- 城島徹 著
- 四六並製 448頁
ISBN-13: 9784865784367
刊行日: 2024/9
「君は革命的な仕事ができます!」(松居直)
「松居さんは素晴らしい絵本をたくさん作りましたが、最高傑作は唐亜明という編集者です」(加古里子)
――日中に橋をかける“万里の大人”の半生!!
◎習近平主席と同じ1953年、北京で生まれた唐亜明(タン・ヤミン)。
◎日本留学をへて、抗日戦を戦い、やがて『人民日報』総編集長を務めた父は、苛烈な文化大革命と権力闘争に翻弄される。
◎息子・唐亜明は、伝説の絵本編集者であり「絵本の父」、福音館書店の松居直にスカウトされ来日。日本で編集者となり、世界中を旅するようになる。
◎佐野洋子、加古里子、茨木のり子、俵万智、山極寿一、美智子上皇后陛下、モンゴルやウクライナの画家たち……ユニークな表現者との“面白い”絵本づくり。
◎今でこそ語れる、娘から聞き取った林彪墜落事件(1971)の真相も盛り込まれたノンフィクション。
目次
まえがき
第1章 幼少期
波乱含みの新生国家/革命戦士の両親/日本に留学した父/鄧小平との奇縁……
第2章 文化大革命と紅衛兵
父が『人民日報』総編集長へ/紅衛兵の誕生/機能停止の学校/父の失脚……
第3章 下放と日中国交正常化
最果ての黒竜江省へ/地平線の大豆畑/オオカミの緑の目/ニクソン訪中と日本語学習/日中国交正常化/父の釈放/文革の傷/世界を揺さぶった「革命」……
第4章 転 機――新聞社、音楽家協会で働く
処刑された女性闘士/生涯の伴侶との出会い/日本の歌曲を紹介/「北国の春」と遠藤実/運命の代役/「日本で働かない?」……
第5章 日本へ――松居直に誘われて
初めてのニッポン/日本観察スタート/外国人社員第一号/夜学と副業/スカウトの理由/松居直の金言/三千人の若者が中国へ……
第6章 八面六臂――報道、作家、大学教師……
NHKで働く/世界的ニュースの渦中で/『ビートルズを知らなかった紅衛兵』/『ナージャとりゅうおう』……
第7章 日中比較文化論――こんなに違う二つの国
日本社会は社会主義的/能力主義に転じた中国/中国人の声が大きいわけ/電車で眠る日本人/さくらとパンダ……
第8章 「革命的編集者」の歩み――ユニークな絵本たち
鬼才、岸田衿子/『いつも いっしょ』/『鹿よ おれの兄弟よ』/ウクライナの画家たち/『ボタ山であそんだころ』/動物画家との共同作業/俵万智とのコラボ/編集者とは……
第9章 万里の旅人
ソ連/東ドイツ/ポーランド/チェコスロバキア/ハンガリー/ユーゴスラビア/ブルガリア/ルーマニア/ニューヨーク/合衆国誕生の地/フロリダ/ビートルズの故郷/シンガポール/編集長、豪華客船の歌手に?……
第10章 林彪事件の真相――娘の証言から
中国現代史上最大の謎/墜落機の残骸/草原の墳墓/林彪の娘に面会/希薄な権力志向/文革にも反対/権力闘争のゆがみ/真相究明……
第11章 出会い
佐野洋子/茨木のり子/津島佑子/美智子さま/山極寿一/ダライ・ラマ14世/李香蘭……
第12章 中国に絵本を
「日本絵本之父」、松居直/絵本は教材か/中国で推薦図書に/児童書市場の拡大へ……
第13章 祖国よ
文革で引き裂かれた恋/地方で出世階段を上った習近平/幻の党総書記秘書/映画「ノマドランド」/『神なるオオカミ』/華人華僑とアイデンティティ/ファーウェイ本社に流れる「北国の春」……
関連年表(1911-2022)/あとがき/人名索引
関連情報
唐の自分語りは日本の出版社で初めて編集者になった外国人の物語ではあるが、その足跡は激動の中国から海を隔てて日本に舞台を移し、多彩な人たちとの出会いも絡んで壮大なスケール観の広がりを示した。
毛沢東、周恩来、劉少奇、林彪、鄧小平……。歴史に名を刻む共産党の重鎮らと浅からぬ縁がある解放戦士の両親のもとで育ち、祖国を大混乱に陥れた文化大革命の渦中に父親が長く投獄され、自身も16歳にしてソビエト国境に近い極寒の地に下放された体験を語る唐の回想から、中国現代史がリアルに浮かび上がるのを感じた。
(本文より)
著者紹介
●城島徹(じょうじま・とおる)
1956年東京生。ジャーナリスト。慶応義塾大学法学部政治学科卒。81年毎日新聞社入社。社会部記者、外信部副部長、アフリカ特派員、長野支局長、生活報道センター長、大阪本社編集局次長などを歴任。元日本新聞協会NIE専門部会長。明治大学基礎マスコミ研究室主任研究員(2013~23年)。目白大学非常勤講師(2016~22年)。
著書に『謝る力』『新聞活用最前線』(清水書院)『私たち、みんな同じ――記者が見た信州の国際理解教育』(一草舎出版、地方出版文化功労賞奨励賞受賞)『いのちを刻む――鉛筆画の鬼才、木下晋自伝』(編著、藤原書店)、『やさしい主権者教育――18歳選挙権へのパスポート』(編著、東洋館出版社)『エチオピアを知るための50章』(共著、明石書店)等。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです