“感性の歴史家”による、唯一無二の「風の歴史」
古来、変わることなく人間の傍らにあり続けてきたかに見える「風」。しかし、その「風」への認識は、科学的認識の深まりと、人類の空への進出により、18~19世紀に大きな転換を迎える。多様な文献を通じて跡付ける、人間にとっての「風」の歴史!
目次
序章
1 風を理解することの難しさ
2 一般の風
3 エオリアンハープ
4 風の新たな体験
5 聖書の風の想像世界がもつ威力
6 叙事詩に轟く風の力
7 オシアンとトムソン――啓蒙の世紀における風の想像世界
8 穏やかなそよ風と快い凱風
9 十九世紀における風の謎
10 二十世紀の風をめぐる小散策
11 風、演劇と映画
終章
謝辞
訳者あとがき(綾部麻美)
原注/人名索引
関連情報
風は不変の特徴を備えており、歴史的変遷をもたない、と考えたくなる。が、まったくそうではない。19世紀初頭から、風を理解すること、その遠い起源を突きとめること、その動きの仕組みと経路を把握すること、すべてが歴史に刻まれるべき出来事だった。山頂や砂漠、広大な森林での、とりわけ空中における新しい風の体験もそうである。
さらに、風を知覚し実感する方法は同時に、「気象学的な自我」の台頭によって深化した。以降、風は文学的な対象となり、作家たちの発想源であり続けている。風を想像し、語り、思い描く方法は、崇高の規範、ドイツ詩による自然の称揚、ロマン主義によって豊かさを増しながら変化してきた。時代につれて風に重要な位置を与えてきた叙事詩がたえず示してきた風の再解釈も忘れてはならない。(本文より)
著者紹介
●アラン・コルバン(Alain Corbin)
1936年フランス・オルヌ県生。カーン大学卒業後、歴史の教授資格取得(1959年)。リモージュのリセで教えた後、トゥールのフランソワ・ラブレー大学教授として現代史を担当(1972-1986)。1987年よりパリ第1大学(パンテオン=ソルボンヌ)教授として、モーリス・アギュロンの跡を継いで19世紀史の講座を担当。現在は同大学名誉教授。
“感性の歴史家”としてフランスのみならず西欧世界の中で知られており、近年は『身体の歴史』(全3巻、2005年、邦訳2010年)『男らしさの歴史』(全3巻、2011年、邦訳2016-17年)『感情の歴史』(全3巻、2016-17年、邦訳2020-22年)の3大シリーズ企画の監修者も務め、多くの後続世代の歴史学者たちをまとめる存在としても活躍している。
著書に『娼婦』(1978年、邦訳1991年・新版2010年)『においの歴史』(1982年、邦訳1990年)『浜辺の誕生』(1988年、邦訳1992年)『音の風景』(1994年、邦訳1997年)『記録を残さなかった男の歴史』(1998年、邦訳1999年)『快楽の歴史』(2008年、邦訳2011年)『知識欲の誕生』(2011年、邦訳2014年)『処女崇拝の系譜』(2014年、邦訳2018年)『草のみずみずしさ』(2018年、邦訳2021年)『雨、太陽、風』(2013年、邦訳2022年)『木陰の歴史』(2013年、邦訳2022年)『未知なる地球』(2020年、邦訳2023年)『1930年代の只中で』(2019年、邦訳2023年)など。(邦訳はいずれも藤原書店)
【訳者】
●綾部麻美(あやべ・まみ)
1982年生。慶應義塾大学法学部准教授。専門は20世紀フランス詩。
慶應義塾大学大学院文学研究科後期博士課程単位取得満期退学。2014年パリ第10ナンテール大学博士。著書に『フランス文学史II』(共著,慶應義塾大学通信教育部,2016年)など。主な論文にFrancis Ponge : un atelier pratique du ≪ moviment ≫(博士論文,未刊),≪ Francis Ponge et Eugene de Kermadec: autour du Verre d’eau ≫ (Textimage, no 8, hiver 2016,≪ Poesie et image a la croisee des supports ≫ [revue en ligne : http://revue-textimage.com/13_poesie_image/ayabe1.html]),
「文字を杖に――フランシス・ポンジュの「Joca Seria」をめぐって」(共著『戦後フランスの前衛たち』水声社,2023年)など,訳書にコルバン『草のみずみずしさ』(共訳,藤原書店,2022年)がある。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです