- 大野一道 著
- 四六変上製 312頁
ISBN-13: 9784865784398
刊行日: 2024/10
「愛とは、自己の存在や力を超えようとする生命の努力である。」
「原始インドが、人類の草創期にあって、世界の母胎だった。ギリシア、ローマ、そして近代ヨーロッパにとって、人種、思想、言語の主要な源泉だった。」
(J・ミシュレ)
ミシュレ没150年記念
代表作『フランス史』、西欧歴史学において初めて“女性”を歴史の対象とし、その役割を炙り出した『女』『魔女』、多神教世界にも眼差しを向けた『人類の聖書』、残存する「中世」と先鋭化する「革命」のはざまで自由を求めて格闘する『フランス革命史』『民衆』、動植物をはじめ自然、地形を描く『虫』『鳥』『海』『山』。
全体史、感性の歴史の視座を獲得した「アナール派歴史学」の源流と言われ、“自然の中で生きる人間” を歴史学として作品化してきたミシュレ(1798-1874)に迫る!
目次
はじめに――古代的世界の再生をめざして
Ⅰ 「戦争の時代」への言葉――『フランス史』『フランス革命史』を読む
1 正義の名のもとの侵略――十字軍
2 「異端」への弾圧
アルビジョワ十字軍/プロテスタントへの大弾圧――サン=バルテルミの虐殺/
カミザールの乱
3 フランス革命期の「恐怖政治」
むすび――「絶対理念」が他の排除につながる
Ⅱ 「不寛容の時代」への言葉
1 自然を見出した女たち――『魔女』(1862)を読む
2 教会に殺された素朴な信仰 ジャンヌ・ダルク
3 自然と古代の再発見――『ルネサンス』(1855-56)を読む
Ⅲ 「変革」のための言葉
1 「フランス革命」とは何か
2 「民衆」の発見――『民衆』(1846)を読む
3 自然との一体化――『学生よ』『女』『万物の宴』を読む
Ⅳ 「環境の時代」への言葉――『鳥』『虫』『海』『山』を読む
おわりに――『人類の聖書』(1864)によせて
あとがき
ミシュレ略年譜(1798-1874)
関連情報
◎ミシュレの言葉から
―― 私は革命を「法」の到来、「権利」の復活、「正義」の反発と定義する。
―― ティエリーは歴史を叙述と呼び、ギゾー氏は分析と呼んだ。私は歴史を復活と名づけた。
―― 野蛮な科学は、頑固な傲慢さは、生命ある自然をかくも格下げし、人間をその劣った兄弟たちから、こんなにも引き離してしまった!
―― 細部の歴史を知らないときに、要約された歴史に取りかかってはなりません。
著者紹介
●大野一道(おおの・かずみち)
1941年生。1967年東京大学大学院修士課程修了。中央大学名誉教授。専攻はフランス近代文学。著書に『ミシュレ伝』『「民衆」の発見――ミシュレからペギーへ』(以上、藤原書店)『春のはなびら――戦争の残照、わが幼年時代』(吉田書店)、訳書にミシュレ『民衆』(みすず書房)、同『女』『世界史入門』『学生よ』『山』『人類の聖書』『全体史の誕生』『万物の宴』、共編訳書にミシュレ『フランス史』全6巻、『民衆と情熱』全2巻(以上、藤原書店)他。
*ここに掲載する略歴は本書刊行時のものです