- 四國五郎 著
- 四國光 編
- A5上製 232頁・口絵4頁
ISBN-13: 9784865784282
刊行日: 2024/7
生誕百年・没十年記念
幻の未刊詩集ついに公刊
詩・散文・絵画のすべてを駆使して「反戦平和」を訴えた詩画人、四國五郎(1924-2014)。
没後、膨大な遺品の中から、「戦争詩」と大書された1冊のノートが発見された。そこには、1944年の入営から抑留までの約1年、一兵卒として見届けた「戦争」が詩として刻みつけられていた――。
1966年に執筆され、公刊を意識して清書までされながら、世に出されなかった幻の詩集を、当時の経験を描いた本人の挿画を添えて立体的に構成、注・解説を付して初刊行!
目次
編者まえがき
占/おふくろよさようなら/さようなら〔兵営をめぐり……〕/
褌のうた/わかれ/さようなら〔日本をはなれて……〕/
玄海/釜山/初年兵/死えとつながる/メンタイのうた/
咸興/リンゴ/墓/国境/申告/練兵/優しい色/
九九式短小銃/愛馬/兵士〔泥柳だけは……〕/
無題〔おく歯かみしめ……〕/銃剱術/兵士〔看護婦さん……〕/
琿春/ペチカ/軍隊内務令/戦闘訓練/不寝番/めしあげ/
火葬/軍事郵便/無題〔氷原は解け去れども……〕/
いとこ/蛸壺やはかなき夢を夏の月/のろうち/李花屯/
開戦/夏草やつわものどもが夢のあと/棄馬/犬/全滅/
機首/蛸壺掘り/臓腑/戦友/無題〔歩調とれ……〕/
無題〔石を積み野花を手折り……〕/天佑/
無題〔長さ一間余の生木の棒に……〕/戦い終わる/
無題〔一大隊の戦友よ……〕/無題〔突然拳銃が……〕/
無題〔巨大なスターリン戦車に群れ……〕/
無題〔ニュースカメラの……〕/無題〔みろ……〕/
無題〔雑布のごとく……〕/無題〔すすきの穂が夜露にぬれ……〕/
大荒溝/無題〔高粱畑の高粱は……〕
編者解説
編者あとがき 未完の『戦争詩』が訴えるもの
〈附〉
① 無題
② 反戦詩は反帝国主義の詩である(1966年7月22日)
関連情報
父四國五郎が逝った後、アトリエを整理していると、スケッチブックや原稿がうず高く積まれた小山の中から、1冊の草稿ノートが見つかった。表紙には、父にしては珍しく、何かを訴えるような野太く荒々しい文字で一言『戦争詩』とあった。「やるぞ」という父の息遣いが聞こえてくるような文字。そこには、四國五郎の「戦争」がぎっしりと詰まっていた。
この草稿ノートには、広島での入営、満洲での軍隊生活、ソ連との死闘を経て敗戦に至り、武装解除からシベリアに連行される直前までの約1年間の戦争体験が、あたかもドキュメンタリーのように、詩だけで綴られている。その数60編(未完成作品含む)。一兵卒が地べたから見た戦争という巨大な暴力を、詩という表現形式だけで再構成する試み。日本の詩の歴史の中でも、あまり類例のない作品群ではないだろうか。(「編者まえがき」より)
著者紹介
●四國五郎(しこく・ごろう)
1924年広島に生まれる。画家・詩人。20歳で徴兵され、満洲で従軍、敗戦後は3年強にわたりシベリア抑留を経験。帰国して愛弟の被爆死に直面。以後、生涯をかけて、反戦平和のために、絵と詩で膨大な作品を描き残す。GHQによる言論統制下の時代、峠三吉らとの「われらの詩の会」による「辻詩」や『反戦詩歌集』『原爆詩集』に絵や詩で参加、また、土屋清作の演劇『河』のポスター制作、「広島平和美術展」の創設といった活動とともに、NHKの「市民の手で原爆の絵を」運動に全面協力する。
主な著作として、『四国五郎詩画集 母子像』(広島詩人会議、1970年。復刻版2017年)、画文集『広島百橋』(春陽社出版、1975年)、画集『四國五郎平和美術館①②』(汐文社、1999年)、苛烈な戦争とシベリア抑留体験を絵と文で記録した大著『わが青春の記録』全2巻(没後2017年、三人社より公刊。第4回シベリア抑留記録・文化賞受賞)の他、山口勇子作の絵本『おこりじぞう』の絵が広く知られている。2014年没。
【編者】
●四國光(しこく・ひかる)
1956年広島市生まれ。四國五郎長男。
早稲田大学第一文学部卒業。(株)電通入社。マーケティング局局長、(株)電通コンサルティング取締役兼務。2016年(株)電通定年退社。職業潜水士。NPO法人吹田フットボールネットワーク設立代表。『わが青春の記録』公刊により第4回シベリア抑留記録・文化賞受賞(四國五郎と連名)。著書に『反戦平和の詩画人 四國五郎』(藤原書店、2023年)。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです